婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした男女の婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆきます。今回は、『お見合いでの金銭感覚』です。

シニアの初婚男性はケチな人が多い!?

いきなり貯金通帳を見せられても

「もう、びっくりですよ。いきなり貯金通帳と土地の権利書を見せられました」

 こういうのは、先日58歳の男性、池野さん(仮名)とお見合いをした48歳の戸田友紀奈さん(仮名)。

 今やシニア婚もポピュラーになってきました。友紀奈さんは、20代半ばで結婚、男の子をもうけたものの、浮気を繰り返す夫に三くだり半をつきつけて、子どもが小2の時に離婚。

 以来、シングルマザーになり、無我夢中で仕事と子育てに奮闘してきました。その息子がこの春に大学を卒業して就職をし、ひとり暮らしを始めたのです。そこで、ご自身の再婚を考えるようになりました。

 友紀奈さんのように20代で結婚、出産、離婚。その後、40代、50代に入って子どもが独立したことをきっかけに、第二の人生を考えて婚活を始める人たちが増えています。

 また最初の結婚で、元夫の浮気、借金、ギャンブルなどで苦労をした女性たちは、年齢や見た目よりも、お人柄や安定した収入で男性を選ぶことが多いのです。

 実際に友紀奈さんも、こんなことを言っていました。

「前の夫は、ハンサムで高身長、見た目に惹かれた部分が大きかったんです。口もうまかった。出会ってすぐに私が夢中になりました。でも、そういう男性というのは、よそでも女性を口説くんですよ。女癖の悪さで苦労するのはもうこりごりなので、今回は見た目よりも誠実で堅実な方を望みます」

 そこで、お見合いをすることになったのが、58歳で初婚の池野さんでした。

 役所に勤めていてあと2年で定年ですが、公務員なら年金もしっかりしている。また、備考欄に、“預貯金、資産があるので定年後の生活には困らない”と書かれていたことにも堅実なお人柄を感じました。

 しかしながら、出会い頭に驚きの行動(笑)。預金通帳と土地の権利書を見せられたら、どんな女性もドン引きします。

 さらに、お見合いしている時の会話で、役所の近くにおいしい中華料理屋さんがあるという話から、こんなことを言ったそうです。

「戸田さんは、中華料理の中では何が好きですか?」

「エビチリが好きです」

「エビチリ? あれはうまいけど高いですよね」

 その言葉を聞いて、「この男性と中華を食べにいったら、エビチリを頼むことはできない。フカヒレなんて絶対に食べられない」と、思ったそうです。

 さらに、この男性、お見合いを終えて、ホテルのティールームを出ると友紀奈さんのもとにツカツカと歩み寄ってきて、右手を差しのべ握手を求めるしぐさをしながら言いました。

「ホテルのコーヒーは、一杯1500円もして高いですね。でも、今日はお見合いなので、僕がごちそうします。またお会いしましょう」

 友紀奈さんはその握手には応じず、「今日はありがとうございました」と深々とお辞儀をして、その場を早足で立ち去りました。もちろん、そのお見合いには“お断り”を出し、二度と会うことはありませんでした。

390円のラーメンを大盛り無料券で

 恋愛はしてきたものの、これまで結婚するご縁には恵まれなかった好美さん(52歳・仮名)は、現在80代のお母様と2人暮らし。親はいつか先立つもの。残りの人生を考えたらパートナーがいたほうが豊かに楽しく暮らせるのではないかと、婚活を始めました。

 そして、56歳の男性、北島さん(仮名)とお見合い後に交際に入り、初めてのデートとなりました。待ち合わせは、駅ビル7階のティールームに13時。その日、午前中に絵手紙の習い事があった好美さんは、お昼を食べる時間もなくそこに向かいました。

 着席して、メニューを見ながら好美さんが聞きました。

「北島さんは、お昼は食べてこられたんですか?」

 すると、彼が明るい声で言い放ちました。

「ええ、ここに来る前に、H屋でラーメンの大盛りと餃子を食べてきました。大盛り無料券があったんで、それを使って。知っていますか? H屋」

 H屋というのは、390円ラーメンが有名なチェーン店の中華食堂です。そこで食事をすると、帰りがけに『麺類大盛分70円無料券』『ライス大盛分60円無料券』『味付け卵100円を半額券』をくれるのです。

 その話を聞いて、好美さんは見ていたメニューをパタリと閉めました。“この人の前で、1600円するミックスサンドを頼んではいけない”と思ったからです。そして、オーダーを取りにきたウェイトレスに言いました。

「コーヒーください」

 北島さんも同じくコーヒーを注文しました。

 なんだか、すっかりシラけてしまい、話を切り上げて帰ることばかりを考えていました。しかし、時が経つのは遅く、1時間のお茶が3時間くらいに感じられるたそうです。

 さらにお会計の段になり、彼が伝票をもってレジでお会計を済ませたので、店の外に出てから、「あの、お支払いは?」と聞いたそうです。すると、彼は、好美さんにレシートを見せて、金額のところを指差しながら言いました。

「え〜と、700円ですね。消費税分はいりません」

 息の根が止まりそうになりながらも、急いでお財布から500円玉1枚と100円玉2枚を取り出し渡しました。

 その夜、好美さんはことの一部始終を私に電話で話すと、言いました。

「申し訳ありません。北島さんとは、交際終了でお願いします」

大判ぶるまい、お金にルーズなのも困るけど

 お金を計画的に堅実に使うのは、とても大切なことです。女性は、借金のある男性よりも預貯金や資産のある男性との結婚を望むでしょう。

 ただ、出会ったばかりの時に「エビチリが高い」だの、「390円のラーメンを70円の大盛り無料券を使って食べてきた」だの言わなくてもよい(笑)。

 さらに、初めてのデートの前に餃子を食べてくる男性は、デリカシーに欠けていると思いませんか?

 これが、つきあいの長い恋人同士や長年連れ添った夫婦の会話ならよいのですよ。

「給料出たばかりだから、今夜は中華を食べに行くか。エビチリは高いけど、奮発をしちゃおう」

「H屋の390円ラーメンは、値段にしてはおいしいしコスパがいいよな。大盛り無料券あるから、お昼を食べに行こう。餃子もつけようか」

 そんな会話ができるのは、お互いに信頼関係ができ上がっていて、お財布事情をわかっていればこそ。

 お見合いで出会ったばかり、またはまだ回数の浅いデートの時では、男性に格好をつけてほしい。

 これまでの仲人をしてきた経験則から言えば、シニアの初婚男性には、どうもケチな男が多い気がしてなりません。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/