千葉隆博さん(左)と熊谷牧子さん(右)

 宮城・気仙沼市の「福幸小町 田中通り」商店街でおもしろい店を見つけた。

気仙沼は鮫好きの聖地

 カッコいい店構えが仮設商店街離れしているウエアや革製品、シルバーアクセサリーのセレクトショップ「Lander Blue(ランダーブルー)」のイケメンオーナー千葉隆博さん(45)は、

「アメカジ好きはぜひ来てほしい。パソコンで洋服を買うのもいいけれど、店に来れば試着できるし、似合うかどうかよくわかりますよ」

 と控えめにアピールする。

 津波に自宅も店も流され、借金だけが残った。内装にお金はかけられない。水分を含んだ丸太を1000円以下で買い取り、自然乾燥させて店内の大黒柱に。アクセサリーなどを並べるショーケースはケーキ店から無料で譲り受けた。プロ顔負けの日曜大工で商品棚を器用に作り上げ、東京まで「ほかでは売っていない商品を」と買い付けに行く。

「複数の取引メーカーの展示会をはしごして、うちのお客さんが欲しがりそうなものだけを買い、日帰りするか安い宿に泊まります」と千葉さん。

 実はこの店、鮫革製品を中心とする鮫関連グッズ専門店「SHARKS(シャークス)」のオーナー熊谷牧子さん(58)と1店舗に半分ずつ入る共同店舗。以前入居していた仮設商店街で知り合い、家賃を折半して入った。

 熊谷さんは、

「いまでは息子か弟のような存在。お互いひとりで店をやっているので、留守番を頼んだり頼まれたり、力仕事などを手伝ってもらっています」

 と目を細める。

 熊谷さんは震災前、会社員だった。津波に職場と自宅を流され、商売を始めた。

「気仙沼は鮫好きの人には聖地です。私は気仙沼が好きだし、気仙沼ならではの鮫革を知ってほしい。大好きな街に貢献したい」と夢を抱く。

 仮設商店街の退去期限は今年10月。ともに気仙沼で生まれ育ち、震災前は面識すらなかった“おしゃれ姉弟”は、次の転居先でもまた同居して商売を続けるという。

津内口和明さん

 福島・南相馬市の「かしま福幸商店街」では店舗の転居が続き、残るは3、4軒。整体処「和み」を営む津内口和明さん(58)は一見、とっつきにくそうに見えるけれど、根は親切で情熱的だ。

「一時は仮設住宅で暮らす人たちで連日賑わっていました。避難生活のストレスや運動不足などで身体がゆがんでいる人が来て施術後に“楽になった”と言われてやりがいを感じたものです。悩みを聞くのも仕事のうち」と津内口さん。

 仮設住宅から1人、2人と転居する人が続き客は減った。今年11月には商店街は閉鎖予定だ。しかし、遠くから通ってくれるお客さんもいる。

「5年営業してようやく店の場所も知られるようになってきたし、地権者が許すのであればここで続けたい。いま残っている人はみんなそう考えているはず。ただ、行政がうんと言わない。どこかに土地や場所を借りるか、トレーラーハウスにするか、まだ先は見えません」とポツリ。

 原発事故で東京に避難したものの家族が生活の変化になじめず、南相馬に戻った経緯がある。この地で─の思いは揺るがない。


セレクトショップ「Lander Blue」鮫関連グッズ専門店「SHARKS」
宮城県気仙沼市田中前4-2-1福幸小町・田中通り105 営業時間10~19時半

整体処「和み」
福島県南相馬市鹿島区西町1-88かしま福幸商店街内 完全予約制