不登校にいじめ、ひきこもり、死んでしまいたい気持ち……。子どもたちが直面するさまざまな問題に向き合い、学校に行けない当事者の視点から取材を重ねてきた、日本で唯一の専門紙がある。子ども記者も活躍する編集部は遅刻・早退・バックレ歓迎!ハプニングと生きる喜びに満ちた新聞づくりを元・不登校の名物編集長が明かす!

不登校の人数は増加し続けている

 千原ジュニア、伊集院静、藤田ニコル、星野源、田口トモロヲ、宮本亞門、押井守、中川翔子、生駒里奈……。この著名人たちに共通することは何か、おわかりだろうか。人気者で人を楽しませる才能を持つ人たち? いや、そうではない。それは彼ら全員が「不登校」の経験者であることだ。

 不登校とは、児童・生徒が30日以上、学校を欠席している状態をいう。このうち保健室登校をしていたり、病気や経済的理由から通えなかったりするケースは含まない。

 少子化で児童生徒数は、年々減少しているにもかかわらず、不登校の人数は増加し続けている。文部科学省の統計によれば、2018年の小・中学校での不登校の数は、16万4528人で過去最多を更新。そのうち90日以上欠席している子どもの数は9万5635人に上る。

 不登校に至るまでの背景はさまざまだ。いじめ、友人や先生との人間関係、成績へのプレッシャーや学業不振、校則へのストレス……等々。不登校になった本人でさえ、どうして学校に行けなくなったのかわからないことも珍しくない。

 そんな不登校の子どもたちの視点にこだわり、当事者やその親に向けて発信する唯一のメディアがある。それが『不登校新聞』だ。

 創刊は23年前の1988年5月。タブロイド版8ページ、月2回発行の紙とウェブの両方で購読できる。

「不登校」以外の問題も扱う

 現在、発行されている最新号は創刊から553号目に当たる。その見出しを一部、紹介しよう。

不登校経験者が聞く先生のホンネ『不登校、どう思ってますか?』》

《何年も前の話を持ち出すわが子、子どもの言葉に隠された願いとは》

《中学で人間関係に苦しんだ僕、見つけたのは自分を守れる術》

《今こそ休むことの価値を見直す、精神科医が唱える休ませる方法》

 不登校新聞は、不登校の子どもだけでなく、いじめや自殺、ひきこもりなど、若者を取り巻く問題にも広く目を向けるメディアとして知られている。

「現在、紙とウェブの両方で4000部ほど発行されています」

 そう語るのは、不登校新聞の編集長を務める石井志昂さんだ。

 丸刈りのヘアスタイルに黒縁眼鏡。一見、強面にも見えるが、しゃべりだすとその口調はなめらかでやさしい。

 石井さん自身、不登校の経験者だ。中学受験の失敗を機に学校生活が合わなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校に。その後、フリースクールへ入会。19歳からNPO法人「全国不登校新聞社」が発行する不登校新聞のスタッフとなり、'06年からは編集長を務めている。