『ジュリーと恋と靴工場』●監督:ポール・カロリ、コスティア・テスチュ/出演:ポーリーヌ・エチエンヌ、オリヴィエ・シャントロー、フランソワ・モレルほか/上映時間:1時間24分/フランス/配給:ロングライド 9/23(土)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開中 (c)2016LOINDERRIÈREL’OURAL–FRANCE3CINÉMA–RHÔNE-ALPESCINÉMA

 今年の上半期はアカデミー賞を沸かせた『ラ・ラ・ランド』や日本の舞台でもおなじみの『美女と野獣』が大ヒットして、ミュージカルというジャンルが久しぶりに注目を集めている。そして、今度はフランスからちょっとかわいいミュージカルがやってきた。靴工場という舞台もユニークで、見終わると心が軽くなる。

 25歳のヒロイン、ジュリーは恋人にフラレた後、職探しを始めるが、正社員への道のりは厳しく、不安定な日々を送っている。そんな彼女は、ある時、伝統的な職人技を守り続けている高級靴メーカーの工場に仮採用となる。今度こそ、正社員になりたい、と決意して働き始めたジュリー。ハンサムな運転手のサミーに新しい恋の予感も感じて、やっと人生が順調に進み始めた……と思いきや、入ったばかりの靴工場が近代化のあおりを受けて閉鎖されそうになる。熟練の女性職人たちはストライキを起こし、その騒動にジュリーも巻き込まれる。

 入社した会社のパート社員にはなれても、なかなか正社員にはなれないというジュリーの就職事情は今の日本も同じなので、この映画の背景は実はけっこうシリアスだが、それが歌やダンスを通じて語られるので重くならず、さらっと見ることができる。特に楽しいのは“戦う女”と呼ばれる赤いフラットシューズをはいてヒロインたちが踊る場面。華やかなエナメルを使いながらも、歩きやすそうな紐靴で、その足取りは軽やか。そんな靴と出会うことで、ジュリーも今後の人生や恋について考え直す。

 ジュリー役はフランス映画界の注目の新人、ポーリーヌ・エチエンヌで、気取らない雰囲気で等身大のヒロインを好演する。誇り高き靴職人たちを演じるのは幅広い年齢のプロのダンサーたち。伝統の技を守り抜こうとする大人の女性たちの心意気が伝わり、自分探しを続ける若いジュリーとの対比が印象に残る。

文/大森さわこ