自殺から10年目

高2女子いじめ自殺 母「知りたいのはいじめ隠蔽の仕組み」

2016年01月12日(火) 16時00分
〈週刊女性1月26日号〉
2016年01月12日(火) 16時00分
〈週刊女性1月26日号〉

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 2006年8月18日、高校2年生のときに投身自殺した高橋美桜子さん(享年16)。名古屋経済大学市邨中学校(名古屋市千種区)の在学中にいじめを受け、ショックから立ち直れなかった。

 美桜子さんはカナダ人の父親と母・典子さんとの間に生まれた。一家はカナダで暮らしていたが、美桜子さんが1歳半のとき両親が離婚。4歳のときに日本に帰国した。典子さんは、美桜子さんが通っていた市邨学園が運営する短大で教員として働いていた。

 '09年8月、いじめの対応が不十分として市邨学園や理事長、校長、担任、加害生徒、保護者を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。'11年5月、次の内容がいじめと認定された。

 仲間はずれにされた。「毛が濃い」「ニキビ」「反吐がでる」などと言われた。教科書やノートに「ウザい」「キモい」「死ね」と書かれた。靴の中に画びょうを貼りつけられた。ある生徒は「臭いから空気の入れ替えをする」などと言い、教室の窓を開けた。

 いじめの後遺症としてのDIDや自殺との因果関係、さらに、自殺の予見可能性まで認めた画期的な判決だった。

 しかし学園側は控訴。名古屋高裁はDIDといじめの因果関係は認めたものの、自殺との因果関係や予見可能性は認めなかった。

「いじめから自殺まで年月があったので、いじめだけが原因とは言い切れないとの判決だった。遺族は学校でのいじめをすべて見ていないが、裁判は証拠で決まる。それでもこの判決は重い」

 典子さんは加害生徒8人も訴えた。

「反省し、お墓参りを約束した生徒がいた。いじめを証言すると言った生徒もいた」

 だから和解した。しかし、加害生徒は学園側の証人として出廷した。いじめを否定する証言をした。

「(娘の死と)向き合わせることは加害生徒にとってもよいはず。むしろ向き合わせることが学校の役目のはず」

 典子さんは、学校側の事後対応が誠実ではないことを含め、県私学振興室や県知事に対して調査委員会の設置を要望したが、実現していない。

 判決確定後も、県に働きかけてきたが、「私学の自主性」を理由に動かない。文部科学省の担当課や政務官に訪問を繰り返し、問題解決の道を探ってきた。学園側にも経緯の説明や謝罪を求めたが、満足な回答は返ってこない。

「公立なら記者会見をするが、私立ならやらなくてもすんでしまう。私立の問題点をリストアップして、文科省に提出することになっているが、今はつらくて作れない」

 昨年11月に名古屋市内で中学1年の男子生徒が地下鉄に飛び込み自殺した。直前、自室に遺書があり、父親が居場所を特定できた。しかし父親が現場に向かう途中、生徒は飛び込んで亡くなった。

 典子さんは「衝撃的だった」と話す。周囲がSOSを受け取り、助けに向かっている途中で亡くなった点で、美桜子さんの最期に似ていたからだ。

 美桜子さんが亡くなったとき、典子さんは家にいなかった。美桜子さんは友人に携帯メールで《死にたい。たくさん薬を飲んだ》と送った。友人は119番通報。救急車が到着したそのとき、美桜子さんは飛び降りた。

「昨年11月に亡くなった男子生徒は“大丈夫だ”と言っていたようだが、本人も最後までせめぎ合っていたと思う。美桜子も、直前の私との電話では関係のない話をしていた。行政も学校も一生懸命、向き合い、それで救われる命もあるが、すべて防ぎきれるものではない」

 現在、典子さんはスポーツ振興センターに死亡見舞金の給付を申請中だ。学園側が死亡といじめの因果関係を認める必要があるが、高裁判決で因果関係を認めなかったため、学園側は「事由がない」としている。

 市邨中学校は『週刊女性』の電話取材に「当時の職員がいないので、詳細はわからない」との回答にとどまった。典子さんは、美桜子さんと同じ子を出したくないとの思いで奮闘している。

「娘の尊厳が回復されていない。知りたいのはいじめ隠蔽の仕組み」

 と涙ながらに話した。晦日。静かに娘の誕生日を迎えた。元旦。美桜子さんのために生けた花を写真の周囲に飾り、写真を撮った。

「ずっと家族写真を撮り続けてきたけれど、今はもう撮れないので……」

取材・文/ジャーナリスト・渋井哲也

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