性暴力と、それを黙殺し続けた団体の2次被害を告発した田中さん
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 田中さんは『べてぶくろ』の事務所に足を運び、実質的責任者である宣明さんと交流を重ねた。'12年10月から'13年1月まで、グループホームの世話人を務めるなど有給スタッフとして働いている。

 その後は介護ヘルパーの仕事をしながらブログ更新などの広報業務のほか、ネットショップの管理、商品管理、食事会や映画会などの企画運営を担ってきた。'15年8月には、空室だった『べてぶくろ』の事務所2階へ転居。事実上の中心メンバーだった。

セカンドレイプを「大目に見て」

 事件は、田中さんが事務所2階へ引っ越して1か月後に起きた。『べてぶくろ』の宣明さんに話したが理解されず、『べてる』の理事・生良さんにも電話で相談している。

「生良さんには“(性被害について話すことをとがめたスタッフの)高橋は前途のある若者だから、大目に見てあげて”と言われました」

 性暴力被害者への支援活動を行う『レイプクライシス・ネットワーク』の岡田実穂代表は「まず被害の訴えがあった時点できちんと話を聞くべきです。被害を初めて打ち明けたときの対応のよしあしは、多くのサバイバー(性暴力被害を生き延びた人々)にとって、その後に大きな影響を及ぼします」と指摘する。

 2次被害をもたらした高橋さんとの接触を避けるため、田中さんは『べてぶくろ』の事務所2階にあった住まいから引っ越したいと考えた。

「宣明さんは、2次被害への賠償金名目で引っ越し代を支払うのを嫌がっていました。私は引っ越しできれば何でもよかったのですが、話し合いをするうち、宣明さんからこの件の連絡は途絶えました」

 '16年8月ごろ、田中さんは結局、『べてぶくろ』の事務所2階から自費で退去した。

「引っ越して半年後、イベントに出向いて問いただすと、宣明さんに“高橋のことは加害者だとは思っていない”“時間がたってしまったのでしかたがない”などと言われました」

 のちに田中さんは、'16年当時に行われていた『べてぶくろ』の運営ミーティングの記録メモを入手している。それによると、高橋さんが田中さんへの対応に困っていることが議題にあがる一方、事件や2次被害の問題については一切触れていなかった。

「性暴力が身近な場所で起きると、周囲は被害を受けた当事者へ対応するよりも、自己保身に走り、何もなかったように振る舞ってしまうことがあります。性被害にどう対応すればいいかスタッフが判断できないなら、団体として話を聞く場を設けるなど“重要な出来事”ととらえ、対応すべきでした」(前出の岡田さん)

 今年に入ってからも田中さんは自ら弁護士に相談し、警察にも出向いた。現在、性暴力の加害者である鈴木氏、2次被害を及ぼした『べてぶくろ』の双方に向けて、法的対応を検討中だ。