「発達障害のある家庭っていったいどうやって過ごしているの?」という疑問にわかりやすく答えてくれるのが実話コミックエッセイ。不安や戸惑いを抱えながらも、問題を乗り越えながら、前向きに楽しく日常を過ごす様子が描かれている。

  ◇   ◇   ◇

 発達障害が世間で話題になるにつれ「うちの子どもや夫も、もしや!?」と疑った人は多いはず。

 でも、その違和感だけで病院に飛び込むのは早い。なぜなら、発達障害の症状の出方は個人差が大きく、十人十色だからだ。

 こどもメンタルクリニック新大塚の原成輝院長によれば、そもそも発達障害の専門病院はまだ少なく、急増する患者に追いついていない状況だという。

「認知度が上がったのはいいことですが、その響きに焦って“うちの子は大丈夫か”と病院に駆け込む方が多い。初診に1年待ちなどという状況もザラです。まずは支援センターや教育センター、学校であればスクールカウンセラーに相談し、必要そうであれば病院へ。発達障害にまつわる書籍も多く出ていますので、そちらを参考に理解を深めることもできます

 そこで手始めに、発達障害のある家族をテーマにした作品を読むことをおすすめしたい。日常生活の中での事例がわかりやすく描かれているものが多く、ほかの家族に与える困惑や問題が描かれた作品もある。

 やみくもに不安がるのではなく、情報収集して、正しい知識を身につけることが大事。当事者にしかわからないエピソードの数々を知ることは、周囲の発達障害のある人たちへの理解にもつながるはずだ。

WEB連載で話題沸騰!誰も気づけない障害を描く

『うちの子は字が書けない~発達性読み書き障害の息子がいます』(千葉リョウコ著 宇野彰監修 1200円 ポプラ社刊)

 小学2年生になっても字が書けるようにならなかった息子・フユくん。ノート1ページの漢字練習に1時間、黒板の字は写しきる前に消されてしまう。そんなフユくんは発達性読み書き障害と診断された。この障害は、知的発達には問題がなく、教室での行動にも目立ったところが出にくいため、学校でも家庭でも気づかれにくい。本書は日本でほとんど知られていない発達性読み書き障害について当事者が描いた初めてのコミックエッセイ。

〈担当編集者からのコメント〉
「程度の差はあっても40人学級に3人の確率でいるのに、ほとんど知られていない発達性読み書き障害。当事者である親子の実体験を、しっかりとした監修のもと描いた物語です」

『うちの子は字が書けない~発達性読み書き障害の息子がいます』(千葉リョウコ著 宇野彰監修 1200円 ポプラ社刊)※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

アスペルガー親子の明るい子育て記録

●『マンガ版 親子アスペルガー 明るく、楽しく、前向きに。』(兼田絢未著 松鳥むうマンガ 合同出版刊 1300円)

 仕事も育児もまったくうまくいかないダメ人間。自分を責めてばかりで心が安まるときはなかった。そんなアスペルガー症候群(現在の診断名はASD)の母親による、アスペルガー症候群の2人の息子との、怒って泣いて笑って感動の子育て記録。本書では、ASDの人の感覚特性を、日常のエピソードを通してわかりやすく紹介。また本音と建前の間で苦しむASDの人たちにどのように伝えたらよいかのヒントがたくさんつまった作品だ。

〈担当編集者からのコメント〉
「納得できないことに対し理論でていねいに説明していく子育て法は筋が通っている。お母さんが精神的に不調なときに息子たちが慰めてくれている様子は心が温まります」

『マンガ版 親子アスペルガー 明るく、楽しく、前向きに。』(兼田絢未著 松鳥むうマンガ 合同出版刊 1300円)※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

息子が難しい年ごろに! どうする子育て!?

●『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』(かなしろにゃんこ。著 田中康雄監修 1300円 講談社刊)

 漫画家ママのドタバタ「体験コミックエッセイ」シリーズの第2弾。不注意、落ち着きのなさ、衝動を止められないなどの特性がある息子・リュウ太くんが思春期に突入したから、さあ大変! 問題だらけでも「かわいいわが子」に、親はどう向き合ってきたのか? 周囲の接し方の事例としても参考になるおもしろエピソードも満載で、一気読み必至。思春期前までを描いた第1弾『漫画家ママの うちの子はADHD』も発売中。

〈担当編集者からのコメント〉
「発売前にAmazonの在庫は予約で完売。発売直後から“身につまされた”“作者のように子どもを見守りたい”“役に立つしおもしろい”など続々届くメッセージ。反響の大きさに驚いています」

『うちの子はADHD反抗期で超たいへん!』(かなしろにゃんこ。著 田中康雄監修 1300円 講談社刊)※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

発達障害男性との結婚生活の現実と本音

●『旦那(アキラ)さんはアスペルガー アスペルガーと知らないで結婚したらとんでもないことになりました』(野波ツナ著 宮尾益知監修 1000円 コスミック出版刊)

 人付き合いが苦手なアスペルガー症候群の男性は恋愛スキルも低いと思われがちだけど、実は恋愛時代こそ最強!? アキラさん自身は家族や自分のアスペルガー症候群についてどう思ってるの!? いちばん身近にいる妻だからこそ描けた、ASD男性との結婚生活の現実と本音満載のシリーズ第8弾。悩んでいる奥さまはもちろん、「彼氏と会話が続かない?」「やさしい彼だけどちょっと変わってる?」「もしかして?」と悩んでいるカップルにもぜひ!

〈担当編集者からのコメント〉
「発達障害の夫を支える妻の困惑や苦しみは知られていないのが実情。そんな悩める妻の本音と、大人の発達障害と付き合っていく方法のヒントがいっぱいです」

『旦那(アキラ)さんはアスペルガーアスペルガーと知らないで結婚したらとんでもないことになりました』(野波ツナ著 宮尾益知監修 1000円 コスミック出版刊)※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

妻、長女、長男、次女、次男が発達障害!

●『うちの火星人 5人全員発達障がいの家族を守るための“取扱説明書”』(平岡禎之著 1500円 光文社刊)

 自分たちの感覚を“特別な個性”として、一家で「火星人宣言」した平岡家。家族が巻き起こす驚きのエピソードと、発達障害に対する取り組みを、明るくポジティブに描いたコミックエッセイ。発達障害の判明後は、「失敗しても叱らない」「子どもの心に寄り添い、気づきをうながし、褒めて伸ばす」方針に。すると子どもたちの個性が色鮮やかに輝きだす。4コマ漫画は、失敗を明るく乗り越えるため父が作ったいわば“取扱説明書”だ。

『うちの火星人5人全員発達障がいの家族を守るための“取扱説明書”』(平岡禎之著 1500円 光文社刊)※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

原先生が解説

Q)子どもがLDかもしれない!?

LD(学習障害)の診断の目安に“知能指数(IQ)が約85以上というのもがあります。ところが、これに該当しないのにLDではないかと疑った親が、わが子を受診させるというケースが意外に多いんです」(原院長、以下同)

 成績の悪さから不安が募り、学校に相談しないで病院を訪れる保護者が増えているという。

「知的に障害がないのがLDの特徴。IQが平均域なのに、“聞く”“話す”“読む”“書く”“計算・推論する”などの能力に困難が生じている状態をさします。どの発達障害にも共通して言えることですが、人によって出方が違うので診断がつけづらい。まずは落ち着いて学校などへ相談することから始めてください」

Q)自分の夫がアスぺルガーだったらどうする?

 上で紹介した野波ツナさんは、夫のアスペルガー症候群が妻の心に影響を与える“カサンドラ症候群”をテーマにした作品も描いている。実際に男性に多いというアスペルガーだが、もし自分の夫がそうなら?

「その場合、僕がよく聞くのは、妻がどうしたいか。障害は生まれつきのもので、症状に対処することはできても根本的には“治らない”ということを理解することも必要です。離婚するケースが多いのは確かだけど、“具体的な指示を出す”“お小遣いで釣る”“褒めて伸ばす”などの方法を試したり、稼いでるのだからいいと割り切った妻もいます。いずれにせよ、妻が無理をしすぎて体調を崩す必要はありません