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 高齢出産にまつわる悩みを抱えているのは、なにも女性だけではない。2度の結婚と離婚を経験した男性・Yさん(44)が、妻の不妊治療の果てにこじれてしまった夫婦関係を明かす。

結婚前に彼女から「不妊治療をしたい」

 晩婚化が進み、「結婚適齢期」などという言葉は、もはや世間でも聞かれなくなった。だが、最近では「卵子の老化」「妊娠適齢期」という言葉が飛び交い、子どもが欲しいと思う多くの夫婦を過酷な「妊活」へと追い込んでいる。それは妻のみでなく夫も……。

 出版社に勤務していたYさんは、25歳で最初の結婚をした。同い年の妻と「子どもは、2人の生活を楽しんでから」と決め、旅行や趣味などを満喫した。33歳で独立起業、手がけた事業も順調で「調子にのっていて、妻以外の女性と浮気してしまった」という。が、すぐにばれ、1年後に離婚。結婚10年目のことだった。

「自分がまいた種ですが、妻を傷つけてしまったことは本当に後悔しています」

 2度目の結婚相手は高校時代のマドンナだった女性。同居せず、お互いの家を行き来する通い婚だった。

 きっかけは、同窓会での再会。仲間同士でカラオケやディズニーランドに行くなど友達付き合いをして3年がたったころ、突然、彼女から「結婚を前提に付き合って」と積極的なアプローチをされたのだ。

 浮かれていたYさんだったが、次に会えたのは3か月後。以前から「子どもが欲しい」と言っていた彼女だけに当然、そういう関係になっていくものだと思っていた。ところが、ようやく会えた彼女に言われたのは「不妊治療をしたい」という言葉だった。

「ちゃんと付き合いが深まってからの不妊治療、という順番ならわかります。肉体の関係がないままというのが不思議でした。このとき、お互いに40歳。彼女のことは好きでしたし、不安や年齢的な焦りも理解できた。僕は不妊治療に同意し、すぐに結婚することを決めました

 不妊治療はお金がかかる。しかも、入籍していないと治療は受けられない。

 排卵日のたび病院に呼ばれ、結果として3回の不妊治療を受けた。かかった費用は100万円を超えたが、すべてYさんが負担した。

「妻はとにかく子どもが欲しかったんだと思います。不妊治療後、彼女もあきらめたのか、初めて普通に愛を育むことができました」

精力剤に頼らないと──

 しかし、いつしか妻の態度は豹変(ひょうへん)。キスすら嫌がり、セックスは彼女の排卵日だけ。行為が終わると、食事もせず実家へ帰ってゆく。次第に、黙ってひとり旅に出たり、男友達と飲みに行ったりするように。

「高校の同級生だったせいか、ずっと名字で呼ばれていたし、正直、夫婦になった実感は薄かったです」

 彼女を喜ばせたい、安心させたいと思っていても、いつも空回り。“子を授からないと幸せになれない”という焦りが募る。Yさんは、薬局で精力剤を買って飲まないとセックスできない状態にまで追い詰められていた。

 会っても「疲れた」と、ため息をつく彼女を見て“お互いのためによくない”と離婚を決意。離婚届を郵送で彼女のもとに送った。

「半年後、彼女から離婚届を役所に提出したというメールがきました。子づくりの終わりが縁の切れ目だったんでしょうか……」