1年半前、認知症を公表した、俳優の芦屋小雁さん。「要介護4」の認定を受けたいまもなお、トークショーなどで元気に活躍しています。マネージャーでもある、妻・寛子さんとの二人三脚の暮らしぶりをうかがいました。

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冬の京都で行方不明、死さえ覚悟した

 2017年に、血管性認知症とアルツハイマー型認知症の合併症と診断された芦屋小雁さん。その症状がはっきり表れたのは、同年秋の舞台公演のときでした。「ここどこや? 何してるのかわからへん」。

 本番の舞台袖で小雁さんの言葉を聞いて、寛子さんは「心臓が口から飛び出しそうだった」と言います。

「とっさに出だしのセリフを耳元でささやいて舞台に出したら、アドリブを交えて、ちゃんとお芝居はしはるんですよ。でも、 “もうお仕事は受けられない”と思いました」

結婚24年。いまも毎日、手をつなぎ、ハグをして、キスをする。それが“笑いのある生活”のもと
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 翌年2月には、寛子さんが仕事に出かけたあとに、小雁さんが30時間以上も行方不明になるという事件が起こります。寒い京都の冬のひとり外出です。死さえ覚悟したと言います。

 寛子さんは仕事を減らし、小雁さんと家にこもりがちになりました。同時に、心配がストレスになって心にたまるいっぽうです。けれど、「そのころは、誰に相談したらいいかわからなくて。『芦屋小雁ボケる!』なんてネットに書かれたらどうしよう、とか。考えるのは悪いことばかり」

 転機になったのは、あるテレビ局の情報バラエティー番組から小雁さんへの出演依頼が来たときでした。疲れがピークに達していた寛子さんは、思わず「もうダメなんですわ。認知症になってしもたから!」。投げ捨てるように言葉を放ちました。