雑誌『FLASH』でセクシーグラビアを披露した栗山千明(PRTIMESより)
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【写真】独立から11年、二人三脚で歩んできた原田龍二とマネージャー

公取の牽制に加え、ネットも後押しに

 また、こうした退所の背景には、「2019年に、公正取引委員会が芸能人などの活動にも独占禁止法を適用すると見解をまとめたことが大きい」とは前出の石川さんだ。芸能事務所とタレントの専属契約に違法性がある──。つまり移籍や独立をする際に障害があるのではないかと調査に乗り出したことで、所属タレントが独立しやすくなったというわけだ。'16年、のん(能年玲奈)がレプロエンタテインメントから独立したときは、圧力といった言葉が飛び交い、彼女の進退にも少なからず影響を及ぼしたが、時代は確実に変わっているのだ。

 輪をかけて、「インターネットの台頭がある」と先の芸能記者は話す。

「電通の『2019年 日本の広告費』によれば、インターネット広告費が初の2兆円超え、ついにテレビの広告費を逆転しました。それだけ多くのお金がネットの世界に流れている」

 昨年末にフリーランスになったオリエンタルラジオ・藤森慎吾が、同じく独立した手越祐也のYouTubeチャンネルに登場した際に、「YouTubeのギャラがテレビ超えてしまった」といった趣旨の発言が大きな話題を呼んだ。

“第2の人生”にYouTuberという道を選んだ宮迫博之(左)と藤森慎吾(右)
“第2の人生”にYouTuberという道を選んだ宮迫博之(左)と藤森慎吾(右)

 テレビに出演せずとも、ネットやSNSでお金を稼ぐことができる時代に変わってきたことで、所属事務所の手を借りずとも、自らパフォーマンスをプロデュースし、お金を稼ぐことができることも独立の後押しになっているという。

「ネットが普及した現在、ブログやTwitterといったSNSを使って、タレントがファンにメッセージを直接送れるようになりました。つまり、記者会見などをする必要がなくなりますから、仲介する事務所やメディアとの接点も希薄化していく。自分ひとりでも十分できるじゃないかと考える芸能人が増えても不思議ではない」(同・芸能記者)

 実際、先述した手越祐也は、YouTube上で退所に伴う記者会見を生配信し、132万人を超える視聴者がリアルタイムで見届けた。

本当に人から好かれる人は独立しても大丈夫

 だが、YouTubeは水もの──そう指摘する声は少なくない。

「宮迫博之さんの動画は、ゲストを招かないと視聴再生数が伸びずに停滞しつつある。TKO木下さんの動画にいたっては、有名人とは思えない惨憺(さんたん)たる再生数です(苦笑)。ネットがあるから安泰ではなく、人気があるからテレビでもネットでも活躍できる」(同・芸能記者)

 たしかに、ワタナベエンターテイメントをクビになってからフリーで成功したフワちゃんは、YouTuberを経てテレビでも人気者になった。人気や話題性があれば場所は問わない。反面、なくなれば、茨(いばら)の道が待っていると言えそうだ。

「本当に人から好かれる人は独立してもいいのではないか」と、石川さんはそう付け加える。

「かつて昭和40年代から50年代にかけて、レコード会社の力が衰退して、芸能プロダクションに人材が流出する時代があった。ネットが登場して、芸能界は再び転換の時代を迎えているということでしょう。

 転換の中でも人気が衰えなかった人は、人間関係を大事にしている人や、求心力のある魅力的なスターのような人でした。ある意味、フリーになることで、その人の人間性が試されるとも言える。自信だけで独立すると、手痛いしっぺ返しを食らうと思いますね」(石川さん)

いしかわ・としお。1946年生まれ。芸能レポーター。松竹映画宣伝部から女性週刊誌記者を経て、日本テレビで番組のレポーターとなり、以後は芸能界の情報レポーターとして活躍する。