広瀬すず 撮影/廣瀬靖士

「3〜4年前、知り合いにすすめられて原作の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を見たんです。そうしたらドハマりして、なんて面白いんだろうと思って。オファーが来たときは本当にビックリして、すごい叫んでしまいました。うれしくて(笑)」

 笑顔を見せる広瀬すず(20)。大ヒット作『モテキ』『バクマン。』などを手がける大根仁監督が映画化を熱望し続けた韓国作品の舞台を日本に移し、コギャルブームに沸く’90年代に高校生時代を過ごした仲よし女子グループ・サニーの20年後を描いた『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。通り過ぎた’90年代や高校生時代を懐かしく振り返り、いまを生きるそれぞれのメンバーに自分を重ねながら爆笑して号泣できる青春映画となっている。

 “コギャル”といえば、短くしたスカートにルーズソックス、ラルフローレンのカーディガンとベスト。小麦色の肌に、細眉。そして弾丸トークと、あふれる笑顔。

「衣装合わせから、見たことのないファッションで楽しかったです。コギャル監修の方がいて“ルーズソックスはこの長さで”の“この長さ”の意味がわかるんです。それは、同じ女子だからだと思う。言葉遣いとか、所作も意識しました。’90年代の女子高校生には“無敵感”がありますよね。今の子のほうがシャイかもしれない。それがいいのか悪いのかわかりませんが、目立つことが悪くとらえられる時代でもありますし。絶対にコギャルになったほうが楽しいと思いました。もっとJK(女子高生)頑張れ! って(笑)

 演じる奈美が淡路島から転校した先の東京の女子校で出会った5人の仲間“サニー”。最初は、東京のコギャルに押されていた奈美だが、徐々になじんでいく。

「クランクインの日から、みんながしゃべっている姿に圧倒されるシーンを撮って。遠慮なんかなく、クラスメートがわ〜ってしゃべっている中で初日から胸をつかまれたり、叩かれたり。パンも飛んでたし(笑)。水着でライバルグループと戦うシーンがあるんですけど、もう男性には見せられない控室でした(笑)。みんな、隠すことなくバーンって感じで着替えたりして。カメラが回っていないところから“いくぞー!”ってノリで気持ちよかったです

 日ごろ見ている彼女のイメージから離れているような……。

「最初の“なんか、すごいな。客観的に見て怖いよ、この人たち”っていう感じが、気づいたら自分でも声出しているみたいな(笑)。今すぐに、あのノリにはなれないですね。サニーのメンバーがそろったら、またあのテンションになれるかもしれないけど。みんながいて、奈美がいる。女子校のみんなに助けられました。だからこそ、こんなに素敵な映像になっているんだなって。結構、アドリブも多かったです。リアルに自分たちから生まれたものを映像に使っていただいてます」

広瀬すず 撮影/廣瀬靖士

 奈美が仲間として受け入れられるきっかけとなる、ライバルグループとのケンカを止めるために身体を張るシーンは印象的だ。

「すごいですよね。台本を読んだ瞬間に、どうやろうかと思いました。監督から“おーっし、じゃ、自転車蹴っちゃおう”“次は、叫びながら蹴って”“キレた瞬間に白目むいて”って。白目は映画『ちはやふる』で練習しておいてよかったです(笑)。撮影が終わった後、大根監督から拍手をもらいました。

 完成した映像を見たとき、私はいいんですけど、(所属する)事務所から何か言われるんじゃないかって、それをいちばん心配して(笑)。今作にも出演されているリリー・フランキーさんから“お姉ちゃん(広瀬アリス)にはバカだなーって部分があるのに、すずってなんでいつもそんなにクールなんだろうと思っていたけど、初めて姉妹だと思った”って。

 先輩やマネージャーさんからも“すずって、いつテンション上がるの?”って言われることが本当に多いんです。そんな中で、リリーさんから“初めてバカだなって言えたよ。でも、すごくよかったよ”っていう長文のメールをいただいて、あそこまで頑張ってよかったんだと思いました。でも、あれが、全国に流れてしまうんですよね。せめて、予告では使わないでほしいと思っています(笑)」

広瀬すず 撮影/廣瀬靖士

 最後に、作品で奈美にいちばんに声をかけたリーダーの芹香のように、自分の人生を変えてくれたと感じる人について聞くと、

「是枝裕和監督に会うと運気が上がるんです。煮詰まっているときに必ず監督とのお仕事があって、終わると“う〜ん”っていうのがなくなって、次のお仕事がいろいろ決まり始める。すごい不思議。歩くパワースポットです。

 あの女優さん素敵だなとか、このお芝居いいな、いつかできるようになりたいなとは思うけど、今すぐみたいな気持ちはまだなくて。今は、目の前のこと、目の前のことという感覚なんだと思います。吸収できないくらいすごい共演者、監督、作品と巡りあってきました。その出会う運だけは、強い自信があります。本当に、そこだけはありがたいなって思っています」

原作を超えたおでん屋のシーン

「大根監督から「原作を超えた」と唯一、言われたシーンです。奈々役のエラちゃん(池田エライザ)とのシーンで、なんであんなに涙を流したのか自分でもわからなくて。奈々と仲よくなった後のシーンも同じタイミングで撮っていたので、自分の中で感情がうまく作れなくて……。エラちゃんがボロボロ泣くから、それにつられて、なんでこっちまで泣いてるの? って、不思議な気持ちのまま撮影が終わりました。今思えば、その戸惑いがよかったのかもしれません」

20年後の奈美役、篠原涼子との共演

「ずっと『アンフェア』を見ていたので、役柄そのまま、すごくクールで強い女性のイメージだったんです。でも、ご本人はすごく可愛らしく、フワフワした方で。なんか包まれる感じというか、私にしか感じられないものがありました。実は、共演させていただいたシーンを撮ったとき、朝ドラ『なつぞら』(来年4月スタート)をやることが決まったと聞いた直後だったんです。「えーっ!?」みたいな、いろいろな感情が自分の中にありすぎて、それが出て涙に変わって、1日中ずっと泣いていた記憶があります」

20歳の恋

「映画で、奈美は片思いをしています。恋愛って、憧れます。今まで好きになった人がいなかったわけじゃないですが、する暇がなかったです。仲よくなった共演者のみんなと、ごはんに行って恋愛の話もします。みんな忙しいから(彼氏が)いないんです。だから、ラブストーリーの映画を見て満足するんです。私たちには、まだ早いねって言いながら(笑)」

(C)2018「SUNNY」製作委員会

<作品情報>
映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』
8月31日全国ロードショー
 夫と娘を支える専業主婦の奈美(篠原涼子)が、高校時代の仲よしグループ・サニーのメンバー芹香(板谷由夏)と再会する。末期がんで余命1か月と宣告された芹香の願いを叶えるために、サニーのメンバーを探し始める奈美。かつての仲間は、再び集結できるのか。