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 巷にあふれ返った“健康常識”はウソ? ホント? 日本人の死亡原因1位の座に君臨し続ける、憎っくき「がん」にまつわる都市伝説を、3人の医師らがQ&A形式でわかりやすく解説します。

バイアグラで大腸がんを予防できる?

「ホントです。マウスによる実験では、バイアグラで大腸がんを防いだという結果が出ています。ただし、人間を対象とした研究ではないので、オススメはしません

 と、医学ジャーナリストの植田美津恵先生。米ジョージア大学の研究によると、マウスの飲み水にバイアグラを入れたところ、がん化するおそれがある腫瘍性ポリープが半減したという。

「バイアグラのほかに、鎮痛剤で知られるアスピリンにも、がんを防ぐ効果があるといわれています。とはいえ、大腸がんを防ぐために、バイアグラをせっせと飲むのは論外。ほかの方法でも予防できますし、服用には慎重になったほうがいいでしょう」

菓子パンやスナック菓子はがんのリスク増?

 小腹が減ると、つい手がのびてしまうけれど、

「ホントです。砂糖や油脂分、塩分を多く含み、保存料が添加された『超加工食品』の摂取量が多いと、多くのがんのリスクが高まるといわれています

 とは、皮膚科専門医の小川徹先生。スナック菓子や菓子パン、カップ麺などが代表的。たまに食べる程度ならともかく、その量が増えるほど危ない結果に。

 フランス国立保健医学研究所の研究によれば、仏在住の10万5000人を調査した結果、食事のなかで超加工食品の割合が10%増えるごとに、がんの発症リスクも増加。特に閉経後の乳がんで顕著だそうで、週女の読者世代は要注意!

「フランス人が食べている超加工食品と、日本人が食べているものについては違いもあるので、さらなる研究が必要でしょう」

熱いお茶を飲んでいるとがんになりやすい?

 猫舌じゃなくても、小川先生によると意外な問題が……。

「ホントです。食道がんにかかるリスクが高まるといわれています」

 ただし、ポイントはお茶の温度だけでなく、お酒の量やタバコの習慣。中国・北京大学公衆衛生学院の研究では、飲酒量が多い人や喫煙者が熱いお茶を飲むと、食道がんの発症リスクが高まった。

 ちなみに、国際がん研究機関は、65度を超える温度のお茶は人に対して、おそらく発がん性があるとしている。

お茶だけでなく、熱い温度の食べ物を摂取することも、食道がんのリスクを高めるおそれがあります。実際に、過去にさまざまな研究で指摘されてきました。日本人はお茶をよく飲む文化があるので、温度には注意しましょう」

コーヒーを飲むと肝臓がんのリスクが減る?

 コンビニに缶コーヒー、スターバックスなどのチェーン系カフェとブームが止まらないコーヒー。飲んでいると、こんないいことが。医師の稲島司先生によると、

「ホントです。世界中で行われた研究を解析した結果、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べて、肝臓がんにかかるリスクが40%も少なかったそうです」

 コーヒーに含まれるクロロゲン酸が有効だといわれているが、正確なメカニズムはわかっていない。

「がん予防に関する限りコーヒーはいいことずくめだと思っています。また、がんだけでなく、糖尿病や呼吸器疾患のリスクを下げるというデータもあります」(稲島先生、以下同)

 でも、カフェインのとりすぎは身体に悪いんじゃ?

「予防や治療のためにまで飲む必要はありません。なお、この研究では、1日3~4杯が有効としています。飲むときは、砂糖やコーヒーフレッシュの入れすぎに注意しましょう」

敵に塩を送られた武田信玄は胃がんになった?

「これはホントです。戦国武将・武田信玄の死因は、当時の記録から胃がんではないかと考えられています

 と稲島先生。“敵に塩を送る”とは、敵対関係にある相手が苦しんでいるとき、弱みにつけこまないで逆に苦境から救うという意味の故事成語。塩不足に悩む信玄のもとへ、敵将・上杉謙信が塩を送った心温まるエピソードに基づく。

「健康を考えるとオススメしません」

 塩のとりすぎが高血圧や動脈硬化の原因となるのは、前述のとおり。加えて、胃がんにもなりやすい。

 信玄も、この事実を知っていれば……!!

「実は、送った側の上杉謙信は、脳卒中で亡くなったといわれています。こちらも、もしかして塩分のとりすぎかもしれませんね(笑)」


〈お話を伺ったのはこの3人〉
稲島 司先生

総合内科専門医、循環器専門医。地域医療連携にも取り組む。大量の文献を、ユーモアを交えながら紹介していく講演が好評。『世界の研究者が警鐘を鳴らす「健康に良い」はウソだらけ』(新星出版社)ほか著書多数

植田美津恵先生
医学博士、医学ジャーナリスト。愛知医科大学客員教授、東京通信大学准教授。各大学にて教壇に立つほか、医学番組の監修、テレビコメンテーター、講演活動を行う。近著に『忍者ダイエット』(サンドランチ)

小川 徹先生
皮膚科専門医。早稲田大学招聘研究員。元慶應義塾大学研究員。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校、英ロンドン大学セントトーマス病院などで国際的に活躍中。医学博士のほかMBA、公共政策の修士号を持つ