木村文乃 撮影/高梨俊浩

「この前、15周年を迎えた30代向けのファッション雑誌に“目指せ、輝く30代”ってお祝いのコメントを書いたんです。そしたら周りに“ものすごい希望があるよね”って言われて(笑)。無意識でしたが、私、30代を全力で楽しもうとしてるなって」

 ずっと待ち望んでいたという30代になり、うれしそうな表情を見せる木村文乃(30)。相変わらずチャーミングな笑顔が印象的だが、内面をのぞくと彼女はいつだって自分に厳しい。

「私は同世代の女優さんから何歩も遅れていて。彼女たちは10代でトップを走っていたから、年は同じでも私なんてまだまだ駆け足状態。ただ、もう若くもないし“絶対に主演をやらなきゃ”みたいな意地はありません。性格的にも自分が前に出るより、人を押し出す役割をやってるほうに充実感があるんです」

 ライバルという他人ではなく、常に自分と闘っていると話す木村。そんな強い意志がそうさせるのか、ここ最近の彼女は着々と、確実にステップアップを遂げてきた。

いつも年末に“今年の総括・来年の目標”についてマネージャーさんと話すんです。2017年は攻めていこうと一昨年末に決めて。まずヒロインができる立ち位置をしっかりさせることを目標に、露出を増やしました。しかも、こんなこともできる、あんなこともできるっていうのを見せていければ、この先30~40代になっても展望が厚いものになるんじゃないかって」

 その言葉どおり、昨年だけでも妊婦にオペナース、崖っぷち毒女など、さまざまな役柄に挑んできた。そして放送中のドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』ではヒロインに! 

クールな木村文乃が…?

 今年も順調な滑り出しを見せる彼女が、映画『羊の木』では、とある港町に“元殺人犯たち”が新住民としてやってくることから巻き起こる、本格ヒューマン・サスペンスに挑戦。笑顔を封印し、これまでとはひと味違った雰囲気を醸し出している。

木村文乃 撮影/高梨俊浩

「私が演じた文という女性は、いろいろとあきらめてしまった感じがあるんです。心から笑えてない雰囲気を意識していたら、(主演の)錦戸亮さんや吉田大八監督から、“いつもにらまれてるようだった”と言われました(笑)

 劇中ではエレキギターをかき鳴らす場面もあり、めちゃめちゃカッコいい!

「アコースティックは持ったことがあったんですけど、エレキは初めてでした。ドラム担当の松尾論さんも未経験ということで、一緒に週1ペースでスタジオを借りて練習したり。普段聴く音楽はリラックス系が多いので、エレキを持ってたら“どうしたの!?”って驚かれました(笑)。周りにバンドをやっている友達が多くて、ライブハウスにもよく行っていたので、音楽の知識がゼロじゃなかったのが唯一の救いでしたね」

 物語が進むにつれて新住人の素性が徐々に明らかになっていき、主人公たちは“信じるか、疑うか”の間で揺れ動く。

 どんな出会いでも、相手のことなんて最初はわからないもの――。木村はどうやって他人との仲を深めていくのか聞いてみると“私は基本、人嫌いなので(笑)”とバッサリ。

「そんな私でも周りにいてくれる人っていうのは、みんな太陽みたいでドーンと殻を割って入ってきてくれる人が多いんです。自分から行けないぶん、すごく助けられています」

 普段はクールな木村だが、そんな彼女が最近、めずらしく自ら“好き!”と思った人とは…?

夏帆さんがすごくかわいいんですよ。『伊藤くんA to E』(公開中)でご一緒したとき、待ち時間におもむろにカップの位置を直したら夏帆さんも同じことしてて、脚を組み直したら、また同じ仕草してて興味を持ちました(笑)。すごい清楚な方だと思っていたら、受け答えがすごい男前。サバサバしていて嫌みがなくて“あぁ、好き!”ってなりましたね(笑)

映画『羊の木』 (c)2018『羊の木』製作委員会 (c)山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

<出演情報>
映画『羊の木』2月3日(土)全国ロードショー
出演:錦戸亮、木村文乃、/松田龍平ほか
(c)2018『羊の木』 製作委員会
(c)山上たつひこ、いがらしみきお/講談社