18年ぶりに情熱の女・カルメンに挑む、花總まり

 2018年3月上演のミュージカル『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』で、18年ぶりにカルメン役を演じる花總まりさん。宝塚歌劇団・宙組娘役トップスター時代の’99年に『激情-ホセとカルメン-』で演じたカルメンは花總さんの当たり役のひとつで、ファン待望の今作。久しぶりにカルメンに挑む心境は?

カルメンの感情をより深く表現したい

出演を発表したときに、もう1度見たい役だったとみなさんがすごく言ってくださって。ある意味プレッシャーでもあるんですけど、今の私ならではのカルメン像を作っていきたいですね。

 宝塚時代に1度やらせていただいたときは、野性的だったり自由に生きる女性っていう一般的なカルメンのイメージで取り組んでいたんですけど、今回はあれからだいぶ時もたちましたし、ロマ族として生まれ育った彼女が持つ強さだったり哀しさだったり、いろんな感情をより深く表現できたらと思います。そこからホセとの出会いによって、苦しいほどに切ない愛が生まれてくると思うので」

 花總さんが愛を演じるとき大切にしていることは?

「そこに嘘があってはならないと思います。本当にそう思っていないと絶対に伝わらないと思うので、それにつきますね」

 カルメンのような激動の人生を歩んだ女性と花總さんは、真逆のようにも思えるのだが。

「わかりませんよ(笑)。でも役を作っていくときは想像を膨らませていくんですね、きっとこうなんじゃないかって。原作があるものだったり、実在の方で資料がたくさん残っていたり、いろんな人物がいますけど、私は最終的には台本だと思っていて。

 台本にその人物がしゃべっている言葉があるじゃないですか。なんでこの人はこんなふうに言ってるのか、その言葉から想像を膨らませていくことが多いですね。言葉の裏にあるものをセリフから読み取るのが好きです」

 演出・振付は、花總さんとは宝塚時代から縁の深い謝珠栄さんが手がける。

謝先生は本当にパワフルな方なので、きっとお稽古もすさまじいものになるんじゃないかなって(笑)。“変なものは変”って感じでバンバン容赦なく思いがぶつかってくると思いますし、時間を忘れてお稽古に没頭することができる演出家の先生なので、私のまた新しい扉を開けてくださるんじゃないかなってすごく楽しみです。

 昔から私のいいところも悪いところも苦手なところも全部ご存じだから、最初から全部さらけ出していけるので、すごくいいものが生まれると思っています」

開演1時間前には準備は整ってます

「演じるときは、われを忘れてますね」

 相手役ドン・ホセを演じるのは、歌手でもあり俳優としても多くのドラマ、映画、舞台に出演する若手実力派、松下優也さん。

「松下さんとは、キー合わせとスチール撮影のときに一瞬お会いして、“よろしくお願いします”とご挨拶しただけなんですけど、私の中ではクールな印象があって。でもテレビでインタビューを拝見したときに、関西出身の方だということがわかって、そこがまずギャップでした。

 今はまだ彼がどういうホセになるのか想像がつかないですけど、初共演なのでもちろん楽しみですし、私がいて松下さんがいて、ほかのキャストの方がいて、謝先生によってどんな化学反応が起きるのかすごく楽しみですね」

 常にベストな状態で舞台に立つために続けているルーティンを聞くと、

「舞台に立つ前からよく集中していないとすぐに切り替えができないタイプなので、開演の2~3時間前には劇場に入って、お化粧して食事して着替えて、幕が開く1時間前にはウォーミングアップは終わって準備は整ってます。

 それから楽屋の中で心を静めてひとりで役のことを考える瞑想のような時間を毎回とってますね。あとは、出番前にマイクを舞台のところまで取りにいくんですけど、そのときに1回舞台を見て“今日もよろしくお願いします”って舞台の神様にお願いしてます。毎回それをすることで、たぶん落ち着くんですよね」

 多忙ななか変わらぬ美しさと美肌を保つ秘訣は?

「普段ほとんどお化粧をしないので、顔は石けんで洗わず、水かぬるま湯で洗うぐらいですね。栄養を与えすぎないで自然な肌の持つ力を落とさないようにしたいなと思ってます」

 カルメンやホセのようにわれを忘れて何かにハマった経験は?

「さすがにこの2人のようにここまで恋にハマるような経験はないですけど(笑)。やっぱり演じるときはわれを忘れてますね。公演中はずっと寝ても覚めても頭の中に、セリフだったり歌詞だったり役のことだったりがあるので。夢の中にも出てきたりします(笑)」

 最後に改めて意気込みを。

「最近、カルメンのような女性の役から離れていたので、私自身もすごく新鮮です。私じゃない人が演じているような、みなさまが私ならこう演じるのかなっていう想像を裏切りたいなと思っています。謝先生をはじめとして素晴らしいスタッフとキャストが結集していて、絶対に見ごたえのある作品になると思うので、一致団結して頑張りたいと思っております」

取材・文/井ノ口裕子

ミュージカル『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』

『Romale(ロマーレ)~ロマを生き抜いた女 カルメン~』

 1837年、スペインのセビリア。軍の規律に忠実な衛兵ホセ(松下優也)は、妖しい魅力をもつロマ族の女工カルメン(花總まり)と出会う。そして一瞬で燃え上がるような宿命の恋に落ちるふたりだが、やがてカルメンの魅力に翻弄されるほかの男たちに嫉妬したホセは愛の深さゆえに罪を犯してしまい……。“魔性の女”カルメンの意外な真実の姿を描く注目作。

◎東京公演:2018年3月23日~4月8日@東京芸術劇場プレイハウス/大阪公演:2018年4月11日~4月21日@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

〈プロフィール〉
はなふさ・まり 1973年2月28日生まれ、東京都出身。‘91年宝塚歌劇団に入団。‘94年に雪組娘役トップスターに就任。『エリザベート』のエリザベート、『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットなど数多くの大役を演じた。‘98年宙組へ組替え、トップスター歴は歴代最長の通算12年3か月。‘06年退団後もミュージカルを中心に活動。現在、ミュージカル『レディ・べス』主演。11月25日スタートのNHK大河ファンタジー『精霊の守り人』に出演。