良子さんは、ときに康介さんや娘への思いを語る。その手には2つの結婚指輪が
すべての写真を見る

無実を主張する弁護士

電話を受けたときは頭が真っ白になって……電話を切った後にはリビングにいた長男に“パパが亡くなっちゃった……”と話し、2人で泣きはらしました。その後に、部活に行っていた次男を迎えに行き拘置所へ向かったんです。次男は“ねえ、どこに行くの?”としきりに聞くのですが、話せば運転できなくなると思い何も言えなくて……」

 拘置所に着き父親の死を告げると、次男は呆然とし、抜け殻のようになってしまった。1時間ほど車から降りることができなかったという。

「息子たちは霊安室のドアから中に入ることもできなくて……言葉もなかったです」

 父親の死後、次男は再び心身のバランスを崩して不登校に。長男の広司さんは現状について「逃げ出したいです……」と言葉少なに語り、妹の美樹さんについては、

「事件のことには触れず、会えなかった1年間、元気だった? という話をしたい」

 裁判では有罪判決が下されたが、康介さんの弁護人である浜松中央法律事務所の松尾健太郎弁護士は、「康介さんは無実です」と力強く話す。

 そして今回の判決について、「美樹さんの証言しか証拠がない事件であり、その証言の信用性が裁判の争点でした」と話し、不自然な点を指摘する。

ひとつは処女膜裂傷がないという診断です。事件発覚の3日後に医師が診察して、処女膜裂傷なしと明確な診断を出しています。法廷での娘さんの証言によれば約1年間に5~10分以上の性行為が10回以上あったとされます。それだけ激しい性行為があったとすれば処女膜裂傷が起こったとしてもおかしくない。

 また粘膜なので当然、治癒しますが、仮に裂傷が起こったのならば、傷痕が残るのではないかということです。この点については、控訴審で医学的な鑑定を出す予定でした」

 また、さらに美樹さんは証言で“コンドームを見たことがない”“口止めをされたことはない”とも証言したという。

「バレたら大変なことになるのに、避妊をしないとは考えにくい。家庭内の性犯罪の多くは口止めをすることが多いのですが、それもない。酔った勢いなどではなく、10回以上も犯罪行為を行う人間がする行動としては不合理です」

 裁判は被告人死亡により公訴棄却。控訴審は開かれない。

 良子さんは、こう願う。

「娘の虚言や妄想のワケを調べたところ『境界性パーソナリティー障害』にたどり着きました。患者の家族会で話を聞いたところ、これだと。私としては病が招いたことだと思っています。娘にはきちんと治療を受けてほしい。それが娘のためでもあるんです」

 美樹を恨むな。最後までそう言い続けた康介さんの思いを受け止め、家族で再出発したいと願っている。