有村架純 撮影/伊藤和幸

本当にたくさんのシーンを撮影してきましたが、今ふと思い浮かぶのは、島谷さん(竹内涼真)との恋愛からお父ちゃんが見つかるまでの、16週から18週にかけてですね。5月から6月あたりで撮ったんですけど、ギュッとまとめての撮影で、自分の集中力も切らせたらいけないし、濃かった1か月弱だったという印象があります」

 と、ヒロインを演じた朝ドラ『ひよっこ』を振り返る有村架純(24)。

「週の初めに島谷さんと付き合うシーンを撮り、仲よくしていたら金曜日にはもうお別れのシーンを収録なんてことも(笑)。すごく感情の起伏が激しくて、精神的な面でつらかったです。

 そのうえ、お別れしたあとにお父ちゃんが見つかって、感情がぐちゃぐちゃになって……。監督ともお話ししたんですが、世津子さん(菅野美穂)とのシーンは、みね子がいちばん人間らしく感情をぶつけるので、すごく大事に撮ってくださったなと思います」

 そして記憶をなくした父・実(沢村一樹)が奥茨城の田んぼを前に、家族と新しい人生に向き合う決意をする名場面につながっていくのだが――。

あの田植えのシーン、5月にロケで撮影しなくてはならなかったので、お父ちゃんが奥茨城に帰ってくる過程はだいたいの流れをお聞きしただけの、台本が上がる前の撮影でした。でも、ふたを開けてみたらすごく濃い内容で(笑)。視聴者の方は気がつかないかもしれませんが、演じていた側だと“こう演じておけば”という後悔は少しありました

 街を歩く時間もほとんどなく、外で1度も“みね子”と呼ばれたことがなかった、という有村。

 後半、視聴率は20%超えをキープするようになったが、放送開始当初はこれまでの朝ドラに比べ低かった――。

気にしていないようで、気になっていたのかもしれません。最初のころは食欲もなかったし、ちょっと体調を崩していた時期もありました。こんなふうに気持ちが身体に現れることは今までなかったので、よほど考えてしまっているのかな、って

有村架純 撮影/伊藤和幸

 共演者たちは、ヒロインの有村がいつも周りに気を遣い、現場を盛り上げていたと話す。本人も周囲との会話を楽しみながら撮影に臨んでいたが、見えないプレッシャーに悩まされていたことを告白。

「今思うと、自分との戦いでしたね。余裕がなくて不安定になるときもありましたが、絶対に現場を止めることはしたくなかったので、とにかくセリフを入れて現場に行こう、と。家に帰ると、いろいろな思いがこみ上げてきて泣く夜もありましたけど(笑)、そんなときは友達や家族に励ましてもらったりしました

 気になるのは、最終回へ向けてのヒデ(磯村勇斗)との恋の行方。

ヒデさんとの恋は、ただの青春の1ページの爽やかな交際ではなく、もっと肝の据わったというか、先を見据えた関係でありたいとみね子は考えているのかな、って

 昨年9月末の先行ロケからクランクイン。1年近くにわたって演じきったことで、何を得られた?

何かに耐えるということは、任せてください!(笑) 長い時間を過ごせたからこういう気持ちが生まれてきたと思うし、今はみね子がすごく愛おしい存在です。役や作品、キャストさんやスタッフさんたちに対し、どれだけの熱量を持って接するのかを大事にしなくてはいけない、と思いました。本当に、自分の“気持ち”というものが作品に現れるのだ、と勉強させていただきましたね」

ご褒美はこれから♪

「撮影終了まで1か月を切った8月初旬。『まれ』でヒロインを演じた(土屋)太鳳ちゃんが、差し入れをたくさん持ってきてくれたんです」

 友達からの陣中見舞いを受け、無事に撮影を乗り切った有村。1年間頑張った、自分へのご褒美は何?

「お寿司でもなんでもいいですけど、おいしいものを絶対に食べにいこう、って思っています(笑)。まだしばらくは落ち着かないのですが、少しまとまったお休みをいただけるようなので、どこか旅行に行けたらいいな、って。今から楽しみにしています」