ジャニーズやK-POPをはじめとした、日韓のアイドルの応援を日々の生きがいとし、気づいたらとある現場でトップヲタクになっていた<男子>大学生・あくにゃんのコラム。
イラスト/びーえいち

 皆さんは推しに「ダメ出し」をしたことがありますか。

 最近ではアイドルとの距離が近くなった分、手紙や握手会を通して、ダメ出しをするファンが増えています。しかし、それを嫌がるアイドルや役者がおり、某演出家が、手紙でのダメ出しをやめるように呼び掛けるほどになっています。

 ジャニーズの「ジャニーズWEST」の皆様の発言や、ダメ出しが一般化している「地下アイドル」、実際に指導する演出家を持つ「若手俳優」という3つの界隈について考えていきたいと思います。

 ダメ出しをしたことがある人、必見です。

 

〈第五声〉
偉くなるファン
~ダメ出しは正義か、悪か~

 まずは舞台業界から見ていきます。そもそもこの「ダメ出し」という言葉に、海外の演出家は驚きます。海外では「ノート」と言うそうです。ダメだったところを指摘するという概念ではなく、気づいたことを書いたメモを聞いてほしいという感覚です。

 ファン側は、もちろん海外でいう「ノート」を手紙に書く人もいるでしょうが、ダメなところを箇条書きにしたことがある方もいるのではないでしょうか。

 そのダメ出しを嫌がる演者側の言い分は「いや、あなたたちは稽古場を見てないですよね?」です。何か月も稽古をして、みんなで作り上げてきたものを、たかが何回か観た人の意見に流されるなんておかしいというふうに考えます。

 演技は相手の言い方や出方で、次の人の話し方や振る舞いが変わってくるものなので、個人単位で勝手に演技プランを変えられてしまうと全体が狂い始めるわけです。

 実際に、手紙によって演技を変える若い役者について、某演出家がSNSで「ダメ出しの手紙を送るのは本当にやめてあげてもらいたい」「感想はいいけど、ダメ出しは演出家が責任持ってやること」という趣旨の発言をしました。

 一方、他の演出家で「お客様から見えたものも、それまた正解の1つ」という立場をとる人もいます。どんなに必死に演じようとも、そう見えなかったら意味がないわけで、お客様に見せる演技だからこそお客様の声も重要と考える人もいるからです。

 演じる役者の経験年数より、ファンの観劇年数のほうが長く、観る側もプロとなっているわけで、すべてを聞き流せるというわけではないようです。

 とはいえ、ファン同士の考察は、時に「学級会」と揶揄されることもあるように、的を射ていない意見や、推しのことしか考えていない意見が出るため、一概に聞けとも、聞くなとも言えないのが現状です。演技には、不正解はあっても正解はないものなので、難しいところです。

 では、ダメ出しをされる本人側はどうなのか。知人のアイドルに聞いてみると、ほぼ100%の確率でダメ出しをしてくるファンを良く思っていない感じでした。

 演技のことならまだしも「なんで、あげたプレゼントを使ってくれないの?」が1番むかつく、意地でも使わないと答えた人もいました。そのようなダメ出しをしてくるファンは、<厄介なファン>というカテゴリーに入れられているように感じました。

ファンからの反応をパターン別に考える

 しかし、私の知人だけあって少し根性が曲がっているのかもしれないので、ジャニーズWESTメンバーの何名かの反応を比較すると分かりやすいです。

 中間淳太氏はファンから「姿勢が悪い」と指摘され、猫背を治すサポーターを買ったことがあるそうです。

 神山智洋氏は、ダメ出しに対し素直に腹が立つと発言したうえで、逆に奮起できるタイプなので受け止めていたようです。

 藤井流星氏は、MCでもっと話してと指摘されても「そんなにすぐには変われない」と答えています。

 小瀧望氏は、ダンスがふわっとしていることを指摘されたそうですが、あまり変えなかったようです。

 実際に、私が見てきた中で、最も多いのがこの小瀧タイプだと思います。あることないこと言われてしまう世界だからこそ「なんと言われようと、俺は俺」という気持ちは重要です。

 しかし、中には本当に気にしすぎてしまうメンバーもいますし、顔のことを言われ整形をしてしまうアイドルもいますし、ダメ出しには慎重さが必要です。

この日はお台場のZeppに。前のオタがトークのダメ出しをしていたので、ぼくは全部肯定しました。推しを肯定するための語彙力と言語野。甘やかしと紙一重。

 地下アイドルの現場では平気で何分間も話せるため、ダメ出しや過度な要求が当たり前となっています。私が応援する韓国人のグループも、いわゆる地下アイドルのため、実際のエピソードをご紹介します。

 メンバー間でチョーカーが流行した時、それをよく思わないトップヲタ(そのメンバーのファンで1番偉い人)が「外して」と文句を言った頼んだところ、メンバーが「じゃあ君の前では外すけど、大阪ではつける」とキレ気味に返していたのを見て、なぜか「かっけぇ……」と思ったことがあります。

 さらには、

「お気に入りの子に1部でも2部でもサインボールを投げた」と、ファンが何分間も説教をしたことで、メンバーが泣き出したこともありました。メンバーがトイレットペーパーで涙を拭いて、顔を隠しながら次々とファンを相手する姿は、なかなか胸に来るものがありました。

 慰めにいったファンの言葉でも泣いてしまっていて、本当にかわいそうでした。

 私も、慰めに行って泣かしたい! と謎に意気込んで、わざわざチェキ券を買い足して握手しに行ったら「わぁ~! あくにゃ~~~ん」と笑顔で言われて失敗しました、ありがとうございます。

 きっと同性である私には心を許せたといいますか、友達みたいななんかそんなアレで、アレだったのだと脳内補完しています。

 一部の地下アイドルは、撮ったチェキの枚数に応じて、その子に入るバックの額が変動するため、ファンの多さと生活水準が密接に関わりあっています。

 アイドルが増えすぎた結果、自身の生活にも関わってくる大切なファンがほかに流れないように、アイドルがよりファンを大切にするようになり、また、ファンに対してアイドル側から媚びるようになっています。

 この、アイドルとファンのパワーバランスの逆転はオーディション番組によって生まれる面もあります。

 お客様でもあるファンを満たすための存在と化してきているアイドルが「ファンからのダメ出し=消費者からのクレーム」に応えるのは当たり前の時代になってきているのかもしれません。

 最後に、アイドルの子はファンからどんなことを言ってもらえたらうれしいのかを聞いたところ「自分でも意識していなかったマニアックなところを言われた時」「どうせ伝わらないと思っていた地味な努力や頑張りが、ちゃんと伝わっていたと分かった時」が、うれしかったそうです。

 書くことがない人は、ぜひ参考にしてみてください。結構、難しい要求ですが……。

 読ませるということは、少なからず相手の時間を奪うことなので、しっかりと書きたいと私も常日頃、思っています。

<プロフィール>

 

あくにゃん◎1995年生まれ。ジャニーズやK-POPをはじめとした、日韓のアイドルの応援が日々の生きがい。

日々のオタ活で感じたことを、独自の観点&独特な表現で言葉にするツイートも必見!

Twitter/ @akunyan621