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 男に溺れ、金に目がくらみ、欲望のまま犯罪に手を染めた女たち。人を騙し、“誰か”を殺めてしまった女たち。この世にはさまざまな「怖い女」が存在する。いったい、何が彼女たちをそうさせたのかーー。大きな事件から、あまり知られていない小さな事件まで。昭和から平成にかけておきた事件を“備忘録”として独自に取材をする『事件備忘録@中の人』による「怖い女」シリーズ、第2弾。

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 事件は平成17年12月に起きた。

 広島県福山市内の雑居ビルから出火、焼け跡からは男性と見られる遺体が発見された。司法解剖の結果、遺体は火元の喫茶店経営者の男性(当時50歳)と判明、男性の妻はその夜、友人らと食事をしており、その際にも夫の寝たばこを気にするなどしていたことなどから、当初は男性の寝たばこによる失火と思われていた。

 しかし1年後、広島県警と福山東署は、男性の妻の逮捕状を取る。妻はそのとき、すでに別の犯罪で服役中だった。

 捜査が進むにつれ暴かれた嘘で塗り固められた女の人生とは。そして、女のそばにいたもうひとりの女のその後。

結婚9日目に起きた事件

 殺人と現住建造物等放火の容疑で逮捕されたのは、被害男性の妻・依子(仮名/当時48歳)。

 依子は夫が死亡したのちに、県の融資制度を悪用し銀行から825万円を騙し取った疑いで知人の男(当時36歳)とともに逮捕、服役中だった。

 失火だと思われていた雑居ビルの火災だったが、警察はこの妻に対して疑いの目を持っていた。

 そもそも被害男性とこの妻が結婚したのは男性が焼死するわずか9日前のことで、さらに同じころ、その男性に対して1億5000万円の生命保険をかけていた。当然、受取人は依子だった。

 告別式では泣いて取り乱す依子を、周囲の人々は冷ややかな目で見ていたという。男性の母親は依子に対して、

「お前が殺したんじゃろうが!」

 と、怒りを隠すこともなかった。が、当の依子は周囲の視線をものともせず、「ひどいことを言うね」などと言って悲劇の妻を演じていた。

 男性の家族らは、当初から依子との結婚には猛反対していたという。

 その理由は、依子の多額の借金だった。加えて、依子は自身が運営する結婚相談所の会員らからも、なにかにつけて金を要求していたという話もあった。それでも男性は家族の反対を押し切って依子と結婚してしまう。それは、依子が「妊娠した」からだった。