2010年の第一回はAKB48シングルじゃんけん大会だった。初代王者は内田眞由美(左)、決勝で破れた石田晴香(右)

 単純明快なじゃんけんの威力を、エンターテインメントにまで高めたイベントだった。

 先日、都内で開催された『AKB48グループ 第2回 ユニットじゃんけん大会』。グループ内のメンバーが、それぞれ自由にユニットを組み(ソロも参加もあり)、トーナメント方式で勝者を決めるという仕掛け。

 8月に行われた予備選には、ソロを含む全ユニット128組(総勢354人)が参加。そこで勝ち残ったユニット48組(総勢139人)が決勝戦に進出した。

 優勝のご褒美は、12月19日発売のシングル表題曲を歌い、メジャーデビューできるというもの。

 そして、福井出身という共通項を持つHKT48の研究生の松田祐実(16)とAKB48の研究生の多田京加(19)のユニット「Fortune cherry」が見事”じゃんけん女王”に輝いた。

じゃんけんという勝敗決着遊戯

 ただのじゃんけんである。衣装に身を包んだメンバーがじゃんけんをするだけ。

 2時間、それを見守る4000人のファン。税込み1200円の公式ガイドブックが発売され、地方から駆けつけるファンは交通費や宿泊費、飲食費などを落とす。しっかり金が動く、経済活動。イベントいうものは、こうでなくちゃいけない。

 運だけでメジャーデビューできるというのも、芸能界らしくていい。

 さらに、じゃんけんという、子どもでもやる遊戯が、実は勝ち負けを決めるギャンブル性を秘めた遊戯であることを、イベントはあらためて伝えた。

 単純さゆえ、ギャンブルというものは面白い。さいころだけを振って遊ぶチンチロリンも、大の大人が徹夜で夢中になる単純な賭博だ。

 子どもの遊びには、おはじきやめんこなど数を取り合ったり勝ち負けを決めるものが案外多く、何気なく賭けることの面白さが刷り込まれている。 

 料理の代金を当て合い、外れた人がすべてごちそうするという現金が生々しいテレビ番組がある。まさに、賭け事の面白さを刷り込ませている高視聴率番組だ。

 小説家の小林信彦に『ぼくたちの好きな戦争』という、人間の本質をえぐったタイトルの書物がある。それを借りれば「ぼくたちの好きなギャンブル」「ぼくたちの好きな賭け事」である。

 じゃんけんという勝敗決着遊戯が“ジャンケンエンターテインメント”としてパッケージ商品になる現実。

 将来、日本にカジノが誕生する日まで、テレビやイベントによる刷り込みが軽やかに進む。

<取材・文/薮入うらら>