『黒井戸殺し』(c)フジテレビ

 アガサ・クリスティー原作×三谷幸喜脚本×野村萬斎主演による3年ぶりのスペシャルドラマ第2弾。クリスティー作品の大ファンで、前作『オリエント急行殺人事件』で好評を博した三谷が語った原作の魅力と三谷流ドラマの見どころとは─。

豪華キャストが出演
『真田丸』メンバーも

 アガサ・クリスティーが1926年に発表した推理小説『アクロイド殺し』を日本で初映像化。3年前に同局で放送され好評だったアガサ・クリスティー原作の『オリエント急行殺人事件』(第1夜16・1%、第2夜15・9% ※ビデオリサーチ調べ、関東地区)に続いて、脚本・三谷幸喜、主演・野村萬斎で描く。

『オリエント─』が放送された直後から、クリスティー原作をやるのであれば、『アクロイド殺し』にしたいと思っていました。

 理由は、普通のミステリーでは犯人がわかった瞬間、それ以外の人物への興味が薄れてしまいがちですが、犯人以外の人物にも人生やドラマがあって、無駄な登場人物がいない。全員にきちんとした意味があるので、脚本家の“書きたい”という思いをかき立てる作品だと思ったからです。

(脚本制作にあたり)原作を読み直すと、本当によくできていて、変に脚色すると、全体の構成が崩れてしまう。(舞台を)日本に置き換えるというのはあっても、登場人物を減らすと、クリスティーのやりたいことからずれてしまうので、可能な限り、原作どおりにしました」

 こう語るのは、三谷幸喜。

 三谷流『黒井戸殺し』の舞台は、昭和27年の片田舎・殿里村。村の名士で富豪・黒井戸が何者かに殺害されたことをきっかけに、名探偵・勝呂武尊が事件の真相に迫る。

 野村扮する勝呂の相棒となる医師を大泉洋が演じる。野村と大泉は、三谷脚本の舞台『ベッジ・パードン』で共演し、ドラマでも息の合ったコンビネーションを見せているという。

 大泉はじめ三谷脚本の大河ドラマ『真田丸』に出演した吉田羊、松岡茉優、藤井隆、斉藤由貴、遠藤憲一、今井朋彦、三谷作品初出演の余貴美子、草刈民代、向井理、佐藤二朗、和田正人ら個性豊かで豪華な出演者には大注目。

キャストを見て犯人がわかるふうにはしたくないと、プロデューサーにはお願いしました。犯人らしい出演者は1人もいないラインナップになっていますし、全員にきちんと容疑がかかるようになっていて より楽しんでいただけるキャストがそろったと思います」(三谷、以下同)

 黒井戸殺しの容疑者が次々と浮上するが、3時間のドラマで殺人が起きるのは1回だけ。しかし、三谷はそこに自信を見せる。

以前から、日本のサスペンスものは人が死にすぎる気がしていたので、今回のように、1度の殺人事件だけでも、話が面白ければ成立するということを、改めて示したかったんです。どうやって犯人をあぶり出していくのか? 推理の道筋を楽しんでいただければと思います」

殺人事件の真相を追う勝呂と相棒の柴医師 (c)フジテレビ

 ドラマは戦後間もないころの設定で、黒電話などの小道具や登場人物の衣装にその時代の雰囲気が漂っている。

「最初、プロデューサーに“横溝正史の金田一シリーズの未発表のものが発掘されて、映像化されるみたいな感じのものになればいいな”とお伝えしました。物語の舞台を、日本のどの年代に置き換えるかを考えたときに、いちばんしっくりきたのが『犬神家の一族』や『八つ墓村』といった戦後すぐの農村だったので、設定はうまくいったかなと思います。

 ミステリーとしてもすごく骨格がしっかりしていて、映像的にもとてもきれいな画が撮れていると思いますし、ほかのテレビドラマと比べても、ゴージャスなものになったと思います」

 手ごたえを感じている三谷は、早くも次作に意欲的。

クリスティー作品には、まだまだやりたいものがあり、あと50作くらいはできる気がしています(笑)。ぜひシリーズ化していきたいです

 渡辺恒也プロデューサーは、

「三谷さんならではのユーモラスな人物像と事件推理へのアプローチが光る実写化によって、原作を読んでいる人も読んでいない人にも新鮮に楽しんでいただける作品になっています」

三谷がリクエストした
キーパーソンとは……

 豪華出演陣は見どころだが、三谷が“この人を”と唯一、希望したのは原作のキャロラインにあたる柴カナ役を演じる斉藤由貴。

「(キャロラインは)詮索好きで、ちょっとおっちょこちょい、どこか悲しげなところも、母性もある。彼女が年老いたら、(アガサ・クリスティー作品の名探偵)ミス・マープルになるんじゃないかと思うこのキャラクターを誰が演じるかで作品のイメージが変わってくると思います。僕のなかでは、斉藤さんのイメージが強かったんです

<作品情報>
『黒井戸殺し』フジテレビ系
4月14日(土)夜7時57分〜