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ー 給食の“量”問題
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ー 休憩時間は、たったの“6、7分”

  学校生活の中で、子どもたちにとって楽しみの一つでもある「給食」。先生たちに話を聞いてみると、私たちが知ってるようで知らなかった事実が見えてきてーー。ノンフィクションライター・大塚玲子さんが現役の先生たちを取材しました。

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 学校給食、それはこの国において老いも若きも盛り上がる、稀少なトピックのひとつです。シニア世代は脱脂粉乳の不味さを懐かしく語り、保護者世代はミートソースのソフト麺から牛乳ビンのキャップの開け方まで、楽しい思い出話が尽きません。

 でも実はそんな給食も、先生たちの目を通すと、まったく別の側面が浮かび上がってきます。え、先生たち、実はそんなことをしていたの!? と驚かされる「先生のホンネ」シリーズ。今回は「学校給食」について迫ります。

給食の“量”問題

 保護者たちに取材をしていると、「学校給食を食べる時間が短くて、子どもが困っている」という話をときどき耳にします。実際のところどうなのか、先生たちに尋ねてみたところ、どうも小学校に関してはそれほど厳しくはないようです。

「白衣を来て手洗いをして、給食室に給食を取りに行って戻って、配膳をして。みんなで『いただきます』をするまで約10分。食べるのが30分くらいです」と話すのは、神奈川県の公立小学校のN先生。30分なら、それほど短くもなさそうです。

 一方、時間が足りない傾向がみられるのは、中学校です。長野県の公立中学校のH先生は「時間が短いのに加え、量の問題もある」と話します。

「準備が15-20分で、食べる時間は10-20分くらい。小学校のときと比べて『量』もすごく増えるので、特に1年生の子たちは、みんなヒーヒー言いながら食べています(苦笑)。中1と中3なんて体格が全然違うのに、量は同じなんですよね。配膳のときも、小学校のときの感覚でよそっていると大量に余ってしまいます」

 それなら最初から給食室で、中1の分は量を少なくすればよさそうですが……。おそらく「給食費を同額徴収しているから量も同じにしなければならない」というのでしょうが、だったら小学校のように、給食費の額も学年によって差をつけたらいいのでは。

 全生徒を同額にしたほうが集金の手間が減るのかもしれませんが、そのために子どもたちに無理に多く食べさせるのだとしたら、本末転倒です。現場にいる先生たちも、ジレンマを感じているようです。

「いまどき『完食指導』など時代に合いませんし、『早く食べなさい』と本当は言いたくない。でもやっぱり『平気でご飯を残す子に育ってほしくない』とも思うし、残すにしてもちょっとは『ごめんなさい』という気持ちをもっていてほしい。その辺でよく、ジレンマを感じています」(H先生)

 確かに、そうでしょう。親だって、子どもに無理にたくさん食べさせたくはないものの、わが子が「食事を平気で残す子」になってしまうのも困ります。そう考えるとやはり、給食の量(&給食費)を、最初から加減してもらえるとよいのですが……。

 量を変えられないなら、せめて時間を延ばしては? と思いますが、これまた簡単にはいかないようです。

給食の時間をもう少し長くしよう、という話は、職員会議で出ることがあります。ただ、ご飯のときはいいんですけれど、パンのときは業者にケースを返却する時間が決まっているらしく。そんなふうに、学校の一存で決められないところもあって……」

 うーむ、なるほど。でも、誰か業者に「ケースの回収の時間をずらせないか」と確かめることはしたのや否や? 何か解決方法がありそうな気もしますが、先生たちはあまりに忙し過ぎて、やり方を変えるところまで手がまわらないのかもしれません。

 給食は、アレルギーがある子どもへの配慮も欠かせません。命にもかかわることなので、無理に食べさせるのは厳禁ですし、先生は後始末にまで神経をとがらせていることもあります。

「たとえば牛乳アレルギーの子は、牛乳が手につくのもダメなので、パックを開いて洗う係をやらせないように気を付けています」と話すのはN先生です。「昔と比べて教員の負担が増えていることを実感している」と言います。