ただ、渥美弁護士によると、彼女が事務所を訪れる直前、こんな出来事が。

12万円を貸し付ける約束の当日朝、“最近、萌景が夜10時になっても帰ってこないし、態度が悪くて困っているのですが、私の言うことは聞かなくて”と萌景さんの母親から言われたスタッフが“それなら、私から注意しましょうか”と返しました。

 萌景さんと母親が事務所に来た際に“お母さんから聞いているよ。社長はそんな萌景ちゃんにお金を貸そうと思っているわけじゃない”と、説教しました。そして“今の萌景ちゃんには貸せないから、よく考えて本日中に社長に連絡してください”と伝えて、いったん家に帰したんです」

 この場面でも再び、原告側との認識が大きく食い違う。

「12万円を“いったん”渡さなかったという前提が異なります。萌景さんと母親は、12万円の貸し付け撤回を確定的な決定として受け止めました。だからこそ、萌景さんは、事務所からの帰り道で自殺する方法をスマホで検索するに至っており、壮絶な衝撃をもって受け止めていたことが推測されます。

 そして、当日の夜に社員Bがお金を用意していたということを、母親は聞いておりますが、萌景さんは聞いておりません。母親は、社員Bから“萌景さんには言わないように”と口止めされていたのです」(遺族弁護団)

 入学金の貸し付け撤回に加えて、この夜に萌景さんが事務所社長から電話での「辞めるなら1億円払え」という発言が、自殺に至った原因だと遺族弁護団は主張する。その経緯は、20日の夜、社員Bから母親を経由して、萌景さんに「社長に電話するように」と伝えられていた。

飛び出した新情報

 渥美弁護士は、この際に原告側が訴えている「1億円払え」発言は事実無根だとしながら、むしろ、社員Bから12万円を受け取っていた社長は「今からお金を持って行くよ」と萌景さんに伝えたものの、萌景さんから「お母さんと話して、高校に行くのはやめました」という発言があったと主張していて、事態は“混沌”としている。

 さらに渥美弁護士は、この日の夜に社長と電話していた萌景さんは、自宅ではない“意外な場所”にいたと話す。

実は、20日の夜に萌景さんは当時交際していた彼氏の自宅に泊まっています。社長から“辞めるなら1億円払え”と言われたと証言しているのは、その彼氏です。というのも、萌景さんは彼氏と一緒に高校に進学する予定で、翌21日にはその高校の新入生説明会がありました。

 萌景さんは、彼の家に泊まり、翌朝、一緒に説明会に行く予定だったのだと思います。しかし、彼女は進学をあきらめてしまっていた。21日の朝、彼氏は母親の運転する車で説明会に向かい、ついでに彼女を自宅まで送っていた。その車内で“社長から1億円払えと言われた”という発言を聞いたと、彼氏が証言しているのです

 そんな彼氏の証言について、遺族弁護団の見解は、「原告側としては、当該証言は具体的であり、意図的に虚偽の発言をする理由もなく、信用性があると考えております」というものだった。

 予測ができない裁判の行方は、萌景さんが頼っていたであろう“彼氏の存在”が、真相に迫る鍵になるのかもしれない─。