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 京都市立小に通う小学6年の男児の告白から、衝撃の事態は表面化した。ドラッグの若年層への蔓延は以前から報じられてきたが、小学生が大麻を吸っているというニュースは世間に衝撃を与えた。

 大麻は別名“ゲートウェイドラッグ”とも呼ばれている。

「タバコから始まり、大麻に手を出し、やがて覚せい剤などもっと強い薬に足を踏み入れてしまう入り口になりやすい薬です」(沼澤教授)

 入り口の先では、覚せい剤、モルヒネ、コカインなどの誘惑が舌なめずりして待ち構えている。薬が効いているうちには多幸感などが味わえることもあるが、その後に訪れるのは脳の破壊、さらに、またやりたいという強い依存性だ。

「吸って気分がいいのは、脳に作用しているから。ですが“グッドトリップ”といって空飛ぶ象など楽しい幻覚を見る場合もあれば、“バッドトリップ”といって車の運転中に大津波がやって来るなど恐怖心や不安が煽られる場合もあります。吸う時の精神状態や人数、場所によって作用が違うんです。これは医薬品ではありえません。使用を繰り返すと、吸っていない時にパニックや不安に襲われるフラッシュバックに陥ります」(山本教授)

 ほかのドラッグはどうか。

「エクスタシーなどと呼ばれるMDMAは、覚せい剤と幻覚性をもつ薬を混ぜたような作用があり、性行為に使われることも多いです。ここ5年ほどの間に生み出された危険ドラッグの中には、ひとつの製品内に異なる作用をもつ物質がいくつも詰め込まれ、覚せい剤に匹敵する強さをもつものも出てきています」(沼澤教授)

 覚せい剤はどうなのだろうか?

「打つと快活になり、24時間連続で遊び通せたりします。いったん薬が切れると、元気だった期間以上にだるくて動けないというリバウンドが必ず起こります。やめると攻撃性が出るので、それを手っ取り早く防ぐために、また薬を使用するのです」(山本教授)

 そして負の連鎖にはまった“顧客”は、売人の思うツボ。

「“顧客”は、薬を手に入れるために金が必要になる。そのため、手に入れた薬の半分を自分で使い、残りの半分を自分より年下の人間に売りつけて、金を吸い上げる。そのような構図が、薬物使用の低年齢化を招いているのです」(民放報道局記者)

 山本教授は、薬物に手を染めた若者の悲しき未来を示す。

「いま元気であっても、大麻も覚せい剤も明日、無事かはわからない。特に10代で大麻を乱用した人たちは、成人後にIQが8~10ポイントも下がる。統合失調症やうつ病、生殖器官に異常をきたす確率も高くなります」

 代償がいかに大きいかを、親や周りの大人が愛情をもって教えることが大切だという。

「“親の信頼を裏切ってはいけない”という気持ちを子どもに抱かせられるかにかかってきます」(山本教授)

 沼澤教授も、こうアドバイスする。

「親子の接点を増やして“いつも見ているんだよ”というメッセージを子どもに与えることが重要だと思います」

 1度壊れた脳は一生、戻らない。子ども部屋から漂う甘臭いにおいに“まさか”と思ったときには遅い。常に子どもときちんと向き合うことが、薬物のゲートウェイに近づかせない一歩になる。