Bさんとの裁判では最後まで認めず

とても長かった……。通常の撮影ではあるはずのない身体的接触、それに伴う藤里の言動や行動を然るべき機関に訴えるべきだと気づいてから2年あまり。心身の不調を抱え、何度も気持ちが折れそうになりながら、やっとの思いでここまで来ました。ですが、これはあくまでも裁判所が客観的証拠に基づいて私が訴えた被害の一部を認めたというだけ。

 証拠が足りないと判断されて、被害が認めてもらえなかった部分もありましたし、何より一番つらかったのは、複数回に渡る答弁書のやりとりの中で、“この訴えは原告の被害妄想であり精神状態が心配である”などと言い、“不法行為は一切なかった”と結局、最後まで認めようとしなかったこと。今回の判決で一つの区切りにたどり着くことはできましたが、結果として納得できるものではありませんし、私自身の心身の回復はこれからです」

 ポートレート作品を中心にモデルとして活動していたBさんが初めて藤里と仕事をしたのは、2015年のこと。その際は、ほかのスタッフも現場に居合わせており、被害を受けることはなかったものの、同年に2人きりで再び撮影を行った際に過度なボディタッチを受け、その場で拒否したという。

「このときは、短時間の撮影でした。その後半、私が椅子に座って、服の胸元がはだけた状態で撮影していた際、徐々に近い距離のアングルになり、突然、胸に顔をうずめてきました。一瞬、何が起きているのかわからず、混乱して固まっていたところに、さらに下半身に手が伸びてきて……。

 私は、その手を振り払って立ち上がり、撮影を中断しました。私が泣いていたからか“ごめん”と言われたと思いますが、ショックで直後のことはよく覚えていません。後日、改めてLINEのやり取りをしましたが、反省の色が薄いことにガッカリしました」(Bさん、以下同)

作品には魅力を感じていたものの裏切られたBさん

 その後、しばらくは藤里と距離を置いていたが、藤里が撮影する作品自体には魅力を感じていたBさん。やり取りの中で、彼が注意を受け入れたことも鑑みたうえで、2018年に藤里の写真展を見に行ったことがきっかけとなり、同年に改めて写真展の開催を目的とした撮影をすることになった。しかし、その思いは裏切られる。

「撮影しながら徐々に近づいて来て、後ろから胸を掴まれたんです。藤里は、なぜか鏡越しにその様子を撮影していて……。すぐには状況が飲み込めず、シャッターは切られ続けました。“今は撮影中で、撮影は仕事で……”と、目の前で起きていることが、どういうことなのかわからず、とにかく混乱しましたが、直後に撮影場所を離れ、やめてほしいと伝えました。その場ではわかりませんでしたが、後になってから“こんな内容の写真は写真展で発表できるはずがないのに、なぜ撮影する必要があったのだろう”と思いました」

 モデルとしての意識から、撮影中は咄嗟に動くことができなかった。また、撮影に関する経費を負担していたこともあり、その場では注意にとどめ、撮影全体の中断を申し出ることができず、「我慢するしかない」と思ってしまったという。

 そして、このときの撮影による写真展がファンから好評だったことを受け、2019年にも撮影を行うことに。「今度こそ、ただ普通に写真を撮ってもらいたい……」そんな思いから、事前の連絡から藤里に“厳重注意”を呼びかけていたが、その願いが通じることはなかった。