初回視聴率19・1%、第2回17・9%─『真田丸』以来4年ぶりとなる初回19%超えとなった、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が好調だ。昨年の大河『いだてん』の平均視聴率が、8・2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)、7・1%(関西地区、同調べ)だったことや、沢尻エリカの不祥事降板による撮り直し&スタート日変更などの影響がありながら、始まったばかりとはいえ『麒麟─』への期待度が高いことがうかがえる。

 ここ数年、日曜夜8時は、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の1強状態が続いていた。ビデオリサーチの「年間高世帯視聴率番組30」に、'15年~'18年まで20%以上を記録し、4年連続ランクイン。“国民的”人気バラエティー番組に君臨していたのだが……。'18年11月にヤラセ疑惑が発覚すると数字は下降線をたどるように。その間隙を突くように、彗星のごとく現れた不定期特番『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)が、同年10月からレギュラー放送の開始とともに台頭し、昨年2月に16・4%を獲得。

 イッテQを0・1%上回り、ついに王者の牙城を崩す対抗馬に成長した。

 昨年は『いだてん』の低迷もあって、イッテQとポツンの2強状態だったが、『麒麟がくる』の幸先のいいスタートによって、まさしく戦国時代よろしく視聴率合戦の火ぶたが切られた。

『ポツンと』プロデューサーに取材してみると……

 捲土重来を期す大河は、先月22日に行われた定例会見で、「大変いいスタートが切れました。私も手ごたえを感じています」(木田幸紀放送総局長)と強気だ。

 視聴者層が50代以上といわれる大河ドラマとかぶりそうな『ポツンと一軒家』は窮地に立たされるのでは? なんて邪推してしまいそうだが、週刊女性の取材に対して、同番組を制作するABCテレビの植田貴之プロデューサーは、次のようにコメント。

日曜夜8時に“今日はどの番組を見ようか”と、テレビ(地上波)に視聴者が集まり悩む。テレビ界にとってこんなに素敵で緊張感のある場にいられることが大事なので、サバイバルを勝ち抜くのではなく、日曜夜8時を盛り上げ続けられたらと思います」と、歓迎ムード。

 決して楽観視しているわけではなく、大河ドラマと「メインの視聴者層は同じだと思います」と認めたうえで、

ポツンと一軒家に住まれている住人の人生ドラマや、集落の方々の優しさが視聴者の心の琴線に触れたのではないかと思っています。“ポツンの数だけ人生ドラマがある”という番組のキャッチフレーズのとおり、住人の方に同じ人生はないので毎回新しいと思っています」と、語る。

 捜索中の予定不調和や緊張感も魅力的な『ポツンと─』は、言わばドキュメントバラエティー。視聴者の年齢層こそかぶるが、あくまでドラマである大河とは求められているものが違うというわけだ。

『ポツンと一軒家』の躍進は偶然ではない

 そう語るのは、数々の番組を手がける現役の放送作家A氏。

「昔であれば、辺鄙な場所に住んでいる人は“変わり者”という扱いでしたが、『ポツンと一軒家』は、“こういう人生もありますよね”と肯定的な作り方をしている。テレビ業界には、ここ数年“日本再発見”といったテーマがあるのですが、日本的な郷愁や人間ドラマを誘う同番組は、シニア層を中心に根強い人気を誇ります」

 また、演出面にも高視聴率を支える特徴があるという。

ディレクターひとりがカメラを持って散策する番組が目立つ中、捜索隊としてカメラマンとセットで行動させている点も見逃せない。ひとりで行動すると感想や情報が、ひとり言になってしまい、レポートとして聞き心地が悪くなる。タレントならまだしも、素人ですからね。ところが、ふたりセットで行動しているため、臨場感のある会話として成立する。さらには、雪道で立ち往生した際にはJAFに救出してもらうなど、トラブルをそのまま放送している。『ポツンと一軒家』の冒険感をくすぐる演出は、業界内でも評判が高いです」(A氏)

 辺鄙な場所に暮らす住人とのやりとりを好印象なものにするために、人当たりのいいディレクターを選抜したとか。

 微に入り細を穿つ番組作りこそ、同番組の人気を支え、イッテQを上回るだけでなく、ときに驚異の視聴率20%超えを実現させているといえそうだ。

 一方、人気長寿バラエティー番組のイッテQは“新興勢力ポツンと”が頭角を現したことで後塵を拝す形に。一時は、20%超えは当たり前─そんな空気も漂っていたが、昨年20%を超えたのは2回にとどまる。やはり栄枯盛衰という言葉が、あのイッテQにもあてはまってしまうのだろうか……。

「一時期の勢いはないですが、それでも日テレとイッテQは強い」と語るのは、あるテレビ関係者。