真情を事情を吐露する平尾勇気

遺産うんぬんではなく、この人は本当に許せないと思って告発することにしました

 そう語気を強め話すのは、昨年7月に亡くなった故・平尾昌晃さんの三男で歌手の平尾勇気だ。

「昌晃さんには1人目の奥さんに1人、2人目の奥さんに2人と、3人の男の子がいます。そして、亡くなる5年ほど前には、マネージャーだった50代のA子さんと再々婚していたのです。

 今年7月20日に行われた平尾先生の一周忌イベントに勇気さんの姿がなかったんです。これは家族間で何かあったのかなと思いましたね」(スポーツ紙記者)

 一周忌から2か月。今まで遺産問題などについては沈黙を守ってきた勇気が、ついに胸の内を語った――。

深まる不信感

5年ほど前に戸籍謄本を取ったら、父とA子さんが結婚していることがわかったんです。びっくりして彼女に電話したら、“言うタイミングがなくて”って話すだけ。

 めちゃくちゃ大事なことじゃないですか。隠しておくっておかしいでしょ。父は入退院を繰り返すなど具合が悪い時期だったので、“せめてA子さんが子どもたちに連絡するべきじゃないの”って言ったんです

 平尾さん自身もA子さんと入籍したことを公表せず、そのことをマスコミなどが知ったのは亡くなったあとだった。

A子さんは父が亡くなった直後には“寂しいわね……”って言うし、心を開いて仲よくしようと思ったこともあったんです。でも、ダメでした」

 一周忌のとき、彼は自宅のある名古屋から東京に来ていた。出席するか欠席するか、直前まで葛藤していたという。

式の前日に彼女と一緒に父の会社に関わってきたK弁護士が来ることがわかったんです。

 彼は現在、利益相反の疑いで懲戒請求中であり、彼を紹介したのが、会社の経理と税務を担当する取締役のS氏です。このS氏は、父の会社から7000万円ほどを横領していたんです。それはA子さんも知ってるんですよ。

 それでも彼女は刑事告訴しないどころか、父の一周忌に参列させている。しかも僕には急に『カナダからの手紙』を畑中葉子さんと歌ってくれと。“ふざけるな!”ですよ。父を裏切ったような人たちの前で、僕は歌えない。本当に歯がゆい気持ちでしたね」

 A子さんへの不信感はこのときが初めてではない。以前にも昌晃さんの遺産相続を巡る話し合いで、彼女の理不尽な行動があったという。

A子さんは単独用(右)のジャスラック権利継承同意書に捺印させたが、息子たちに気づかれ共同用(左)に変更した

今年1月ころにA子さんが“先生のお金が止まったままなので、ハンコを押してくれないと動かせない”と子どもたちを集めたんです。会社には従業員がいますし、それはマズいと思って受取人が空欄と気づかないまま、書類に実印を押してしまったんです

 銀行口座だけでなく、そこには平尾さんの印税や著作権を管理するJASRAC(ジャスラック)の相続同意書も。

ジャスラックの書類は、1人だけが相続する『単独用』と、兄弟などの複数人が受け取れる『共同用』の2種類があるんです。でも、彼女は『単独用』しか出さず、しかも承継者の欄は空白のまま、ハンコを押させたんです

A子さんが“ひとり占め” 

 さすがにおかしいと思った兄弟たちは代理人を入れ、独自に調査を始める。

「ジャスラックに問い合わせて初めて2種類の書類があることがわかったんです。しかも、A子さん側にちゃんと2種類の書類を渡していると。兄貴たちも目が点ですよ。そのことを兄弟で指摘したら、彼女はフテくされて“私のことを信じないの”みたいな感じで、いっさい謝罪の言葉はありませんでしたね

 財産分与に立ち会った問題のK弁護士は“A子さんは魔が差したんですかね”って。父の印税関連の収入って毎年1億円くらいあるんです。すべてがジャスラックからではないですが、もし放置していたら、A子さんがひとり占めですよ」

 著作権は死後50年間保護される。年間1億円だとすると、50億円もの遺産を彼女が独占していた可能性もあったのだ。寸前のところで兄弟たちは『共同用』の書類に書き換えることができた。

 また、不可解な株の動きも、彼の不信感をさらに高めた。

「父はマネジメントのための個人事務所『平尾昌晃音楽事務所』(以下、音楽事務所)と、著作権などを管理する『エフビーアイプランニング』(以下、F社)という2つの会社を持っていたのです。そこには、F社が筆頭株主で音楽事務所を支配するという構図があったのですが……」

 音楽事務所の発行済株式総数は2万株。3000株は平尾さんが持ち、残り1万7000株をF社が所有することで、音楽事務所に影響力を及ぼす大株主の形になっていた。

そもそも、財産分与の段階でA子さんはF社の存在を明かしていなかったしかも、彼女が結婚した5年ほど前に、F社が持っていた音楽事務所株1万7000株を、850万円で音楽事務所が買い戻し、自己株にするという不思議な動きがあったんです

 実は港区に社屋としてある5億円の物件と、昌晃さんと彼女が住んでいた港区の3億円のタワーマンション(ともに市場価値)は、音楽事務所の持ち物。無借金経営で売り上げを加味せず、所有資産だけで計算しても8億円の価値がある会社だ。前述した50年間の50億円を足せば、遺産は約60億円。

「そんな会社の8割以上の株式をたった850万円で買い取っているんです。本来なら、音楽事務所からF社にその対価として6億円ほど支払わらなくてはならないはず。

 それを、A子さん主導で行っている可能性が出てきたのです。これは明らかに音楽事務所をF社の支配から外すための策略ですよ。こんなことが許されるわけがない」

勇気の隣に座る女性がA子さん。昌晃さんの葬儀での一枚

 なぜ、彼女がそうしなくてはならなかったのか。それはF社の株式配分にあった。

「父が生きているときに、F社の株は子どもたちに3000株ずつ渡されていたんです。

 つまり、父の所有分である7000株を法定相続通りにA子さんに半分の3500株。残りを3人で1160株ずつ分けて、それぞれの所有ぶんに加えると、兄弟3人の株式が過半数に達するんです」

 A子さんがもともと持っていた4000株に相続分を足しても7500株。一方の兄弟分は3人合わせて9000株あり、相続分を合わせると1万2500株で、F社を経営するだけでなく、音楽事務所も大株主として影響力を示せたはずなのだ。

明らかに違法

「しかも、F社は昨年10月25日に株主総会を行っていることになっているんですが、僕は父の生前から株主なのに総会に呼ばれていないんです。招集通知も来ていないんですよ。次男は出席したようなのですが、長男も呼ばれていない。

 つまりA子さんは株主2人だけで総会を勝手に開いて、彼女が代表取締役に就いたんです。しかも、任期を大幅に延期することも決めた。これは明らかに違法ですよ

 そのうえ、A子さんは現在、自身の妹2人を音楽事務所とF社へ、それぞれの役員にすることを画策しているという。

彼女の妹たちは、父にまったく関係ない人間ですよ。要は会社を自分で独り占めしたいだけなんです。父が元気なころから、有名な“●●と△△の曲は私のものにして”って脅すように食い下がることもあったそうです。だから、結婚する前から父の財産のことしか頭になかったんじゃないですかね

 そして、邪魔していたのは相続だけではない。昌晃さんが生きていたころから、何かと父子関係を邪魔してきたのが、交際中のA子さんだった。

芸能界に入ったあとも、父は親子共演をOKしてくれたのにも関わらず、A子さんが事務所としてはダメということで、結局は共演NGになってしまう。つまり、彼女のせいで僕は父から遠ざけられていた部分もあるんです

 そして彼は、彼女のこんな一面も見てきたという。

「二十歳のときに名古屋から東京に戻って、6、7年くらい港区の実家に住んでいたんです。僕は地下のスタジオに寝泊まりしていたんですけど、真夜中にコンコンってパジャマ一枚で父がきて、“上でA子が暴れているから、勇気助けてくれ”って。何度か止めに行きましたよ。

 付き合っているときからそんなことがあったんですから、結婚してからもいろいろあったと思いますよ。実際に悪い噂も聞いていますから」

 巨額な横領や不可解な株式操作など……。彼が口を開かなければ、永久に闇に葬られていたことかもしれない。

 そこでA子さんに今回の件について電話で問い合わせると、丁寧に質問に答えた。

――遺産相続でモメている?

遺書が無く、法定相続分で分配する方向で話し合っています。勇気さんが強い主張をするからモメるのかと……」

――7000万円を横領した役員のS氏は刑事告訴しないのですか?

数千万円とは聞いてますが、数字に関しては詳しくわかりません。私の中にも“コノヤロー”って気持ちはありますよ。でも現在、S氏の代理人弁護士に報告を求めているところです。報告があったのち、検討したいと思っています

――ジャスラックの同意書を『単独用』しか出さなかったのはなぜ?

単純に私のミスです。なにせこの手続きは初めてのことですし、2種類の書類があるって知らなかったんです」

――F社が所有する音楽事務所の1万7000株を買い戻すよう指示した?

「それは,'13年に行われており、平尾が元気なころに顧問税理士と決めて行っているので、私はどのような理由によるものかはわかりません」

――昨年10月25日の臨時株主総会は、招集通知もなく違法なのでは?

これまで正式に株主総会という手続きはせず、株主の話し合いで決めたことに基づき登記手続きしていますので、違法とは思っていません

 両者の主張する事実関係は同じだが、その見え方は2人ではまったく違うようだ。

父は芸能界でも先陣を切ってスクールなどを作っていましたし、後進のためにお金を使ってほしいという思いが強かったんです。

 それにチャリティーや慰問コンサートもすごくやっていた。いままで父が作り上げてきたものを僕は続けていきたいんです。悪いけれど、財産をひとり占めしようとするA子さんにそれはできないですよ」(勇気)

 遺産60億円を巡る“後妻VS息子たち”の相続争い。天国の平尾さんは、どんな決着を望んでいるのだろうか――。