モーラー(コップの中)
 『レモンケーキ』が再ブームになるなど、昭和に流行ったものが再注目されている。そこで一世風靡した昭和の玩具の裏側について取材した。

◆モーラー

1975(昭和50)年発売

 モーラーのヒットで知られる増田屋コーポレーションは創業1724年(享保9年)という玩具メーカーの中では老舗中の老舗である。

「全社員が『モーラー』の遊び方を練習して、店頭販売に駆り出されました」(増田屋コーポレーションの広報室長・柴求馬さん)

 ‘75 年2月に先代の社長がドイツのオモチャ見本市で見つけて、極秘で日本に持ち帰えったという。

「オモチャというより手品みたいなものです。ただ発売に関しては、役員会で社長と役員1人を除いて全員が反対でした。でも、無理やりテレビCMを作って大々的に宣伝したんです。しかも極秘プロジェクトですから、CM撮影が終わった後は商品をバラバラにして正体がわからないようにしていました」(柴さん)

 それから1か月後の3月の啓蟄の日、冬ごもりの虫が土の中から這い出すといわれる春の暦に“謎の生物”は発売が開始された。

 CMの効果もあって、発売2か月間で180万匹が売れた。偽物も続々登場、お祭りの露店には必ず姿を現し、その数は本物の3倍に上ったという。

「モールでできているから『モーラー』という名になりました。簡単に作れちゃうから偽物が出ないようにすべて極秘だったんですけどね」

 最近はお目にかかることが少なくなったが、ペットのオモチャとして買っていく人もいるとか。当時の値段は380円で、現在は430円で売られている。