人気アニメ『鬼滅の刃』の劇場版が、空前の大ヒットを記録している。10月16日に公開されるや、3日間で342万人を動員、興行収入46億2311万円を突破した。コロナ禍にもかかわらず、国内で公開された映画の中で歴代トップの出足となった。

 アニメの原作は、2016年に『週刊少年ジャンプ』で連載がスタートした同題の少年漫画(集英社、吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)著)。人間を食う鬼に家族を惨殺されて妹を鬼にされた主人公が、妹を人間に戻すために鬼たちと戦うというストーリーだ。

 作品の人気に火がつくきっかけとなったのが、2019年4月にスタートしたテレビアニメだ。テレビでの放送に加え、動画配信サービスでの視聴者数が拡大し、アニメが終了した2019年9月からの1年間で部数は8倍以上にもなり、10月2日発売の最新22巻の初版は370万部となった。

 なぜ、『鬼滅』はここまでヒットしたのか。アニメ化企画の発起人で、劇場版でもプロデューサーを務める、アニプレックスの高橋祐馬氏に聞いた。

(※インタビュー内容にはアニメや映画のネタバレを含みますので、読み進める際にはご注意ください)

単なる勧善懲悪の少年漫画ではない

――『鬼滅の刃』のアニメ化は、高橋さんが企画したそうですね。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 もともと私は『週刊少年ジャンプ』の愛読者で、毎週欠かさず読んでいます。2016年に『鬼滅の刃』の連載が始まったとき、1話目を読んで「これは面白い」と。シンプルに「この作品をアニメで見てみたい」と思いました。

 本作のストーリーは、少年漫画にしてはかなり悲惨な状況から始まります。主人公・炭治郎は家族を鬼に惨殺されて、唯一助かった妹も鬼にされてしまう。そこで炭治郎は修業をして、鬼を倒す組織である「鬼殺隊」に入り、善逸や伊之助といった仲間と一緒に戦う中で成長していく。この逆境からの成長譚を描くのは、少年漫画のまさに王道と言えます。

 ただ、これまでの少年漫画とひと味違うのは、単なる勧善懲悪ではないこと。敵であるはずの鬼はもともと人間で、それぞれに哀しいドラマがあります。この物語性にぐっと来ました。