「貯まる人の家庭」には、いくつかの傾向があります

 今年の目標は?と問われたとき、回答のベスト3に必ず入ると思われるのが「今年こそはおカネを貯める」だろう。

 長らく雑誌編集者であった筆者が担当した雑誌も、新年号(発売は12月だが)のメイン特集のテーマは、押しなべて「今年こそ貯める!」だった。今や女性誌でも年に100万円貯めるとか、総額1000万円は貯めていないと、読者に「すごい!」と言ってもらえない。

 また、実家の援助もなく、社宅暮らしでもなく、バリキャリではなく専業主婦かパート勤務の妻で、子どもがいて、夫の年収は手取り300万~500万円台までで……の人を探さないと、これまた「すごい!」と言ってもらえないので、どんどん取材対象者のハードルは上がっていく。

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 年間100万円でなくても80万円貯めているならよしとするか、あと2年で1000万円に達するなら合格だろうか――つねに雑誌作りの現場には悩ましい空気が流れたものだ。

 長年そうやって貯めた人たちを見てきたところ、やはり「貯まる人の家庭」にはいくつかの傾向があった。つっこんで節約術を聞かなくても、そうした家庭は「匂ってくる」のだ。

 今年こそ貯めたいと目標を立てるなら、わが家が「貯まる家」の条件にどれだけ近いか、以下を参考にしてみるのもいいかもしれない。

 なお今回は、バリバリ夫婦で働いて貯蓄を増やしたり、投資や運用に熱心といった家庭ではなく、子どもがまだ小さいなど、夫の稼ぎが主な収入源である家庭の例を取り上げる。

「貯まる家」の条件とは?

(1)個室にこもらず家族がリビングに集合する

 なんと言っても、貯まる家は家族仲(夫婦仲)がいいというのが実感だ。バラバラの部屋でバラバラに過ごすことはしない。感覚ではなく、家族がリビングに集合するのはコスト効率面でもメリットが大きい。

 東京都発行の「家庭省エネハンドブック」によると、家庭で使用される電気のおよそ4割を消費しているのは、照明、テレビ、エアコンなど。家族がそれぞれの部屋で別々に照明やエアコンを使っていると、人数分だけ電気代が上乗せでかかることになる。

 特に、冷房より暖房のほうがエネルギーを消費するため、冬こそ家族は一部屋に集合するべきなのだ。家族が集まり会話が増えれば、互いへの不満が和らぎ、ムダなストレス消費も減る……とまでは言いすぎだろうか。

(2)早寝早起き

 (1)でも書いたが、夜更かしすればするほど照明・テレビ・エアコンの電気代を消費する。特に、照明器具は全体の使用電気量の2割近くを占めている。光熱費を節約したい家は、とっとと寝よう。

 また、貯めている主婦には早起きが多いようだ。家族が起きる前のほうが、あれこれ声をかけられずに済んで家事効率がいいのだろう。時間をダラダラ使わない意識が、おカネへの意識にも重なるようだ。

収納スペースは見通しよく

(3)冷蔵庫はスカスカ、冷凍庫がぎっしり

 貯まる家を見分けるには、物を入れている収納スペースを見るに限る。その代表的なものが冷蔵庫だ。冷蔵庫(特に冷蔵室やチルド室)がぎゅうぎゅうの魔窟化している家は、まず貯まらない。

 買ってきたものをそのまま突っ込んでいて、一番奥に何があるかわからない状態になっているなら、かなりのレッドカード。使い忘れの食材や期限切れの調味料が奥から発見され、結局捨てるはめになるなら、それは買ったおカネも一緒に捨てるということだ。

 逆に、食費節約の達人の冷蔵庫は、必要以上の買いだめはせず、食材を買ったらすぐに料理できるよう下ごしらえを済ませて保存しているので、冷蔵室はスカスカで、冷凍庫のほうがぎっしり詰まっていることが多かった。

 同じように、クローゼットがぎっしりの家は、一見して手持ち服の全貌がわからず、つい似たような服を買ってしまうこともある。収納スペースは見通しよく、がポイントだ。

(4)床にモノを置いていない

 貯め上手という人の家は、一見して家の中がすっきり片付いているし、床にモノが置かれていることが少ない。モノがなければ掃除もしやすく、掃除機をかける時間も短くて済むから電気代も余計にかからない。

 まめに掃除していて汚れが溜まらない家は、強力な洗剤を買ってくる必要もない。また、片付いている家をキープしようとすれば、細々とした余計なモノは買わなくなる。自然に買い物に慎重になり、おカネも残るというわけだ。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

(5)大量のストックを持たない

 お買い得だから、セールだからと、食品や日用品のストックが家の収納庫を占領している家は、逆に節約ベタの証拠。ストックがあればあるほど、つい節約しようという意識が緩み、かえって消費量が増えてしまうからだ。

 昨今はビジネスでも、余剰在庫をいかに減らすかという時代ではないか。適量買いの適量消費が家計にも優しい方法だし、少々足りないくらいのほうが節約意識も身に付く。

 全体的にモノが多い家には、ストック品も多い。つまり、それだけ財布からたくさんおカネを払っているという証明だと思おう。

(6)ながらTVをしない

 年間100万円貯めているお宅に取材に行って、TVがついているケースはほぼなかった。番組を見てもいないのに、ついBGMがわりにつけっぱなしという家庭は改めたほうがいいかもしれない。電気代のムダでもあるし、TVショッピングの誘惑にもさらされてしまう。

 それに、親がダラダラTVを見ていると、ながらゲームをしている子どもをしかっても説得力がないだろう。貯めている家庭は時間の使い方もうまいものだ。

 なお、冷暖房はエコモードにしているお宅が多かった。冬場に取材に行くときは厚着マストだったことを思い出す。

(7)小銭貯金好き

 いかにも、ちまちました節約術じゃないかと笑ってはいけない。年間100万円貯めている家であっても、小銭貯蓄はしているのだ。着実に貯めている家庭は、まず給与からの先取り貯蓄をしているが、そのほかにも、日々のやりくり費が余ったらそれも貯める「残し貯め」や「500円玉貯金」、そして、財布の小銭はじめカバンの底やポケットの中から出てきた小銭を貯める「小銭貯金」など、とにかく細々貯めているものだ。

 500円玉貯金や小銭貯金で貯まったおカネは、家族の外食やレジャーで使う。だから、主婦だけでなく家族が協力して貯めてくれる。家族の楽しみのために皆で頑張りましょうとの目標を共有できる家は、大きなおカネも貯まりやすいといえる。

夫婦仲がいいことは重要ポイント

(8)夫も家事にかかわる

 先にも述べたが、夫婦仲がいいことは貯まる家庭の重要ポイントだ。もし、妻だけが家事を負担しているという不満が積もり積もると、ストレス解消のための出費が増えがちだ。友達との気晴らしランチ代や自分へのご褒美としてアクセサリーや服を買い込んだり。

 元来、おカネを使うことは楽しいはずが、憂さ晴らしに使うとすれば二重にもったいない。さらに、妻の不満が夫に向けられると、家にまっすぐ帰りにくくて寄り道が増え、夫側もムダ出費が増えてしまう。

 共働きであってもなくても、家事は妻任せが当然という態度は節約上も得策ではない。同様に、おカネのこともどちらかに任せきりというのも、いざふたを開けてみたら思っていたほど貯まっていなかったというケースも多い。

 家事も家計も、片方だけの責任ではなく夫婦でコミットし、情報公開を密にしておくことを心からおすすめしたい。これからの長寿社会においては、家事スキルは必須となるので、今のうちに奥様に習っておくにこしたことはない。

 おカネは家族の幸福な未来を叶えるために貯めるものだ。貯めることが、誰かの我慢やストレスのもとでは続かない。シンプルなむすびで恐縮だが、お互いへの感謝や協力あってこそ、貯まる家になれるのだと思う。


松崎 のり子(まつざき のりこ)◎消費経済ジャーナリスト 20年以上にわたり、『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』『ESSE』『Caz』などのマネー記事を取材・編集し、お金にまつわる多くの知識を得る。自分自身も、家電は買ったことがない(すべて誕生日にプレゼントしてもらう!)、食卓は常に白いものメイン(もやし、ちくわ、えのき、豆腐)などと徹底したこだわりを持ち、割り勘の支払い時は、友人の間で「おサイフを開くスピードが遅い人」として有名。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成した。また、「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアを研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)。【消費経済リサーチルーム】