渡辺美里

 女性ソロシンガー初のスタジアムライブを20年も続けるなど、日本を代表するボーカリストとして走り続ける渡辺美里。3年ぶりに発売するニューシングルのこと、カップリングのあの名曲について、そして、50歳という年齢まで32年間1度も止まることなく歌い続けている理由も聞いてみた。

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「道で偶然会った初対面の方から突然“『My Revolution』が私の十八番なんです!”って伝えられて、“ぜひ、引き続き歌ってくださいね”ってお返事することがよくあります(笑)」

 渡辺美里の代表作のひとつで、時代を超えて愛され続ける名曲『My Revolution』(’86年)。

「私にとっても特別な曲です。多くのみなさんに私を知っていただくきっかけになった作品だとも思いますので。とても生命力のある曲なんですが、だからといって、歌詞で直接“元気を出していこう!”と歌っている曲じゃないんですよ。なのに、なぜか“元気になる”と言っていただけるのは、メロディーとアレンジと歌詞と、歌声も含めてかもしれないですが、この4つの要素が足し算じゃなくて、掛け算になったことで、時間を超え、たくさんの方に届いているんだと思います」

 7月5日、3年ぶりにリリースしたニューシングル『ボクはここに』のカップリングとして、この名曲『My Revolution』のめざましクラシックスver.が収録されている。

「今回、カップリングに入れさせていただいたのは、アレンジをしてくださった大村雅朗さんが亡くなって、ちょうど20年がたつからなんです。

 大村さんのエネルギーが、この曲に息づいていて、リリースされてから30数年“いまも、こんなにみなさんが大好きでいてくれているよ”って、伝えたいなという自分の中でのメッセージがある。

 この曲を小室哲哉さんが作曲してくださったことは、みなさんよくご存じだと思うんですけど、アレンジがあってこその曲だと、小室さんも思っていると思います。今回、新たに世に出すことで、“美里ちゃん、いまもそうやって大事に歌ってくれているんだね”って、大村さんが見てくれているような気がしますね」

真心ブラザーズ・桜井が手がけた新曲への思い

 18歳でデビューしてから、1度も歩みを止めることなく歌い続けている理由を「周りのスタッフ、ライブのメンバーや、仲間たち。これまで出会うことができた人との、奇跡に近い、幸運な巡りあわせのおかげ。そして、謙虚な気持ちで(人に対しての)引き寄せ力は強いと思います(笑)」と、話す。

 その数々の奇跡の出会いに新たに加わったのが、新曲『ボクはここに』を作詞・作曲した真心ブラザーズの桜井秀俊。

「今回、初めて真心の桜井さんとご一緒させていただきました。曲をいただいたときに、初めて歌うタイプの曲だなと思ったんです。この32年で、本当にいろいろな種類の作品に出会ってきたんですが、それでもまだ、初めてと感じる曲があるんだなって思ったのと同時に、どこか懐かしい気持ちにもなったんですね」

 7月8日からスタートする2年ぶりの全国ツアーを前に、“夏に動き出すにあたって、夏の曲が歌いたい”という希望を持つなかで出会った。

7月5日に発売された『ボクはここに』通常盤 1111円+税 ※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページにジャンプします

「何度も聴いていくうちに、“あの子じゃん!!”と思ったんです。

 自分で作った『夏が来た』という歌があるんですが『ボクはここに』と同じで、“夏まつり”が出てくる曲なんですね。『夏が来た』は、ちょうど(20年連続という前人未到の記録を達成した)西武スタジアムを何年かやらせていただいたときに、毎年の恒例ライブになっていたので、“また、スタジアムに帰ってきてね”という意味で、ストーリーを作ったんです。

 そこに登場した子の、その後が『ボクはここに』に描かれているように思えたから、どこか懐かしい感覚になったんだなと納得して」

 手がけた桜井にも、このことを話したのだそう。すると、

「“歌詞がかぶったかもしれないと思って、焦った”っておっしゃったので、本当に偶然だったみたいです(笑)。

 桜井さんが今回の曲に関して、“地元を離れた主人公が、ふるさとを思う歌はすごく多いけれど、実は、その場所に生き続けて、生活し続けている人のほうがもっとドラマがあったりするんですよね”ってお話しされて。

 確かに、私は旅をするのが好きですし、ツアーなどで旅をするのが仕事みたいなところがありますから、外に目を向けることが多いんですね。でも、一昨年のデビュー30周年で47都道府県ツアーをやったときに、かなりのライブやツアーをやってきたと思っていたけれど、それでも“初めて美里さんのコンサートを見ました。ずっと好きだったけど、地元に来てくれたから、やっと見れました”と言ってくださった方がすごく多かったんです。

 その方たちの思いをいい形で作品にできたらいいなと、ずっと思っていた。だから、あえて細かく伝えずとも桜井さんが“僕はここに”という目線で書いてくださったのが、なんでわかったんだろうと不思議で。やっぱりクリエイターってすごいですよね。この曲は、私が歌うべきだし、歌わせてほしいと思いました」

「健康にいいと聞けば、なんでも試してみます」

渡辺美里

 ここに居続ける“ボク”は自分自身でもあるという。

「デビュー32年目に突入して、いまちょうど50歳。音楽を中心に自分自身の思いを形にしてきた自分(僕)は、ずっとここにいるという気持ちがあります」

 毎年、数多くのアーティストが誕生していく中で、30年以上にわたり第一線を走り続けられるアーティストは数少ない。

昨年、丙午(ひのえうま)生まれの50歳のアーティストばかりが集まったライブをやったんですね。怒髪天の増子直純さんとか、スガシカオさん、ウルフルズのトータス松本さん、オリジナル・ラブの田島貴男さん、ザ・イエロー・モンキーの吉井和哉さん、斉藤和義さん。みんな同級生なんですよ!

 これだけ個性強くやっている人たちが集結すると、刺激を受けましたね。みんないい年の重ね方をしていてカッコいい。いつ彼らと同じステージに立っても、恥ずかしくない自分でいたいなと思いました」

 10年後のライブも、絶対に見たいと思っているファンが多くいるはずと伝えると、

「10年後って、みんな還暦なんです! ビックリしちゃうけど、楽しみですね。昨日、たまたま大友康平さんとご一緒したんですけど、ちょうど私たちの10歳上になる大友さんの世代で去年、還暦を迎えられた方々も、桑田佳祐さんに、鈴木雅之さんとすごい! 丙午生まれのみんなで“すごい先輩たちに比べたら、俺たち、まだまだ青いね”って話したこともあって(笑)」

 “自分で年齢について考えることはあまりないけれど、仕事柄、周囲から認識させられることが多いんです(笑)”と語る渡辺に、音楽以外でいまハマっていることを聞くと、

「う~ん……。心健やかに、健康でいることですかね。健康にいいと聞けば、なんでも試してみますよ。ただ、お米からできている発酵したものが、私には合っているのかも。飲むのもいいし、日本酒はお風呂に入れると代謝がよくなるし。

 ただ、カッコよく聞こえるかもしれませんが、ぜんぶ音楽につながっていきますね。これまで、一瞬でも歌から離れたいと思ったことがないんです。ワーカホリックなのか、すぐに歌いたくなっちゃう(笑)。歌っているとどんどん元気になるんです。気が巡りだして。心も身体も新陳代謝をよくするのに音楽って大事だと思うんです。歌うのでも、聴くのでも」

 歌うことで生まれてくる渡辺のエネルギーに勇気づけられている人は多い。

「ときどき、悲しい曲なのに聴いていると、元気が出てくるって言われるんです。それが“美里マジック”(笑)。私の声にそういうエネルギーが多少なりともあったらうれしいですね」

 渡辺美里の歌声は、またひとり、誰かの前に進む一歩につながっているはずだ──。

<リリース・ライブ情報>
★『ボクはここに』通常盤 1111円+税

★7月8日の石川県・金沢市文化ホールを皮切りに『渡辺美里 M・Generation Tour 2017』スタート! 
詳細は、公式サイト
http://www.misatowatanabe.com/