市川染五郎 撮影/伊藤和幸

 今年1月、高麗屋にとって37年ぶりとなる2代にわたる親子孫の3代同時襲名で、『八代目市川染五郎』となった弱冠13歳の少年。13歳にしては、あまりに大人らしく、落ち着いた佇まいと美しさに、息をのむ。しかし、話し始めると、まだ13歳のあどけなさが垣間見え、そのギャップに、誰もが心奪われるに違いない━━。

襲名してから、心境の変化

「父(十代目松本幸四郎)も言っていたのですが、名前が変わったからといって、急にうまくできるようになるわけではないので、気持ち的にはそれほど変わっていません。1月歌舞伎座の襲名披露演目『勧進帳』で義経を演じたときは、人生でいちばん緊張しました。“あんな未熟な義経をお見せしてしまって、申し訳ない”という気持ちでいっぱいです」

本番前、緊張をやわらげるための習慣

「単純なことなのですが、大きく深呼吸をすることです。ちなみに祖父(二代目松本白鸚)は毎回、塩をまくんです。かなりの量をまくので、祖父の後に出番を待って座っていたりすると、足の裏に塩がつくんです。だから、もう少し量を減らしてほしいなって……(笑)」

セリフの覚え方

「ひたすらに読みます。覚えた後に、気持ちを乗せていくような感覚で。ただ、義経を演じた『勧進帳』は、昔から何度も何度も見ているので、だいたいのセリフは入っていました」

生の舞台だからこそ気をつけていること

「祖父が言っていたのですが“毎日、舞台に立っている役者は、やっていることは同じでも、お客様は毎日、違う。だから毎日、新しい気持ちで演じなければいけない”という言葉がすごい心に残っていて。僕も、その言葉を常に意識しています」

市川染五郎 撮影/伊藤和幸

役者として、言われてうれしいほめ言葉

「“演じていて、すごく楽しそうだね”と言っていただけると、とてもうれしいですね。自分が楽しんでできていれば、お客様も楽しんでいただけていると信じて日々、舞台に立っています」

素の自分から、役へと入る瞬間

僕は、顔(化粧)をし終わったときが、役に入り込む瞬間です。逆に、幕が下りたら、スッと自然に、普段の自分に戻るような感覚です」

歌舞伎の担い手としてーー

「古典芸能の歌舞伎に対して、敷居が高いと感じられている方も、多いのではないかなと。それを壊すことが、僕たちの役目だと思っています。新作の演目を作るなど、今の若い世代の方々にも、歌舞伎に興味を持っていただけるきっかけを作れればいいなと、感じています。まだまだ先ですが、いつかは新作も自分で作ってみたいと思っていて。ただ、僕が新しい仕掛けなどを考えていても、(市川)猿之助お兄さんは、いつも先に実現されるんです。それがすごく悔しくて、憧れでもあります。だから、新たにすごい仕掛けを考えたり、誰もやったことのない国での歌舞伎の公演もしてみたいです」

マイブーム

欅坂46です。特に、センターの平手友梨奈さん。もともと、歌詞がすごく好きで聴くようになって、ハマったんです。平手さんが先日、久々にセンターに復帰したときは、本当に感動しました!」

好きな曲

「欅坂と乃木坂とAKBが、合体したグループ『坂道AKB』が歌っている『国境のない時代』がお気に入りです。欅坂だと『風に吹かれて』や、『もう森へ帰ろうか』とか。欅坂の曲は全部好きです!」

市川染五郎 撮影/伊藤和幸

集めているもの

「仏像を集めていて、今は30~40体くらいあります。でも今は、欅坂にハマっているので、いったん、仏像収集はストップ中です(笑)」

常に持ち歩いているもの

(そっとカバンから犬の人形を取り出して)祖母からもらった、ボン吉です。学校に行くとき以外、外出のときは必ず持ち歩いています。着ている洋服は、本物の犬用のものなんです」

最近、興奮した瞬間

ほぼ毎日、ラインニュースで“欅坂”って検索するのが日課なんですが、ある日、いつもどおり検索したら、欅坂好きとして自分の名前が出てきて! 僕の欅坂好きが知られつつあって、うれしいです」

ついやってしまう癖

「指をポキポキ鳴らしてしまうんです。いくらやっても音が鳴らない状態にしないと安心できなくて。だから、舞台に出演するときも、ついポキポキやっています」

市川染五郎 撮影/伊藤和幸

苦手なもの

鳩です。“鳩”って言葉を聞くだけで、寒気がするくらい嫌い。鳥がそもそも好きじゃなくて。あ、でも食べ物としては、鶏肉がいちばん好きです。あと嫌いなのは、紅ショウガ。紅ショウガがついている焼きそばは、絶対に食べません!」

いちばん好きなイベント

「夏休みです。小さいころは、家族旅行などにも行っていたんですが、最近は舞台があるのでなかなか難しいですね。またいつか、みんなで行きたいなって。特に覚えているのは、父の海外公演について行って、ラスベガス旅行をしたのが思い出深くて。シルク・ドゥ・ソレイユの舞台を見たり、本当に楽しくて。いつか住みたいです!」

実は……

「絶叫系が、大っ嫌いなんです。以前乗ったジェットコースターがトラウマで、飛行機に乗れなくなりました……。数年前に、(市川) 團子さんと遊園地に行ったとき、乗り物に乗ったら、映像が目の前のスクリーンに流れるアトラクションで。映像が終わって帰ろうとしたら、スクリーンが開いて、まさかのジェットコースターだったということを、そのとき初めて知って、本当に死ぬかと思いました……

<出演情報>
歌舞伎座百三十年『八月納涼歌舞伎』
【開催】8月9日(木)~27日(月)
第一部『龍虎』、第二部『再伊勢参!? YJKT 東海道中膝栗毛』に出演

<プロフィール>
いちかわ・そめごろう◎’05年3月27日生まれ。本名、藤間齋(ふじま・いつき)。’07年6月、歌舞伎座『侠客春雨傘』で初お目見得、’09年6月には、歌舞伎座『門出祝寿連獅子』で四代目松本金太郎を襲名、初舞台を踏む。今年1月、2月歌舞伎座『勧進帳』ほかで八代目市川染五郎を襲名。