“ファミレスちょい飲み”を徹底比較します(撮影:尾形文繁、風間仁一郎、今井康一)

 以前、飲み放題付き1人4500円の宴会に30代の知人男性を誘ったところ、「高すぎて行けない」と断られ、愕然としたことがある。アルコール入りで5000円を切るならまあまあだろうとの感覚が、実はもはやバブル的遺構だったのかと。

 では、いったいいくらなら高くないのか。ホットペッパーグルメ外食総研(リクルートライフスタイル)が発表している「外食市場調査 」の2016年度年間結果を参考に見てみた。

 調査対象は首都圏、関西圏、東海圏における、夕方以降の外食および中食で、年間の外食延べ回数で最も多いのが「40代男性(14%)」で、1回当たりの外食単価は2528円となっている。その次が「30代男性(12.9%)」で、単価は2401円だ。利用先を業態別にみると、回数がいちばん多いのが「居酒屋(17%)」で、そこでの1回当たりの単価は3457円になっている。

 これは年代別の数字ではないが、確かに居酒屋で4500円は高かったらしい。大いに反省している。

 居酒屋での飲み代といえば「鳥貴族」チェーンの値上げがニュースになったが、それでも自分が学生だった頃から考えると居酒屋の単価はずいぶん下がった印象だ。しかし、安く飲めるのは居酒屋だけではない。

 気軽なちょい飲みスポットとして筆者が注目しているのがファミレスだ。先の「外食市場調査」で見ると、ファミリーレストラン(回転ずし等含む)での外食回数は12.5%と、居酒屋についで高い。そして、すかいらーくチェーンを筆頭に、いまや低価格おつまみに力を入れているファミレスは少なくないのだ。

ファミレス飲みなら1500円程度でもいける!

「ちょい飲み」という言葉が登場してからもう数年経つ。「吉野家」が“吉呑み”を始め、「モスバーガー」や「ケンタッキーフライドチキン」等おなじみファストフードでもアルコールを提供する店舗が増えてきた。

 “ガッツリ飲み”で居酒屋に向かうのとは異なり、食事の軽いお供としての“ちょい飲み”なら、懐も痛みにくいというわけだ。そんな中でも“ファミレスちょい飲み”は、なかなか侮れない。実際にいくらくらいで飲めるのか、各メニューを検証してみた。

 全国展開しているおなじみのファミレスの中から店舗数の多いブランドとして、「ガスト」「サイゼリヤ」「ジョイフル」「ココス」「デニーズ」で比較してみよう。

 計算にあたり、そろえた条件は以下のとおりだ。まず、あくまでちょい飲みなので、アルコールは2杯までとし、生ビール1杯+ハイボールかサワーで計算する。

 おつまみは、「フライドポテトかそれに類するもの」「鶏の唐揚げかそれに類するもの」「ホウレンソウのソテーか野菜のつまみ」をベースにした。炭水化物、タンパク質、ビタミン野菜という、栄養バランスを考えての組み合わせにしてみたのだ。

居酒屋とも十分勝負できる

 なお、今回比較したファミレスは、だいたい、このラインナップに近いものはそろえている。酒のつまみには申し分ないだろう。(なお、ビールの容量はチェーンにより異なるが、その店でのスタンダードなサイズとした。ポテトやチキンは、多種ある場合はいちばん単価が安いもので計算している)。

 この条件で計算したところ、「ガスト」1545円、「サイゼリヤ」1365円、「ジョイフル」1360円(よりつまみに特化したポテト・枝豆・コーンの「3種盛プレート」があったので、それに唐揚げとアルコール2品を加えた数字)、「ココス」1760円、「デニーズ」1645円となった。

 なお、つまみ類はどれも単価が300~400円程度。300円以下のつまみになるメニューは、ガストやサイゼリヤで10品以上、ジョイフルで6品ほどある。つまみの価格でいえば、居酒屋とも十分勝負できそうだ。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 それだけではない。ガストでは平日に限りハッピーアワーを実施、15~18時はビールやハイボール、麦焼酎に冷酒が249円で飲むことができる。

 通常タイムでさらに飲みたいならジョナサンがお勧め。生ビール1杯499円のところ、2杯目からは100円引きになる。ハイボール399円も同様に100円引き、グラスワイン(赤・白)249円は2杯目から50円引きだ。

 ちなみに、ガストと同じ「すかいらーくグループ」であるジョナサンにもハッピーアワーがあり、つまみになりそうな250円メニューは16種ほど。うっかりすると飲みすぎるパターンだ。

 デニーズにいたっては、2017年10月23日までの期間限定で角ハイボールと唐揚げのセット「ほろデニセット」500円を発売中。某CMの「ハイカラ」が楽しめるという触れ込みだ。「デニーズでも気軽にお得にアルコールを楽しんでいただきたい」と店側が自らアピールしているのだから、向こうも本気だ。

 たとえば生ビール+ポテト+ホウレンソウソテー+ほろデニセットなら1447円で済む。最近は「とりあえずビール!」がマストではないようなので、最初にハイカラのセット、次にセットの別パターンであるレモンサワー+たらマヨポテトの組み合わせを追加で頼むと1000円でいいことになる。

 筆者が「ファミレス飲み」を意識しだしたのは、なんといってもサイゼリヤのグラスワイン100円(税込み価格。税抜きでは93円)という価格に驚いたことからだった。

 250mlデカンタ200円、そしてワインのお供としてプロシュートやエスカルゴ、フレッシュチーズとトマトのサラダなど299~399円程度の小皿料理のラインナップがそろっているのも新鮮だった。深夜まで営業していることもあり、仕事終わりに同僚と1杯いくとなると、会社近くのサイゼリヤが最適だったのだ。

 分煙もしてあるし、居酒屋のように大声で騒ぐ出来上がった客ばかりということはないし、深夜でもくつろいで一杯を楽しみたい女性にとってはいい選択肢だと思う。

 なお、サイゼリヤはワインに力を入れており、安いだけでなく、本格的なワインリストを備えていることも付け加えておく(特定の店舗のみ。HPでチェックできる)。ワイン好きが集まる会に参加したことがあるが、その日は赤白ロゼそしてスパークリングを合わせて26品目の中からボトルをセレクトし、十分堪能した。

 リストのワインは激安というわけではないが、お供となるサイドディッシュはあくまでサイゼリヤのグランドメニューなので、かなりお値打ちで楽しめたと記憶している。

最も安く飲めるのは…

 しかし今回、最も安く飲めるのではないかと花丸をつけたいのは、バーミヤンだ。同じすかいらーくグループの中でも、なぜかビール単価が安く、1杯450円。さらに紹興酒はグラス1杯100円、ワインも100円だ。

 中華レストランのため他のファミレスとはメニュー構成が異なり、横並びの比較からは外したが、299円のおつまみ小皿メニューから2品頼むと500円になるという。

 チャーシューや味玉などの「おつまみ3種盛」に「ポテト&唐揚げ」を頼んで、合わせて500円なら破格値だ。「鳥貴族」にも負けてない。

 そして中華なら忘れてはいけない、ビールといえばギョーザは欠かせないつまみだが、バーミヤンのギョーザは6個セットで239円とこれも激安なのだ。ビール+紹興酒+小皿2品+ギョーザで1289円。これは相当ありがたい。それだけではない。

 バーミヤンにも平日限定ハッピーアワー(14~18時。未実施店あり)があり、ビール1杯が200円になるうえ、店舗限定の100分飲み放題もある。999円で生ビール、ハイボール、ウーロンハイ、レモンサワー、紹興酒、梅酒、ワインほかが飲み放題というのは、居酒屋もびっくりな値付けではないだろうか。

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 もはやちょい飲みのレベルを超えている。うちの近所のバーミヤンは飲み放題非実施店ということで、ほとほと残念だ。

 以上、各チェーンを検証してきたが、ロードサイドのファミレスで1杯というわけにはむろんいかないが、職場や家の近所で軽く、というときには価格面でもサービス面でも「ファミレス飲み」は十分な選択肢になるだろう。

 冒頭の「外食市場調査」で見ると、ファミレスで使う平均単価は1399円とのことだから、店側としても食事だけの客よりも、アルコールとつまみを数品頼んでくれる客のほうが単価は上がる。

 ついでに食事もしてもらえれば、さらにありがたいというところか。家族で休日に食事に行くところという認識から、ちょい飲みの場へ。飲み代節約をかなえてくれる青い鳥は、ごく近所にいたということかもしれない。

(価格は税抜き。サイゼリヤは各社比較部分以外は税込み表記)


松崎 のり子(まつざき のりこ)◎消費経済ジャーナリスト 20年以上にわたり、『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』『ESSE』『Caz』などのマネー記事を取材・編集し、お金にまつわる多くの知識を得る。自分自身も、家電は買ったことがない(すべて誕生日にプレゼントしてもらう!)、食卓は常に白いものメイン(もやし、ちくわ、えのき、豆腐)などと徹底したこだわりを持ち、割り勘の支払い時は、友人の間で「おサイフを開くスピードが遅い人」として有名。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成した。また、「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアを研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金がたまらない』(講談社)。