疑いつつも占い師にメッセージを送った池田さん(仮名)

 悪徳占いサイトが詐欺まがいの行為で被害を広げている。

 藁にもすがる思いで占ってもらいたいという利用者が、占いサイト内で、占い師とメールのやりとりをする。たいていの場合は、最初は無料。そのうち必ずポイントが必要になり、1ポイント10~100円程度で購入させ、使わせる仕組みだ。

500万円以上つぎ込んだ人も

 1回のやりとりは1500円程度に設定されているサイトが多く、利用者は少しずつつぎ込み、気づいたときには莫大な金額になっているという被害が後を絶たない。

 国民生活センターに寄せられた占いサイトに関する相談件数は、2016年の1年間で約1500件。2009年4月~'18年1月中旬までの相談者で、

「つぎ込んだ金額が100万円以上の人が640人いました。500万円以上と答えた人も131人いました」

 と同センターの担当者。'14年9月には、兵庫県神戸市の50代の女性が、占いサイトに2年間にわたり約840万円振り込むという被害に遭った。

「占い師自体、資格が必要なわけでもなく、誰でもなれます。占いサイトの中には、ライターを募集しているところもあります」と前出・国民生活センターの担当者。

 まりサイト業者に雇われた「サクラ」が、占い師になりすまし、消費者の気持ちにつけ込み有料サービスを利用させ、多額の金銭被害を負わせる、いわゆる「サクラサイト」のような手法をとる悪徳占いサイトもある。

 東海地方在住の60代の主婦、池田明子さん(仮名)は、まんまと占いサイトに引きずりこまれてしまった。

「サイトの広告に無料と書いてあったので、登録してみました。昨年12月です。仕事もうまくいかず、家族関係もあまりよくなかったので金運、健康運と人付き合いに関して占ってもらいました」

送信1回に1500円かかる

 顔を会わせることのないサイトの向こう側にいるのは、「余命いくばくもない占い師K(仮名)」という触れ込み。

「鑑定が終わったらKが自分の守護霊を私に譲るといってくれました。その力をつけるため、先生から届くメールの指示を実行し、文面の最後に書かれている呪文のような言葉をメールで先生に送ります。送信に1回1500円かかり、これまで20万円以上使っていると思います」(池田さん)

池田さんに占い師から届いたメール

 送信後、続けざまに占い師からは利用者に期待を持たせるような新たな文面と別の工程が送られてくる。その繰り返しだ。

「どうにか工程を進めて金運をアップさせたかったので夫のクレジットカードを使ったり、息子や友人からもお金を借りました。Kのいうとおりにすれば、幸せになれる、金銭的に豊かな生活ができると信じ込まされていました」

 と池田さんは振り返る。

 池田さんが「お金が厳しいです」というと占い師は「幸運がすぐそこに来ているんです」と引きとめる。ネットの口コミサイトの書き込み「余命半年の占い師を紹介された」を見つけ、初めて、

「だまされたと思いました。でも、もし、最後まで工程を続けたとしたら、何か展開があるかもしれません……」

 と未練が断ち切れない。

 サクラサイト詐欺やマインドコントロールに詳しい立正大学の西田公昭教授は、

「だます側は、完璧に占い師に化けてます。アドバイスどおりになったら“ほら当たったでしょう”、ならなければ“それはあなたのやり方やお金が足りない”と言われ、鵜呑みにする人は少なくない」

 と占いサイトのぬかるみにはまるタイプと占い師の手口を明かす。

「利用者はサイトをやめたらよくないことが起こるのでは、という不安と恐怖を持っています。占いには非科学的で証明できない恐怖があるのです。これを振り払うのは本人だけでは、厳しい。“そのサイトはおかしい”と言ってくれる、まったく占いを信じない人の支えが必要です」

 お金を使わせ「全体的に見ればだましているようにも見えるが、利用している間は安心感を得ることもあり、詐欺という証拠をつかむのは非常に難しい」(前出・国民生活センター)という占いサイト。

池田さんに占い師から届いたメールの後半。指示に従って、言葉を返信すると料金が発生

 業者も、そのあたりを熟知しているようで、前出の池田さんが利用しているサイトを運営する「A」社は、

「こちらはサポートセンターなので、個別で場を提供しているだけ。占いの内容には一切関与していません」

 と木で鼻をくくるような対応。取材申し込みを書面で送れと指定された住所は、誰もいないレンタルオフィス……。実態が不透明なのだ。

 泣き寝入りをせず、返金を求め業者を訴える裁判も各地で行われている。そのひとつで原告の弁護を行う埼玉中央法律事務所の担当弁護士は、

「現在、長野県の40代の女性、埼玉県の30~40代の女性、そして東京で同一業者のサイトによる被害が発生し、裁判になっています。サイト内で鑑定をしてメールでやりとりする点が一緒です」

 彼女たちと前出・池田さんに共通する点は「悩みを抱える中で占いサイトを利用し、のめり込んでしまった」こと。

「サイトを続ける人は律義な人が多い印象です。自分のために祈ってくれるから応えたい、お金をつぎ込んだからもったいないなどの声を聞きます」(前出・弁護士)

 来月、判決が出るという長野のケースでは、女性がサイトで使った400万円の損害賠償を請求しているという。業者の対応について、前出・担当弁護士は、

「うちは悪くない、の一点張りです。鑑定というかメールを返すことはやっているし、サイト自体が占い鑑定を提供する場で、その義務提供はきちんとしているでしょ、サクラサイト詐欺のようにサクラがいて、うそのやりとりをしているわけじゃない、という主張です。自分たちの非は認めていませんが、利用者に使わせる金額は社会的許容限度を超えています」

 警視庁生活安全総務課によると昨年1年間で、警視庁管内で受理された占いに関する生活安全相談は30件。

 被害に遭わないためには、

「怪しいサイトには行かない。そのつど、課金されるシステムは疑いましょう。電子マネーを使った支払い方法には気をつけたほうがいいです。誰が受け取るのかわかりませんから、業者の特定が困難なんです」

 とサクラサイト被害対策弁護団の担当弁護士は呼びかける。さらに強い口調で、

「新しい被害が出る前につぶしていくことです。警察も国民生活センターも弁護士も救済できない、難しい、では、この問題はなくなりません」

 と訴える。

 顔の見えない相手をむやみに信用しないことだ。