人生ってうまくいかないな、と感じることが誰にでもあると思います。自分の思うように人生の物語を紡いでいくことができたら幸せなのでしょうが、基本的にはそうはならない。

 でも、納得できる現在と、納得できる未来が訪れれば、後悔が残る過去も肯定できるかもしれない。そういったことを考えさせてくれる映画になっていると思います」

万年便秘ぎみのミュージシャン

 東京、パリ、ニューヨークを舞台に描かれた大人の男女のラブストーリー『マチネの終わりに』で主演を務める福山雅治映画では、自分の音楽を見失い苦悩する天才クラシックギタリストを演じている。長年、ミュージシャンとして活躍する福山にも、そんな時期はあったのだろうか。

「程度の差こそあれ、僕は基本ずっとそんな状態です(笑)。昔から、スッと曲が浮かんだり、歌詞が出てくるタイプではないんです。デビュー当時から毎回、壁にぶつかってる。作るという行為自体、常にしんどい作業なんですよね。続けていればいつか楽になると思ってたんですけど。出さなきゃいけないのに、出にくい。

 たとえるならば……創作は常に便秘ぎみです(笑)」

 そう冗談まじりに話す福山。“でもそれは理想があるから”と表情を変え、言葉を続ける。

「たぶん自分なりに、ああしたい、こうしたいという理想が常にあるから苦しくなるんです。“頑張れば自分以上のものができるはず”って、どこかで自分に期待して。まぁ、自分で自分に期待しないでどうするんだって話なんですけど(笑)。

 理想を持つことで、そこにたどり着かない悔しさが生まれてくる。それは僕自身が、今も昔も変わらず感じていることです。でも、正直それを苦痛と思っていたら続けていられない。こういうものだって付き合っていくしかないと思っています」