黒木華

「四季の中で、春がいちばん好きなんです。短い季節なので切ないですが、気候も気持ちいいし、過ごしやすいですよね。それに、桜も好きな理由のひとつです」

 映画『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』(全国公開中)で主演を務める黒木華(28)。母にすすめられ、今まで興味のなかった“茶道”に通い始めた主人公・典子を演じたが、黒木自身も今回がお茶は初挑戦だったんだとか。

今までは“奥様方がたしなむ優雅なもの”というイメージがあったんですが、実際に挑戦してみるとそんなに敷居の高いものではなかったんです

 美味しいとか、お茶菓子が可愛いとか、そういう素直な気持ちで始めていいものなんだと知ることができました」

 しかし、初めてだったからこそ大変だったことも……。

「“即立ち”という、座った状態から足をずらさずにまっすぐ立って、まっすぐ座るという所作があるのですが、最初はなかなかできなくて大変でした。

 あと、お茶をいれる一連の流れの中では、動作を丁寧に、自然に、機械的にならないようにするのも難しい。それらを意識しながら演技をするので、ひとりでてんやわんやになっていました(笑)」

 作中では、お茶菓子や外の風景を通して、四季の移ろいが細かく描かれている。黒木自身は季節の移り変わりを、

「食事に出かけた際に、季節の野菜を使った料理が並んでいると “あ、もうこんな時期なんだ”と思います。作中でもたくさんの和菓子が出てきて、私のお気に入りは“下萌(したもえ)”というお菓子。

 季節を目や耳で楽しめるということは、本当に贅沢(ぜいたく)なことだと改めて感じました」

変わらず没頭できる存在は?

 20歳で茶道と出会い、30代、40代と年齢を重ねても、お茶の尽きない魅力に魅せられ続けた典子。同じように、黒木にとって変わらず没頭できる存在は、

私は飽き性なんですが、演劇だけはずっと好きなんです。就職を考えた時期もありましたが、本格的に就活が始まる前に役者になれたことが、本当にラッキーだったなと。

 もし役者になれなかったら、幼稚園の先生になりたいと思っていました。若いころにやりたいことを見つけられて、役者になることを許してくれた両親に、本当に感謝しています

 最初で最後の共演となってしまった大女優・樹木希林さん。

「人としても、女優さんとしても、すごくカッコいい方でした。“カッコいいですね”ってお伝えしたら“そうなの”って。“自分がカッコいいと思っているものだけを集めている”って、おっしゃっていました。

 あと、“ちゃんとした人にはアドバイスしないの。黒木さんは大丈夫よ”とも言っていただきました。ひとりの女性として、こんなふうに生きてみたいと思いました素晴らしい女優さんとご一緒できて、とてもうれしかったです

『日日是好日』