名湯&秘湯の温泉旅行は日本人のお楽しみのひとつ。ところで、温泉には具体的にどんな効果があるの? 上手な温泉巡りのポイントは? 温泉教授の早坂信哉先生に聞いた。

自然の美しさを堪能しながらの露天風呂。カラダだけでなく心も癒されます(秋田県・乳頭温泉)

入浴のメリットは温熱、浮力、水圧

 名湯&秘湯の温泉旅行は日本人のお楽しみのひとつ。ところで、温泉には具体的にどんな効果があるの?

「まずは温泉を含め、入浴による身体への効果をお話ししましょう。入浴による最も大きな効果は、身体を温める温熱作用です

 と、温泉教授の早坂信哉先生。

「血管も広がり、血の巡りもよくなります。そして、体内の老廃物が運び出され、排出されます。つまり新陳代謝が活発になるのです」(早坂先生、以下同)

 代謝アップは便秘予防や美肌など、女性にとってうれしい効果がたくさん!

「浮力も入浴の作用です。肩まで湯に浸かると、浮力で体重は約10分の1になります。身体が軽くなることで、関節への負担が軽減したり、肩こりや腰痛が和らいだりもします。

 さらに、水圧も入浴の作用。入浴時の水圧は意外と大きなもので、肩まで湯に浸かった状態でお腹まわりを測ると、空気中に比べて数センチ縮んでいるほど。水圧の締めつけ効果は、足のむくみの解消などにも有効です

温泉地の場所で効果も違ってくる

 温泉では、入浴作用に加え、泉質の適応症の効果も期待できる。温泉の“効能”の適応症は、平成26年に発表された情報。胃腸や呼吸器系の機能回復などができるものも。自分に合った温泉を探す手がかりになるので、チェックして。

「最近は温泉の湯に近い香りや色みの入浴剤も多くありますね。温泉の源泉の成分を分析して同じ成分を入れることで、身体によい効果を再現することができたとしても、ひとつだけ、再現できないものがあります。それは、環境です

 温泉地に湯治で1週間滞在すると、ホルモン値が正常に近づく効果があるそう。

「1~2日の温泉旅行では、こうした作用は起こりませんが、適応症の疲労回復やリラックスはできるでしょう。温泉地には景観や気候、地形など、日常生活にはないいろいろな刺激があるので、気分転換やリフレッシュにもつながりますよ。

 温泉のある場所でも、人体への影響は変わってきます。山の上にある温泉は、体力強化向き。標高1000メートルを超えるようなところは空気が薄く、気圧も低いので、交感神経を刺激して身体が興奮状態になるからです。疲れを癒したいなら、森林浴効果が期待できる森の温泉や潮風が身体にやさしい海沿いの温泉はおすすめです

早坂信哉先生 撮影/竹内摩耶

欲張りすぎないのが温泉巡りのポイント

 温泉旅行では、モトをとろうと何回も入ったり、あちこちハシゴしたり。そんな経験をしてる人も多いはず。

「温泉では欲張らないことが大切(笑)。温泉入浴は本来は1日1回でいいんです。せっかく旅行で来たなら2~3回はいいかと思いますが、それ以上入ると、泉質によっては、皮脂が取れすぎて肌がガサガサになるなど、逆効果になってしまうことも。入浴時間も汗をかいたら、いったん出るようにしましょう」

 NGは、温泉に浸かりながら、湧き出してくるお湯をすくって飲むこと。

浴用と飲泉の許可は違うものです。飲んでいいのは、飲泉の許可があるもののみで、飲用のスペースで既定の量を飲んでください。飲泉の許可がある温泉宿のお湯でも、浴室のものは飲んではいけません

温泉の湧出量&お湯の新鮮さが大切

 いい温泉選びのポイントとして早坂先生があげるのは、豊富な湧出量。

「湧出量は脱衣室に掲示してある温泉分析表に記載されています。目安は、宿の宿泊客数と同じ湧出量。100人泊まれる旅館なら毎分100リットル分の湧出量があればいい温泉といえます」

 もうひとつは、管理が行き届いているかどうか。

温泉水にもエイジングという言葉がありまして、10時間、20時間使い続けると、成分が変化してきます。何十時間も使いまわしている温泉だと、成分表にある内容と違ってきている可能性があります。管理具合については、浴槽や浴室がきれいに整えられているかどうかで、判断できるかと思います

 野趣あふれる天然の温泉は、源泉に近いから効果も高そう! でも、早坂先生は心配な面もあるという。

放置された野外のお湯には雑菌が繁殖していることもあります

 夏の休暇の温泉選び。あなたは泉質で選ぶ? 海、森など場所で選ぶ?

※全国7500か所の温泉に浸かってきた温泉チャンピオンの郡司勇さんに聞いた『目的別カラダに効く温泉はココだ』を、このあと15時に公開します。

<プロフィール>
早坂信哉先生◎東京都市大学教授、温泉療法専門医。日本健康開発財団温泉医科学研究所所長として各地の温泉と共同で研究を進めている。著書に『たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法』『入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」』など。テレビ、ラジオ、雑誌にも多数出演。