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 普段、何げなく使っているスマートフォン(以下スマホ)は、今やなくてはならない存在。

 そもそも10年前はなくても平気だったのに、身近な存在になったのは、便利さと情報処理能力の高まり。それによって私たちは気づかぬうちに本能の

退化どころか、スマホによって“老化”しているという。

 目の疲れ(眼精疲労)を引き起こすのが“スマホ老眼”。スマホによる眼精疲労の検査をいち早く取り入れ、アイケアで定評のある『メガネスーパー』アイケア研究所・上席研究員の田澤智雄さんに話を聞いた。

「老眼とは目の調節機能が低下することによって、近くのもののピントが合いにくくなることです。しかし“スマホ老眼”は、長時間スマホ画面を見続け、近くにピントが合ったまま戻りにくくなることなんです。

 そのうえ、ブルーライトの影響や、小さい画面を見続けることで、知らずしらずのうちに目の筋肉に負担を与えてしまい、その結果、目が見えづらい、かすむ、しょぼしょぼする、乾燥する、痛い、といった症状が出てきてしまいます」

 目がしょぼしょぼ、チカチカするなんて、誰もが経験ありそうな症状。それは、すでにスマホ老眼予備軍なのかもしれない。

「私は、スマホだけじゃなくテレビやゲームやタブレット端末を毎日、何時間も使っていたんです。最初は目の充血やドライアイ程度だったのがだんだん目の奥が痛くなり、今までまぶしいと感じなかったのがすごくまぶしくて……」

 こう訴えるのは、スマホ老眼に悩む30代の女性。目の老化がさらに進むと、緑内障や網膜障害などが出るリスクが高まり、最悪、失明に至るというから、スマホを所有している以上、他人事とは言えない。

 さらに田澤さんはスマホの目に与える悪影響として、ブルーライトの存在をあげる。

「ブルーライトは睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑えてしまう作用があります。就寝前に布団にスマホを持ち込むと“スマホ老眼”と“睡眠障害”両方の危険性が高くなります」

 寝る前にハンディなスマホで本を読んだり動画を見ることで、脳は覚醒して興奮状態に陥る。

 さらに、目の筋肉疲労は限界に達しているのに、つい続きが気になってスマホを手放せないでいると気がつけば朝なんて経験はないだろうか。

「スマホは画面と目の距離が近いため、パソコンやテレビより多くのブルーライトを浴びるので、さらに悪影響なんですよ」(田澤さん)

■対策はトレーニングと目にいい栄養

 スマホはすでに私たちの生活に深く根づき、なくてはならないものになっているが、スマホは少なからず“害”を及ぼすものだと理解し、うまく付き合っていくことが大切。

 その対策を田澤さんはこうアドバイス。

「まずはスマホを見る時間を減らす“休息時間”を多めにとり、目を休ませることにつきます」

 さらに続けて、

「スマホを見ているときでも、目と画面の距離を40センチ離すだけでも違います。また、明るさを抑えることも効果があります。モニター画面から目への刺激を弱めるために、スマホの“画面表示と明るさ”を選択し、ナイトシフトに設定するだけで、目への影響は軽減されます」

 これはパソコンも同じで、白い部分がライト(照明)のように感じられたら明るすぎ、グレーやくすんだ色に見えたら暗すぎ、ということ。

「そのほかにも、ブルーライト対策には、低減画面シートというものがあります。これを画面に貼ったり、ブルーライトをカットするメガネもあります。あと、スマホを頭部や身体から離して使用することができる、ハンズフリー用機器を利用したり、電磁波をガードするカバーをつけるのも効果がありますね」

 さらに、日々の生活の中で意識的に取り入れられるものもある。

「長時間スマホを使っていると、まばたきの回数が減り、ドライアイの原因になります。ですから、こまめに目薬をさすだけでも目への負担を軽減します。あとは食べ物、目にいい栄養素をとることです。

 肉や魚などのビタミンB6は水晶体などの代謝によく、納豆や緑黄色野菜などのビタミンB2は、角膜炎の予防になります。ほかにも、ナッツなどのビタミンEは目の老化防止や白内障予防、DHAは目の粘膜を保護してくれます」

イラスト/アライヨウコ