ジャニーズやK-POPをはじめとした、日韓のアイドルの応援を日々の生きがいとし、気づいたらとある現場でトップヲタクになっていた<男子>大学生・あくにゃんのコラム。
イラスト/びーえいち

 3月といえば卒業式ですが、同じくアイドルにも卒業は訪れます。

 “卒業”という言葉を使うことで前向きな感じを演出できますが、実際は事務所による一方的な不当解雇だったり、結婚や出産によるものであったりと理由は様々です。

 ひとくくりに“卒業”という言い方や見方をするのではなく、なぜ、アイドルは卒業をしなくてはいけないのかを今回は考えていきます。

〈第十五声・最終回〉
これからも続くヲタク道
~あなたといつかカフェオレを~

 まず、昨今のアイドルの大きな特徴としてあげられるのが、アイドルの契約社員化です。

 アイドルは夢をずっと売り続けてくれる素敵な職業に見えますが、実際には大手事務所の多くが、1年ごとに契約を更新していく雇用形態をとっていることを忘れてはいけません。

 アイドルは永遠に存在するかのように見えて、実は1年ごとに輝く契約社員のようなものなのです。“契約社員”と書いてアイドルと読むわけです。

 よって、卒業のタイミングも事務所との契約満了の時期となることが多いため、4月からの学校入学をキッカケに辞めると言いつつ、もっと早い段階で辞めていくパターンもあります。

 さらに言うと、契約更新のタイミングではない時期に辞めていく者は、辞める理由が怪しいです。契約満了による“円満退社”ではなく、何かやらかしたが故に早急に辞めさせられているパターンがあるので要注意です。

 そのことを、世間的に分からせるためにも「卒業」ではなく「脱退」という言葉を公式発表で使うケースもあります。恋愛報道によりモーニング娘。を抜けた矢口真里氏も卒業ではなく、脱退という言葉が使われています。

タイミングは界隈によって違う

 卒業の時期は、アイドルと若手俳優とにおいて若干のズレがあります。旬の時期に「ズレ」があるからです。

 ジャニーズで言えば、中学校~高校生の間に結果を出していなければデビューが難しいという、なんとなくの風潮があるからか、大学進学や就職のタイミングで卒業という切り替え方をします。

 昨今のジャニーズにおいて大学進学率が高いのも、このためでしょう。大学進学の時期は、若干の落ち目と言いますか、旬が過ぎたと本人が感じる時期でもあるので、中学高校の間に結果を残せていない、もしくは事務所から推されていないと感じる者は保険としても大学進学を考え始めます。

 一方、高校生の役を多く演じている若手俳優に20代半ばが多いことからもわかるように、若手俳優は大学進学の時期にかけて上り調子になりやすいため、アイドルよりも大学進学を考える人が少ないと言えます。

 やはり、進学や就職という時期が、本人にとってターニングポイントとなりうることは多くあり、韓国の場合はこのターニングポイントが「兵役」にあたります。

 韓国には基本的に高校受験はなく地元の高校に通います。だからこそ生きてきた中で初めて行われる受験となる大学受験が、日本以上に白熱化しています。

 そこで、多くの者がどこの大学に行くか、どこの地域に住むか、最終的にはどこの会社に就職するかなど自身の未来について考えます。大学受験をしなかったアイドルにはこの機会が兵役で訪れます。そこで初めて同世代の人たちの世界に触れ、アイドルを辞めると決断する者もいます。約2年というあまりにも与えられた時間が長いためいろんなことを深く考えるそうです。

 また、韓国には兵役というタイムリミットがあるからこそ、日本以上に若い子たちに価値を見出しています。私の知人は18歳なのに年齢を理由にオーディションを受けさせてもらえませんでした。

 自身の人生を深く考えた結果、卒業という道を選択するアイドルが日本にも韓国にもいるということは面白い点です。深く考えれば考えるほどアイドルをやっている場合ではない、と思えてしまうこの「アイドル」という仕事はじゃあ一体何なのか、と考えさせられます。

 今年は働かせてもらえるが、来年の保証はない契約社員だからこそ来る不安なのかもしれません、あまりにも若い子にばかり価値を見出しすぎる風潮がそうさせているのかもしれません。

 やりきったから卒業するというアイドルは少ないように感じます。常に年齢は重なっていき、事務所にはどんどん若い子が入ってくる状況において、“自身に価値がなくなる不安”と毎日アイドルは戦っています。

 辞めていくアイドルには根性がないとか、みんなで東京ドームに立つ夢はどうしたの!? 的な叱咤激励をしだすファンは必ず出てきますが、ヲタク側だって、永遠にヲタクをしてくれるわけでもないので、推しが卒業するからと言って責めることはできませんし、案外イーブンな関係なのかもしれません。

 私は韓国人の推しに、僕の夢は「あなたがいつかアイドルも兵役も終えて30代後半くらいの時に、一緒に韓国のカフェでゆっくりカフェオレを飲むことです」と伝えたのですが、「そんな小さいことが夢なの!?」と笑われてしまいました。「ぼくに赤ちゃんいたらどうする? 一緒にカフェオレ飲むー?」とも言われました。なんでこっちは独身設定なんや!(笑)

 まぁ、きっと推しが卒業してもおじさんになっても、私の中ではずっとアイドルなのかもしれません。

 最後に。昨年11月から始まったこの連載ですが、本日をもって終了となります。

私も先日、大学を卒業いたしました!

 私が今の推しを1年以上本気で追って得た経験なども、こうして読んでいただけて、推しに使い込んだ時間やお金も無駄ではなかったと報われました(笑)

『なぜ、人は血の繋がりがない他人であるアイドルに熱狂するのか』という、私の卒論のテーマでもあるこの謎を今後も追い続けたいと思います。

 少なくはなると思いますが、4月からも私は変わらずアイドルの現場にいると思いますので、何卒よろしくお願いいたします。

 これまで読んでいただき、ありがとうございました!

<プロフィール>

 

あくにゃん◎1995年生まれ。ジャニーズやK-POPをはじめとした、日韓のアイドルの応援が日々の生きがい。

日々のオタ活で感じたことを、独自の観点&独特な表現で言葉にするツイートも必見!

Twitter/ @akunyan621