かつてはバラエティー番組にも出演し、話題を呼んだ作家・志茂田景樹。トレードマークでもある自由で個性的なヘアスタイルとファッションは、80歳になった今も変わらない。そんな志茂田氏のSNSが現在、「名言」「格言」に溢れていると話題だ。ツイッターのフォロワーは41万人超え。フォロワーからの「人生相談」に、直接「言葉」を投げかけ寄り添うことも。前編ではこの“生きづらい”世の中を「生き抜くヒント」を聞いた。後編ではインタビュー形式で、ご自身のことについて、尋ねてみた。

あのツイートの真意は

――作家としての活動はもちろん、全国の学校などを訪問して読み聞かせを行う『よい子に読み聞かせ隊』の隊長としてもご活躍されていますが、このコロナ禍は、どう過ごしていましたか? 

関節リウマチで、昨年6月からは車いす生活になりました。そこから講演や『よい子に読み聞かせ隊』の活動を都内のみに限定していましたが、コロナ禍となり、身体を使う活動は一切、休止にしました。でもその反面、執筆活動をじっくりやれるようにもなったんです。さらにその繋がりで表現活動も多様化していき、SNSなどネットでも展開しつつあります」

――ツイッターも人気ですね。頻繁に更新されていますが、中でも悩めるフォロワーさんに向けた言葉が心に響きます。どのくらいの頻度で返信されているのですか?

「おそらく平均にしたら1日3件弱といったところでしょうか。1年に1000件、10年で1万件以上の計算になります」

ーーつぶやかれる言葉は、どう生まれるのでしょうか。

「誰かをイメージして、その人に寄り添うように語ることもありますが、実体験に基づくものが大部分です。そのときの願望や、期待を言葉に乗せてつぶやくこともあります。“疲れた心を白い雲に託して……”なんてことはできっこないので、じゃぁどうしたら疲れた心を癒せるか。すると、答えが出てくるものです。

 フォロワーのつぶやきに答える場合は、その人が発信する限られた文字数の中から、そのひと自身をなるべく具体的にイメージして、そのイメージに語りかけるつもりで返事をします。例えばプロフィールにキスマイ(Kis-My-Ft2)のファンだと明記している人がいたときは、キスマイの最新曲の歌詞の一部をヒントに返信したこともありました。

――例えば、ここ数か月では、「自分自身にやらせてはいけない3つのこと。責める。焦る。捨て鉢になる」というつぶやき(7月30日)に2000の「いいね」がつきました。この言葉はどういったことから生まれたのでしょう。

「これも自分自身の体験から。自分を責めてよかったことは1度もありません。

 子どものときは、お母さんに叱られても自分を責めるということはほとんどありませんでした。今度は叱られないようにうまく立ち回ろうと、自分の都合のいい反省をするだけ。でもこれは成長です。学びです。

 大人になって周りのみんなは平気なのに、自分は先輩にちょっと注意されただけでどうしてこんなに傷つくのか。“なぜこんなに弱いんだ”と自分を責める。これじゃ自分に救いがないでしょ。子どものときのように“今度は注意されないよう要領よくやろう”“それにはどうしたらいいか”それでいいんです。これで前を向くことができます。

 次に“焦り”。焦ってもいいことはありません。拙速の結果が待っているだけです。

 懸賞小説に応募していた時代、毎回候補作にノミネートされながらも、落ちていた時期があって焦りましたよ。受賞は手が届くところまできているのに、なぜ届かないんだと。焦ってマンネリ化していたんですね。そこで考え方を変えました。手の届く距離まできているなら、焦らずに、悠々と手を届かせようと。そのためにはどうしたらいいのか。この気持ちがじっくり作品の質を高めるほうへ僕を導きました。