「毎日学校が1限からで、深夜までの水商売は無理。今のお店に面接に行って月1日でも2日でも働ける日に働けばいいって言われて、勇気出してやりました。店でやることは、私が最初に服を脱いで、相手の人にシャワー浴びてもらって。

 レンタルルームみたいなところで、人によるけど、向こうがめちゃ私のカラダを触ってきたり、なめてきたりみたいな。最初はすごく気持ち悪くて“やめてください”って言った。触るのはダメだけど、なんかいちいち断るのが面倒くさくなっちゃって。もういいやって」

 大学1年の夏からおカネがなくなったとき、風俗店に出勤する。清水の舞台から飛び降りる思いで風俗嬢になり、月1日か2日性的サービスをする。ソフトなサービスなので収入は低い。月2万~3万円稼ぐようになり、なんとか合宿にも参加でき、学生生活を送ることができている。

 親世帯が低収入で日本学生支援機構の奨学金で学費を工面するものの、通常のバイトだけでは学生生活が成り立たない。典型的な大学生の貧困だった。

「無駄遣いしないし、なにも欲しいものはないし、部活をやって大学を無事に卒業したいだけです。やっぱり月3万円くらい、どうしても足りない。風俗は、何か気持ち悪くなってしまって。なんていうか、自分がやっていることが気持ち悪かった。

 自己嫌悪です。全然知らない人と裸で寝ているとか変だし、おかしいことをしているなって。彼氏にも悪いし、なにもいいことはないです」

 彼氏と付き合って3年目、初めて肉体関係になった。大学と部活はさらに忙しくなり、時間はなくなった。おカネは風俗だけでは足りなくなって、インターネットの記事で眺めたパパ活に手を出した。それが1年前のこと。大学と部活とバイト以外に風俗勤務月2日、パパとの売春が月1日、カラダを使って平均してプラス月5万円を稼ぐ。そんな日常になった。彼氏への罪悪感はある。いくら悩んでも答えは「今は割り切るしかない」、そう思う。

「彼氏に対しては、バレなきゃいいって。社会のことはまだよくわからないけど、おカネ持っている人は持っているじゃないですか。周りはみんな親からおカネをもらえて、恵まれている。けど、私は普通におカネがない。そういう星の下に生まれたのだから、風俗で働いておカネをもらっても、仕方ないことなんじゃないかって」

「需要と供給が合っている」

 私は広田さんが話してくれたこと、今やっていることを肯定した。確かに限られた時間の中でカラダを換金するしか学生生活を乗り切る手段がないのだろう。

「風俗で1度やっちゃったら、もう2度も3度も同じみたいな感覚はあります。風俗店では6時間で2万円だけど、パパとか出会い系で相手を見つければ1時間で2万円くらいになる。効率はいいと思う」

 話しているうちに緊張した表情は和らぎ、言葉は少し滑らかになった。大学卒業まであと3年。彼氏や大学の仲間に絶対バレないように風俗と売春をして、なんとか卒業して国家試験合格をつかみたいと思っている。

「世の中にはおカネが余っている人がいて、その人は若い女の子に会ってエッチしたい。私を欲しい人がいて、私はおカネが欲しくて、需要と供給が合っている。長い時間、すごく悩んだけど、それは悪いことじゃないって。今日、やっぱりそう思いました」

 21時半、ホテルの喫茶室を出た。彼女は歌舞伎町の方面へと向かって行った。歌舞伎町を歩く清楚な彼女の後ろ姿を見送る。なんとも言えない大きな違和感があった。


中村 淳彦(なかむら あつひこ)◎ノンフィクションライター 東京都生まれ。アダルト業界の実態を描いた『名前のない女たち』『職業としてのAV女優』『日本の風俗嬢』『女子大生風俗嬢』など著書多数。フリーライターとして執筆を続けるかたわら介護事業に進出し、デイサービス事業所の代表を務めた経験をもとにした『崩壊する介護現場』『ルポ中年童貞』が話題に。最新刊は、女性の売春が政治経済に影響されることを解説した『図解日本の性風俗』(メディアックス)。