東京都の北側に隣接する、埼玉県の川口市。市立中学校に通っていた林昌之くん(17=仮名)は、いじめを受けた当時の学校や市教委の対応が不適切だったとして、市を訴え損害賠償を求めている。

「法律に欠陥」のトンデモ主張

 '11年の大津市のいじめ自殺をきっかけに制定された「いじめ防止対策推進法」では、いじめを「行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」などと定めている。ところが市側は、裁判の答弁書に「法律としての整合性を欠き、教育現場に与える弊害を看過しがたい欠陥がある」と記載。いじめ防対法によるいじめの定義は都合のいい解釈を招くもの、と主張しているのだ。

 そのうえで、昌之くんのケースが防対法の定義するいじめに該当しても、防対法に基づいて設置された調査委員会が認定したとしても、ただちに違法ではない、などと主張している。

 一方、昌之くんの弁護団は「以前は、力の強い者から弱い者へ継続して行われる加害をいじめとしていたが、防対法では、1回起きただけでもいじめなどと定義を広げた。子どもたちが置かれた現実を反映している」として反論。ネット上では「法に欠陥があるから守らなくていいというのか」「責任逃れ」などと、市への批判が集中している。

 市教委は取材に「法に欠陥がある」としたことについて「われわれはそう主張していない。同趣の日弁連意見書を引用しただけ。法律を否定していない」との認識を示す。

 今回の裁判は、加害者を訴えたものではなく、学校や市教委の対応が不適切だったかどうかが争点だ。

 訴状では、昌之くんへのいじめは(1)1年生の5月、サッカー部の同級生のグループLINEからはずされた。(2)3学期に部の練習中、ほかの部員から襟首を後ろからつかまれ、首絞め状態でひきずられ、揺さぶられるなどの暴力を受けた。(3)1年生から2年生にかけてグループLINEの中でサッカー部員が昌之くんになりすまし、からかいや誹謗中傷を受けた、としている。