「どうしても治らない、つらい不調」「原因がわからない体調不良」「もしかして花粉症?」頭痛、慢性疲労、めまい、のどの痛み、鼻炎に胃や腹の異変、そんな症状に悩まされているのなら「上咽頭炎を治しなさい」。というのは、国内外から患者さんが治療に殺到する名医・堀田修先生。「鼻の奥が万病のもと!」と説く堀田先生に聞いた、上咽頭炎の症状と治し方とはーー

つらい不調が続いたら、慢性上咽頭炎をチェック

 全国的に花粉の飛散が増える季節がやってきました。すでに症状が出て、つらい思いをされている方もいらっしゃるかもしれません。

 花粉症の症状は、目のかゆみや、鼻みず、くしゃみなど、多岐にわたりますが、もしも、「頭痛」「鼻閉(鼻づまり)」「のどの違和感(痛みやつまった感じ)」「しつこい咳」「後鼻漏(鼻水がのどを流れて落ちてくる、痰がのどの後ろにへばりついている)」などに悩まされている、しかもそれがほぼ年間を通して続き、薬を飲んでも改善がみられない、という方は「花粉」以外の原因を疑ってみるとよいでしょう。

鼻の奥の慢性的な炎症が原因

 私は、腎臓病治療を専門とする内科医ですが、患者さんを治療する過程で、鼻の奥にある「上咽頭」の慢性的な炎症が、腎臓病だけでなく、身体のさまざまな場所で不調を引き起こしたり、症状を悪化させたりする「慢性上咽頭炎」という疾患があることを知りました。

 そして花粉症の症状とも共通する、鼻づまり、のどの違和感、慢性的なせき、偏頭痛、緊張型頭痛、後鼻漏もまた、「慢性上咽頭炎」が大きくかかわっているのです。

めまい、慢性疲労、首や肩のこりも引き起こす

 上咽頭は、左右の鼻の穴から吸い込んだ空気が合流するところから、のどちんこの奥までの場所をさします。空気感染によって侵入してきたウィルスや細菌と外敵から身を守るリンパ球などが闘う「関所」です。また、脳から排出されたリンパ液を流す通り道でもあり、豊富な神経線維がはりめぐらされています。

 この上咽頭が、風邪などをきっかけに慢性的な炎症を起こしてしまうと、ウィルスや細菌が血流に侵入したり、リンパ液がうっ滞したり、自律神経障害を引き起こしてしまうのです。そして、先にご紹介した症状以外にも「慢性疲労」「めまい」「首こり・肩こり」「過敏性腸症候群(下痢、便秘、腹痛)」「機能性腸障害(胃もたれ)」「うつ」「不安障害」「月経異常」などのさまざまな不調を引き起こし、悪化させたりするのです。

自覚症状なし!自分でできる調べ方

「慢性上咽頭炎」は、鼻そのものの違和感がないため、自覚症状がないのが特徴です。この疾患の有無を調べるのは、耳鼻咽喉科などで診察してもらうのが確実ですが、次のうち、どれか1つでも当てはまると、「慢性上咽頭炎」の可能性があります。

さまざまな薬を飲むなどしても、つらい不調/病気がどうしても治らない
医療機関を受診しても不調/病気の原因がわからないと言われた
耳の下の筋肉と交わったところを3本指で押して、痛みがある
 

治療法は痛い、けど効果大

「慢性上咽頭炎」の治療法は、塩化亜鉛溶液をしみこませた綿棒を鼻と口から入れて、直接、上咽頭に薬液をこすりつけるのが最も効果的です。上咽頭に炎症があると、激しい痛みや出血を伴いますが、効果は絶大です。特に頭痛や、首や肩のこりなどは、即効性が期待できます。

 この治療法はEAT(上咽頭擦過療法)と呼ばれていますが、もし、痛いことにためらいがあったり、お近くの医療機関で実施されていなかったりする場合などに、自分でできる「慢性上咽頭炎」への対処法をご紹介しましょう。

自宅でできる「上咽頭洗浄」

 

 その1つが少量の生理食塩水を使った「上咽頭洗浄」です。まず、座った状態で頭を60度以上後ろに倒すか、上向きに寝た状態で、生理食塩水をそれぞれの鼻にスポイトなどの容器を使って2cc程度入れます。鼻から入れた食塩水は口から出しても、そのまま飲み込んでもかまいません。

 生理食塩水は、水1000ccに食塩が9g入ったものをいいます。ミネラルウォーター500ccに、小さじ3分の2程度の食塩を加えて容器を作ったら、1回に使用する量が少ないため、冷蔵庫に保存しておくとよいでしょう。

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 生理食塩水は水道水と違って、鼻がしみることはありません。これを1日2回行います。EATには及びませんが、効果を実感できるはずです。そしてEATや上咽頭洗浄は花粉症対策としても有効です。花粉症が治るわけではありませんが、花粉症の症状は軽減します。

つらい不調が続いたら「慢性上咽頭炎」を疑ってみよう

 他にも、自分でできるものとして、鼻腔全体を洗う「鼻うがい」や、首の後ろを湯たんぽで温める、口テープをして寝る、舌を上あごにつけて鼻呼吸の習慣をつけるなど、さまざまな対処法があります。

「慢性上咽頭炎」と、EAT(上咽頭擦過療法)は、一般にはまだまだ耳慣れない言葉ですが、近年、その効果発現をもたらすメカニズムの解明につながるような医学的な発見が重なり、耳鼻科医や内科医を中心に注目が集まりつつあります。花粉症に限らず、原因不明のつらい不調が続いたら、この「慢性上咽頭炎」を疑ってみる価値はあるでしょう。


堀田修(ほった・おさむ)◎医師・医学博士 1957年愛知県生まれ。1983年防衛医科大学校卒業。日本病巣疾患研究会理事長。日本腎臓学会評議員。IgA腎症根治治療ネットワーク代表。2001年にIgA腎症の根治治療である扁摘パルス療法を米国医学雑誌『Am J Kidney Disease』に発表。日本のIgA腎症診療が激変するきっかけとなった。2011年9月に「木を見て森も見る医療」の拠点として仙台市内に医療法人モクシン堀田修クリニック-HOC-を開設。現在、堀田修クリニック(宮城)、大久保病院(東京)、成田記念病院(愛知)でIgA腎症専門外来を行う。