なんだこの驚きの展開は!

 自粛ムードが漂うコロナ禍のなか再三、夜の街に繰り出していたことが報じられ、所属するジャニーズ事務所から無期限の活動休止処分を受けたNEWSの手越祐也。これまでもたびたびスキャンダルや不祥事が報じられていただけに、世間も「ついにこの時がきたか……!」と感じた者も多いなか、『女性セブン』(6月18日号)が、手越がまさかのボランティア活動中であることを報じ、世間はさらなる驚きに包まれている。

 記事には《手越さんは新型コロナの自粛生活で、生活苦に陥った母子家庭にお弁当を自転車で配達するボランティアをしています》とある。これまで派手な夜遊びなどがさんざん報じられ、“夜の帝王”と呼ばれていた手越がいきなり《青空の下、都心の住宅街を自転車が颯爽と駆け抜けていく》だなんて描写をされている。なんだかギャップについていけないが、心を入れ替えたということか。

 この報道と前後するように、実際に弁当を受け取ったシングルマザーによる感謝のツイートが拡散され、「やはり悪い奴じゃなかった」というプラスの意見もあがる一方、「どうせ好感度を上げるためのアピールでしょ」といったネガティブな声も多く飛び交っている。ボランティア活動という善行にも関わらず否定的な声も上がったのは、数々のスキャンダルが彼の社会的信用を落としたからにほかならない。

 ここで、夜の帝王として成り上がった手越の歴史を振り返ってみたいと思う。

手越=肉食イメージはいつ生まれたのか

 さかのぼるに、最初に手越のチャラ報道がなされたのが’08年の『FRIDAY』(4月4日号)で当時、手越はまだ20歳。タイトルは《渋谷の街を“朝帰り”現場》とされているが、その概要はこうだ。

「深夜のクラブでDJが流したNEWSの曲に合わせてサビを歌い、場を沸かせ、夜通し楽しんだ後にラーメンを食べ、スタバにも寄った」……だけ。現在の手越からしてみればボツネタになるくらいの平常運転を「独占キャッチ撮」として2ページの見開きで報じているのである。まだ初々しい“夜の帝王”のデビューシーンだ。

 しかし、意外なことに、そこから数年は手越のチャラ男報道はなく、次に報じられたのが’13年、媒体はまたも『FRIDAY』(6月28日号)。しかし、タイトル・内容ともに一気に度を越すこととなる。題して《超肉食 手越祐也美女と熱烈キス現場》。手越が女性をガッツリ抱き寄せてキスしている写真がデカデカと載るという、アイドルにとって致命傷ともいえるスクープとなった。

 その記事の冒頭には《カリスマモデルの益若つばさダルビッシュの元妻・紗栄子、タレントのベッキー……数々の女性芸能人との関係が噂され、ジャニーズ一の「肉食系男子」として名高いNEWSの手越祐也》との記述がある。

 しかし、ここで名前を挙げられていたタレントたちとはあくまで噂の域を出ておらず、実際は誰とも撮られていないといういわゆる“眉唾モノ”の女性遍歴にすぎない。それよりも注目したいのが、報道の歴史上唐突に出てきた「ジャニーズ一の肉食系」という表現。今となっては彼の代名詞なわけだが、当時はまだ定着していなかったことが、記事中の描写からも読み取れる。

 同誌は本人が過去に雑誌のインタビューで語っていたことを引用し、

《「小2のときに、女の子のほっぺにチュウするイジワルが流行ってた。女の子がギャーギャー怒るのが楽しくて、全然やめなかった」「自分は超肉食系男子! この間意味を知ったから、この言葉を使いたくてしょうがない(笑)」と答え、自ら“肉食”をアピールしていたくらいだ》

 と、まさかの義務教育の時分にまで遡り、チャラ男の起源を求めようとしているのだ。しかし、どう考えても“小2のエピソード”は、例として弱すぎるだろう。つまり、当時はまだ手越をチャラ男たらしめるネタが少なかったにもかかわらず、どうにかタイトルに「肉食」のワードを入れたがっていたことがわかる。

 その後、『文春』が全く同じキス写真を入手し、その女性がSKE48所属のアイドルだということを報じた。そのときのタイトルは、《SKEグラビア女王 鬼頭桃菜とジャニーズ肉食男 手越祐也の泥酔キス》。

 なんと、ちゃっかり『FRIDAY』から「肉食男」を受け継いでいるのだ。つまりこの瞬間、「手越は肉食」という共通認識が生まれたのである。さらに、特筆すべきは、この『文春』の記事に対し、メリー喜多川副社長(当時)が直々に《手越もバカ! 私も叱りましたし、彼も反省しています。店も初めての客にテキーラを出すなんて……》と異例のコメントを出していることだ。まさかの“手越がキスしたのは店のせい”という暴論を発信しているだけに、手越は初めから事務所の寵愛を受けていたことを察することができる。

 この後、彼が「もうバレたから仕方ない」とばかりにAKB48・柏木由紀とのラブラブ2Sや、きゃりーぱみゅぱみゅとの密会、はたまた一般人をお持ち帰りしたりとタガが外れたかのように撮られまくったり、流出するようになったことからも歴史的瞬間といえよう。

 事務所の庇護に加え、大量のスキャンダルが垂れ流されているのをみてか、出演する人気番組『イッテQ!』内では、もはやチャラ男を“コンテンツ化”する傾向さえ出てきた。『手越祐也のノーチャラ生活』という企画で彼は、「クモ1回触るんだったら、6回週刊誌に撮られた方がいい」なる名言を残している。この辺りからいくらスキャンダルが出ようが「手越だからしょうがない」と擁護するファンまで出てくるようになった。

 今回の「宅配弁当ボランティア活動」への賛否、つまり手越のイメージが受け取り手によって異なってくるのは、事務所から異例の「スキャンダル公認・ネタ化を許される」措置を受けながら、実際の「チャラ男報道は看過できないほどハード」という、ある種の矛盾を抱えたまま今日に至っていたからではないか。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉