4月25日、東京都をはじめとした4都府県に緊急事態宣言が発令され、スポーツやエンターテイメント関連の各種イベントが無観客での実施、もしくは中止や延期を強いられている。かたや3月25日にスタートしたあの“一大イベント”は今なお続けられてーー。

聖火リレーは現在、九州沖縄地方を回り、各地でセレブレーション(聖火到着を祝うイベント)を行いつつ、ランナーがトーチをつなげています。しかしながら、福岡県内を車椅子で走る予定だった“世界最高齢”の118歳の女性が新型コロナウイルスの感染拡大の観点から辞退を申し入れたように、出走を取りやめるランナーが相次いでいるのも事実。

 何より、国難にある中で聖火リレーが中止の議論対象にもならないことに、世間からは懐疑的な声も上がっています」(全国紙記者)

 4月22日には、香川県内で聖火リレーの沿道警備をしていた県警の巡査部長のコロナ陽性が発表された。同巡査部長が感染した経緯は明らかになっていないものの、聖火リレーがコロナも運んでいる可能性は否定できなくなった。

「特に芸能人や元オリンピアンなどの著名人が走るルートには、沿道に見物客が集まりやすく密になる場面が見受けられます。ランナーを応援しようと思わず声をあげてしまうこともあるでしょう。見物客や警備にあたる警察関係者、リレーに関わるスタッフに当のランナーと、屋外とはいえ誰もが感染しうるリスクを今一度考える必要がありそう。

 特に重症化しやすいとされる高齢者ならばなおさらのこと。118歳女性の辞退は家族からすれば命を守るための当然の決断と言えますが、『毎日新聞』の報道によると、彼女をランナーに推薦したのは命を扱う大手生命保険会社だったそうで……」(前出・全国紙記者)

 東京五輪の「ゴールドパートナー」として、いわば大会スポンサーとして名を連ねている同企業だけに、どうやら聖火ランナーには“スポンサー枠”があるようだ。この大会スポンサーと聖火リレーは無関係ではない。

スポンサーのための“パレード”

 テレビのニュース番組やワイドショーでもしばしば映し出される聖火リレーの現場は、沿道に向かって爽やかに手を振って走るランナーや、聖火をつなぐセレブレーションの様子ばかりだが、実は同時にビッグイベントが進行している。先の「ゴールドパートナー」や「ワールドワイドオリンピックパートナー」ら、東京五輪大会スポンサーの“キャラバン隊”によるパレードが行われているのだ。

 インターネット上では、これまで聖火が回った地域で撮影された写真や動画が多数アップされているのだが、ランナーが走る前の道を、それぞれのスポンサー色に装飾された派手な大型トラックが何台も連なって通過していく。大音量の音楽を流し、車上のDJが沿道の見物客を煽るように声を上げ、トラックの周囲ではパフォーマーが手を振ったり、踊ったりと大盛り上がり。まさにパレードの様相だ。

 沿道の見物客も同様に手を振り返し、一行をスマホで撮影しようと前列へと押し合っている様子もうかがえた。聖火リレー以上に“密”を作っているようにも思える光景だった。

 これは何のためのイベントなのだろうか。広告代理店の営業マンは「出資スポンサーのためのイベント」と解説する。

「例えば、世界最高峰の自転車レース『ツール・ド・フランス』のスタート前に行われるキャラバン隊が有名ですが、元は大会の協賛金不足を補うためにスポンサーを募る手段として始まったものです。今では大会を盛り上げるのに不可欠なイベントとして、各スポンサーがいかに観客の目を引くか趣向を凝らし、グッズを配ったりと競争しあうように宣伝、PRをする場になりました。

 オリンピックでも出資スポンサーへの“特典”として、本来ならば世界が注目する聖火リレーを宣伝の場として提供するべく“キャラバン隊”を企画したのではないでしょうか。ただ、開催自体に批判が向けられている、またさらなる感染者を出しかねない現状ではキャラバン隊を表立ってアピールできない事情があるのかもしれません(苦笑)」

 ただただ聖火をつなげているわけではなさそうだ。