お見合いで、“いい人だな”と思って交際に入っても、お相手を異性として好きになる速度が、男女では差があります。婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした男女の婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『男女で異なる、相手を好きになる速度』です。

男女は好きになる速度に差がある(写真はイメーです)

初めてのデートでキス

 その日、お見合いだった会員の里美さん(33歳)から、夜の11時にLINEが入ってきました。

「今、吉田さん(38歳)と駅でお別れして、帰りの電車に乗りました。吉田さんとは、交際希望でお願いします」

 お見合いは、土曜の夕方4時、都内のホテルのティールームで行われました。

 相談所でのお見合いは、電話番号やLINEなど個人情報の交換は仲人を介して行うというルールがあるのですが、気が合ったらお見合いの後に、お食事や飲み行ってもいいことになっています。

 それにしても、お見合いから7時間が経過。「随分、長い時間一緒にいたのね」とLINEをすると、こんな返信がきました。

「お見合いの時から盛り上がって、ティーラウンジで2時間以上おしゃべりをしていました。それで、『これから夕食を食べに行きましょう』と誘われたので、ご飯に行って、その後、2軒目に飲みに行って今の時間になってしまったんです」

 この話を聞いて、これはいい兆候だと思いました。こういうカップルはトントン拍子で進んでいって、あっという間に成婚してしまうことが多いのです。

 そこで早速、吉田さんの相談室に交際希望を入れ、翌日には交際成立となりました。そのことを午前中にLINEで伝えると、こんな返事が戻ってきました。

「実は昨日、別れ際に今日もお会いする約束をしていたので、これから出かけるんです」

 ますますうまくいく予感がしました。ところが‥‥。

エレベーターでいきなりキスされて

 日曜日のデートを終えた里美さんから、「ご相談したいことがある」と電話がかかってきました。昨日からのウキウキメールとは一転、里美さんの電話の声は、なんだか沈んでいました。

「1軒目は、居酒屋さんに行ったんですね。で、すごく楽しく盛り上がって、『2軒目にカラオケに行こう』となったんです。手をつないで、カラオケ屋さんに向かいました」

 そこまでは、とても幸せな気分だったと言うのです。

「ビルの5階だったので、エレベーターに乗ったんですね。そうしたら、いきなり抱きしめられてキスされたんです」

 あまりにも突然のことに身体がこわばってしましい、とっさに吉田さんを力任せに突き放してしまったと言うのです。

「“えっ、なんで?”って、顔をされました。それで、2人の間に気まずい空気が流れて、結局カラオケ屋さんには行かずに、そのままエレベーターを降りて、帰りの電車に乗りました」

 家に着くと、吉田さんから電話があったと言います。

「今夜は突然に失礼なことをしてしまって、ごめんなさい。でも、僕は、里美さんのことがすごく好きだし、里美さんも同じテンションで盛り上がってくれているのかと思っていた」

 里美さんは、吉田さんを好きになりかけていました。

 でも、お見合いの翌日の初めてのデートで、いきなりキスをしてくるのは、あまりにも軽率な行動だと感じてしまった。

 好きになったらその人と一緒にいたい。触れたいと思うのは自然なことです。だから手をつなぐ。そこから段階を追っていくわけですが、キスをするとその先に男女の関係になることを連想させます。

「吉田さんが、もしも私のことを大切に思っているのなら、お見合いを含めて会うのがまだ2回目なのだから、“キスしたい”と思っても、理性でそれを抑えられなかったのかなって。こういうタイプの男性って、誰にでもこういうことをしている気がしたんですね」

アプリや婚活パーティで出会ったヤリモクの男たち

 実は里美さん、以前に婚活アプリや婚活パーティでの婚活をしていました。そこで出会った “素敵だな”と思う男性たちには、とにかく手を出してくるのが早かったというのです。

「女性って、話が面白くてうまくリードしてくれる男性に惹かれますよね。でも、実はそれって、女慣れしているということなんですよね」

 婚活を始めたばかりの頃、婚活パーティでマッチングした男性と、こんな経験をしました。

「パーティの後、男性と食事に行ったんです。カウンター席だったのですが、手を握られて目を見つめながら、『運命って信じる? 里美ちゃんには運命を感じるんだ』と言われて、ドキンとしました。一瞬で恋に落ちるって、こういうことなのかなって思いました」

 ところが、その日の帰り道にどうも向かっている方向が駅とは違う。ホテル街に入って行くのがわかりました。

「人気のない路地に入ったかと思ったら、つないでいた手を強く引き寄せられ、キスをされました。耳元で、『今夜は帰したくない』と言われた時に、一瞬で魔法が解けた気がしました」

 婚活パーティで出会ったのは、5時間前のこと。まだお互いのことを何も知らないのに、どうしてホテルに誘えるのか!

「『私、今夜は帰ります』と毅然と言ったら、『どうして?』って言うんです。どうしても何も、『まだお互いのことを何も知らないし、私はもっとあなたを知って、信頼関係を築いていきたいから』って、いったんですね。

 そうしたら、彼は、『人を好きになるのに、時間が必要? 僕はこの出会いに運命を感じているよ』って。でも、もう私の中で魔法は解けていたので、『とにかく今日は帰ります』って帰ってきました」

 しかし、その後、彼から連絡が来ることはありませんでした。

 その後、婚活アプリで出会い、初めてのデートで意気投合した男性に、「運命を感じる」とまた“運命”という言葉を聞かされた時には、逆に気持ちがシラけてしまったそうです。

 ヤリモク男たちは、“運命”と言う言葉と横並びのカウンターのお店がお好き。婚活女性の皆さん、注意してくださいね。

好きになる速度は、男と女とでは差がある

 一般的に言われていることですが、男と女が出会った場合、好きになる速度には違いがあり、男性の方が好きになる速度が速く、女性は遅い。なぜなのか? これは、異性を好きになるメカニズムが違うからなのだそうです。

 男性は、女性を好きになる時に、可愛い、美人だ、胸が大きい、ボンキュボーンのスタイルが抜群だ、と視覚から入る。表面的なものをまずは好きになるので、気持ちに火がつくのが速いのです。

 対して女性は、もちろん外見にも惹かれるのですが、それよりも重要なのが男性が醸し出す雰囲気、笑顔、優しさ、誠実さ。そうした内面的なものを知るとますます男性を好きになっていくのです。

 オラオラ系男子を好きになる女性も、俺様発言や強引な態度に接していくうちに、心をつかまれてしまうのでしょう。

 ですから、男性を好きになる速度が、男性よりも遅いのです。

 このメカニズムの違いを知らないと、男性は恋愛で失敗をしてしまいます。また、ヤリモク男たちは、こうした男女の違いを知っているからこそ、“運命”と言う言葉を連発したり、“すごいタイプだよ”“可愛いね”“こんなに人を好きになったのは初めて”などと、甘い言葉を多用したりして雰囲気作りをし、女性の気持ちをつかみにかかるのです。

 さて、里美さんのお見合い相手の吉田さんですが、エレベーターでのキスを拒否されて、シュンとしてしまったものの、次に会った時に、こんなことを言ってくれたそうです。

「僕は、里美さんが本当に好きだし、里美さんが僕のことを信頼して、好きになってくれるまで、待っているよ。軽率な行動をしてごめんね」

 おつきあいはスタートしたばかりですが、この二人はうまくいくような予感がしています。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/