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 シェアハウスとは、入居者がプライベートな部屋で生活しつつ、リビングなどの共有空間を使ってコミュニケーションをとれる住まいの形式。若者たちの暮らし方と思いがちだが、最近では高齢者の住まいとしても注目を集めている。

 栃木県小山市の『もうひと花 東城南』は、空き家をリフォームしたシニア女性向けのシェアハウス。訪問介護サービスや介護タクシー事業の(有)さくら福祉サービスが運営、昨年5月オープンした。代表取締役の作田善宏さんはこう語る。

「元気なシニアでも収入が少ないと、受け入れてくれる場所が少ない。ひとり暮らしで生活に不安を抱える人たちが、制度や施設をあてにせず、力を合わせて共同生活できる住まいを目指しました」

 空き家を利用したのは、国民年金の月6万~7万円の収入で生活する人を念頭に置き、家賃を低価格に抑えるためだ。築25年5LDKの2階建てに階段昇降機を取りつけ、トイレと浴室をバリアフリーに。

 定員は4名で家賃は約3万円プラス個室の電気代。2階にある6~7畳の4部屋がそれぞれの居室で介護用ベッド、冷蔵庫、金庫などを備えている。1階のキッチンやリビング、トイレ、浴室は共用となる。

 年齢とともに介護や病院への送迎が必要となった場合には、介護保険で同社のサービスを利用する。

「実際のところ、この家賃では満員になってようやく損益ゼロの事業。将来、入居者がサービスを利用してくれることで成り立つだろうという試みでもあります。入居者としては仲間同士で助け合って楽しく暮らし、いざというときは私たちのサービスが支えてくれるからと安心して暮らせる」(作田さん)

 現在の入居者は2名。Sさん(72)は20年以上前に夫を亡くし、市内の借家でひとり暮らしをしていたが一昨年に病気で倒れ、こちらのシェアハウスの話を聞いて引っ越した。

 自分の国民年金だけでやりくりでき、生活基盤が安定したと喜んでいる。近くに大型スーパーがあるので食事も自分で作っているそうだ。金融機関や病院も徒歩圏内。

「環境がよく快適です。共同生活は適度な配慮を保てば、違和感も抵抗もありません」

 もう1人の女性は、病気の後遺症で半身マヒのリハビリ中。さくら福祉サービスのデイサービスを利用し、身の回りのことはヘルパーが介助しており、しっかり支えられて生活する。

 もうひと花に注ぐ作田さんの思いは熱く、Sさんを近所に紹介して回り、「市外からの入居者が来たら、近隣の観光スポットをみんなで一緒に回りたい」「1階の和室には、女子大生か若手ヘルパーに無料で住んでもらい、孫のような存在として一緒に暮らしてほしい」などとプランは広がる。

 また、「ここを終のすみかにしたいという方が亡くなるまで安心して過ごせるよう、私たちが最期までしっかりと支えます」とも宣言していた。

 こうしたシニア向けシェアハウスの現状について、高齢者住宅仲介センター日本橋店代表の満田将太さんに尋ねると、

「シニア向けシェアハウスの利点は、①低価格 ②入居仲間と趣味を一緒に楽しめる ③気の合う人と生活できれば充足感ありの3点。ニーズはありますが、まだ数が少ない。

 運営者側から見ると、介護収入を得るためには健康な人より要介護の人を対象とするほうが有益なのです。また、健康なシニア向けの住まいは入居までに時間がかかり、空き室のリスクを負いやすい。そうした理由から採算を取りづらく、なかなか数が増えません」

 満田さんの指摘を踏まえれば、紹介した2つの物件にまだ空き部屋があるのは不思議。だが、これも空き室リスクの弊害だろう。やはり高齢の身で荷物をまとめ、住まいを移す決断がかなり高いハードルのようだ。