“舞台クラスター”が発生し、演劇人やメディアの集中砲火を浴びている。主催者側のずさんさが明らかになり、無理もない、という空気が優先する。

 発生源となったのは、6月30日から7月5日まで、東京・新宿シアターモリエールで開催された舞台『THE★JINRO~イケメン人狼アイドルは誰だ!!』。俳優の山本裕典(32)らイケメンが多数出演し、ファンとの交流もウリにしているもので、

舞台というよりも、ファンクラブイベント的なノリもあるステージです」(スポーツ紙演劇担当記者)

尾上松緑「慎め、餓鬼 舞台を舐めるなよ」

 十分な感染対策が取られていなかったことが次々に明らかになったこと、さらに出演者や観客少なくとも人48人(15日現在)が新型コロナウイルスに感染し、濃厚接触者も約850人にのぼっていることも、集中砲火に拍車をかけている。

 情報番組の司会者の坂上忍、立川志らく、コメンテーターの中尾彬らがテレビで非難し、歌舞伎俳優の尾上松緑(45)はブログで「素人共 責任取れるのかよ」「慎め、餓鬼 舞台を舐めるなよ」などと罵詈雑言を浴びせかけた。

「責められてもしかたない、ずさんなやり方でしたが、完ぺきなやり方をしたとしても、コロナを防げるかはわからない。体温測定やマスク着用、アルコール消毒をしていたとしても、罹ることがあるわけですから、明日はわが身と思って同業者や芸能界は受け止めた方がいい」

 と情報番組デスクは冷静な対応を呼びかける。

 今回の件で明らかになったのは、エンタメ系イベントの感染の広がり方の怖さだ。

今年3月、大阪のライブハウスでクラスターが発生した際も、四国から来ていたお客さんが感染し、ウイルスが拡散した。今回も、群馬、山形、島根などに感染が広がった。地方から東京の劇場に観劇に来るファンは多い。感染予防を呼び掛けるガイドラインが、あらゆる業界で策定されていますが、県またぎの来場を禁止したりしていない。例えしたところで、どこから来ているのか確認のしようがないですけどね」(前出・情報番組デスク)

 つまり、東京で舞台の幕を開いたり、音楽ライブを開催すれば、観客は日本中のありとあらゆるところからやって来る危険性を受け入れる、ということ。8月1日からは東京・歌舞伎座の幕も開く。

「移動の危険性は報道されていますが、政府の『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』に基づいて作られている舞台上演のガイドラインには、入退場時の注意やチケットの受け渡し、飲食のしかた、密を作らない工夫などが記されているだけで、遠出することには何も記載がない。これは憲法の移動の自由にもかかわりますから、表立って規定はできないんですが、エンタメ会場発のクラスターを全国に広げないためには、東京には見に行かない、という観劇者の自制が必要になってくると思いますよ」(前出・情報番組デスク)

 今回、感染者の中には、地方の看護師もいた。保育士もいた。もし、感染者の中に医師がいたとしたら、それこそ「自覚がない」とバッシングの対象になっても不思議じゃない。それが今の空気だ。

 看護師や介護士、保育士、教師など多数の命と接する仕事の従事者は、クラスターに巻き込まれれば、さらに自分がクラスター源になる可能性がある。それを誰が防ぐことができるのだろうか?

 移動の制限や職業としての意識など、ガイドラインには示されない自制の重要性を、今回の“劇場クラスター”は物語っている。 

〈取材・文/薮入うらら〉