食の不思議トリビア

 珈琲とミルクでカフェオレ? カフェラテ? パフェとサンデー、ウインナーとソーセージはどう違う? 知ればおいしさも思わず倍増しそうな、“食の不思議”にまつわる雑学をお届けします!

懐石と会席

 同じ日本料理で、読み方も一緒とはいえ、そのルーツや目的はまったく異なるよう。

「懐石料理は、茶事で客をもてなすための料理。“懐石”とは禅僧が空腹や寒さをしのぐために懐に温かい石を入れた“温石”を語源とし、質素な食事を旨としています」

 そう話すのは、和食文化国民会議の田島専務理事・事務局長。あくまでお茶の味を損なわないことが重要で、濃い味や脂っこいもの、強い香辛料をきかせた料理は避けられる。

 一方の会席料理は、

お酒を楽しむ宴会料理。料理をいただく部屋は趣向を凝らした装飾がほどこされ、高級素材をふんだんに使った料理は、目でも楽しめるものという違いがあります」

 おいしい料理と心配りで「おもてなし」を受けられるなら、どちらでも大歓迎!?

割烹と料亭

 庶民にとっては高嶺の花で、格式が高く、味も価格も高級な日本料理を提供する場所──。そんなイメージが共通している割烹と料亭。

「料理に力点を置くのが割烹。料亭は料理に加えて、器や調度品、花、仲居さんのサービスや、芸舞妓さんの唄や踊りなどトータルで楽しむ演出がされています」(前出・田島さん)

 店を初めて訪れた客の場合、料理の好き嫌いなどに十分な配慮ができずに満足してもらえないおそれがあったり、芸舞妓さんを呼ぶときなどは後日、精算となったりするケースもある。そのため、支払いが確実な常連さんに限ったほうが安全などといった理由から“一見さん”をNGとしているところが料亭には多いようだ。

 単に敷居が高いだけのところでも、政治家が謀をめぐらす場所なわけでもなかった!?

ココアとホットチョコレート

どちらもカカオ

 冬の定番は、ホットチョコレートが濃厚で、ココアは後味がさっぱりしている印象だけど?

「ココアとホットチョコレートに厳密な違いはありません」

 そう話すのはヨーロッパ修業歴のあるパティシエ。どちらも原料はカカオ豆。ホットチョコレートが温めた牛乳や生クリームを加えて作るのに対し、ココアの場合、日本ではバターを減らした粉末ココアを溶かして作ることが多いそう。

「そのため、あっさりとした風味に感じるのでは?」

 お国が違えば食べ方も変わる。スペインでは、ホットチョコレートのお供に日本のテーマパークでも売られている揚げ菓子・チュロスが定番だとか。

「甘さ控えめで濃厚なビターチョコレートに、やはり甘すぎない、揚げたてのチュロスを浸して食べるとうまい! 朝食がわりにする人も多いですよ」

ソーダとサイダー

ややこしけどみんな炭酸

サイダー(CIDER)はシードルとも言われ、もともとはりんごのお酒で、甘い味つけがされたもの。ソーダは味のない炭酸水を指します。三ツ矢サイダーのような透明な炭酸飲料はアメリカなどではソーダと呼ばれ、サイダーと呼ぶのは日本だけなんです」

 そう教えてくれたのは、アサヒグループホールディングスの広報。

 サイダーはそのまま飲むけれど、ソーダはカクテルなど、ほかのものと割って飲むのが特徴。

 同じく甘い炭酸飲料のラムネは、英語のレモネードが語源。それがなまってラムネの呼び名が定着した。サイダーとの違いは、ビー玉が入った特徴的なガラス瓶にある。

 ちなみに、初めて炭酸飲料を飲んだのは、紀元前のエジプトを支配したクレオパトラ。ワインに真珠を入れて炭酸ガスを発生させたセレブ仕様だったそう。

キュウリとズッキーニ

 よく似た見た目だけど、値段は倍以上も違うことが……。ほかにどんな違いがあるの?

「シャキシャキ感と青い香りが特徴のキュウリと、ほんのり弾力のある食感のズッキーニ。確かに見た目は似ていますが、キュウリはキュウリ属、ズッキーニはペポカボチャの一種でカボチャの仲間なんです

 そう指摘するのは、野菜ソムリエプロの資格を有する、日本初の野菜ジャーナリスト・篠原久仁子さん。

 100グラムあたりのカリウム含有量は、キュウリには200ミリグラム、ズッキーニには320ミリグラムと栄養価はさほど変わらない。いずれも水分補給やカリウムの利尿作用が期待できる。また、どちらも生食ができるなど共通点も多い。

 年じゅう出回っているように見えるけれど、どちらも旬は夏。栄養満点の実をつける季節が待ち遠しい!

パフェとサンデー

パフェはフランス、サンデーはアメリア

パフェはフランス発祥。比較的背の高いグラスを使い、フルーツを主としてソースやリキュール、アイスクリームを積み重ねて作るのが特徴です。

 一方、サンデーはアメリカ発祥で、アイスクリームサンデーの略。アイスクリームの上に、アーモンドやチェリーなどをのせたものと私どもでは考えております」

 そう話すのは、外食チェーン店を展開するロイヤルホスト株式会社ブランドコミュニケーショングループの大神田さん。

 ロイヤルホストでは、比較的カジュアルなデザートをサンデー、上品なイメージのデザートをパフェと定義しているそう。

 ほかにも「パフェは昼に食べる、サンデーは夕方以降に食べる」「パフェはトッピングがコーンフレークで、サンデーはアイスクリーム」など、その違いには諸説ある。

ツナとシーチキン

シーチキンは商品名

 ツナ缶はすべて『シーチキン』と思っていた人は目からウロコ。

 ツナはマグロ属に分類される魚の総称で、シーチキンは、はごろもフーズの商品名で登録商標となっている。

「当社以外のツナ缶(ツナ製品)は、シーチキンではありません」(はごろもフーズ広報・田中さん)

 蒸したビンナガマグロの食感や味が、鶏肉のようだと、シーチキンと名づけられた。

 なお、ホワイトミートは蒸すと肉が白く淡白になるビンナガマグロが原料。ライトミートは、蒸すと淡いピンクや黄色のような色合いになるキハダマグロ、メバチマグロ、カツオが原料だとか。

 どれもタンパク質やDHA、EPAなどの栄養素が豊富。浸かっている油も、コレステロールを減らし動脈硬化を防ぐといわれるリノール酸が含まれているので、捨てずに使いきって。

ウインナーとソーセージとフランクフルト

奥深い……

ソーセージは、ひき肉に食塩、香辛料、発色剤などを混ぜてケーシング(皮)に詰めて加熱したものの総称なんです。

 羊腸、または製品の太さが20ミリ未満の人工ケーシングに詰めると、ウインナーソーセージです。

 豚腸、または製品の太さが20ミリ以上、36ミリ未満の人工ケーシングに詰めると、フランクフルトソーセージです」

 そう詳しく教えてくれたのは、日本ハム広報IR部の田川さん。太さで種類が変わるとは!

 さらに牛腸、または製品の太さが36ミリ以上の人工ケーシングに詰めると、ボロニアソーセージとなるそう。

 また、日本では天然腸を使用する場合、羊・豚・牛などの種類、人工ケーシングの場合は太さで名称が変わるというから、なんとも奥が深い……。おいしければいいんですけどね。

パンケーキとホットケーキ

どっちも美味しい

 一時のブームは落ち着いたものの、定番化した人気を誇るパンケーキ。かたやいつの時代もママのおやつの定番といえば、ホットケーキ。いったい、何がどう違うの?

「諸説ありますが、当社では“甘さの違い”とベーキングパウダーの量の差による“膨らみの違い”で区別しています。

 ホットケーキはふんわりと甘みのある生地を楽しんでいただくもので、生地は厚め。パンケーキは薄くて焼きあがった生地自体の味は控えめ。トッピングを引き立たせて楽しむもので、お食事系に合うものと定義づけています」

 と森永製菓広報グループの藤田さん。

 サラダや目玉焼きなどと組み合うわせた栄養バランスを考えるなら、パンケーキが◎。でも、主婦的にはミックス粉と牛乳があれば炊飯器でも作れちゃう、ホットケーキに軍配を上げたいような……。

カフェオレとカフェラテ

 スターバックスをはじめエスプレッソマシーンを使ったコーヒーチェーンは、もはや定番に。朝の1杯にカフェラテを注文する人は格段に増えた。

「濃いフレンチローストの豆を使ったドリップコーヒーに、熱いミルクを注ぐのがカフェオレ。エスプレッソしたコーヒーに泡立てたスチームミルクを入れるのがカフェラテです」

 そう話すのは、全日本コーヒー協会の西野さん。

 カフェオレはフランス、カフェラテはイタリア方式。以前はカフェオレが主流で、昔から営業する喫茶店などは、今でもカフェオレを提供することが多い。

 また最近は、エスプレッソマシーンを導入するコーヒーチェーンが多いことから、カフェラテが主流になりつつある。ちなみにエスプレッソにスチームミルクなどで絵柄を描くラテアートが楽しめるのは、カフェラテだけ。

クッキーとビスケット

イギリスにクッキーはない

「日本ではクッキーとビスケットともに境なく呼ばれていますが、クッキーは“手づくり風の外観を有し、糖分と脂肪分の合計が40%以上のものをクッキーと呼んでもよい”という、ビスケット類の表示に関する公正競争規約があります。そのためビスケットと区別して使われることがあるんです」

 と藤田さん。実は、きちんとした定義があるのだ。

 世界を見渡してみると、フランスではビスキュイ、ドイツではビスキュイート、アメリカではすべてクッキーと呼ばれ、ビスケットとはやわらかい菓子パンを指す。

 そしてイギリスにはクッキーという言葉自体がない! チャールズ皇太子のブランド「ダッチーオリジナル」のクッキーも、パッケージにはビスケットの表示が。すべてビスケットで統一されているのだそう。

えんどう豆とグリーンピース

 子どものころに苦手だった野菜の1、2を争うグリーンピース。形といい食感といい、えんどう豆も同じじゃないの?

えんどう豆は総称です。なかでも未成熟の豆は、写真のように、さやえんどう、スナップえんどう、グリーンピース(実えんどう)と区分されます。

 実えんどうは関東ではグリーンピース、関西ではうすいえんどうが主に流通しています。グリーンピースはプチッとした歯ごたえと青っぽい風味が特徴。うすいえんどうはほっくりとした食感と甘みが魅力です」

 と前出・篠原さん。

 同じ実えんどうでも、まったくの別もの。グリーンピースが苦手な人でも、芋のような食感だから「うすいえんどうだったら食べられるかも!?」ぐらいの違いがあるとか。グリーンピースを甘く煮詰めた「うぐいす豆」なら、知らない間に食べているかも……。