“アバタもエクボ”という言葉がありますが、人を好きになるのは、恋の魔法にかかるようなものです。欠点さえも愛おしくなるのが、恋愛です。
 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『恋の魔法が解ける瞬間』です。

写真はイメージです

太っているのが唯一、気になっていた

 会員の内田陽平さん(33歳、仮名)は、井上博美さん(35歳、仮名)と真剣交際に入って、1か月が経ちました。

 毎日、LINEで連絡を取り合い、週末はデートを重ね、交際は順調そうでした。「結婚後は、二人の通勤を考えて、住むならこのへんがいいね」と結婚後に住む地域を絞り込んでいたりもしたので、陽平さんは、順調に交際が進んでいると思っていたのです。

 ところが、毎日きていたLINEが日曜日のデートを終えた後からこなくなりました。陽平さんは心配になったのか、火曜日の昼間、私に連絡を入れてきました。

「なんだか嫌な予感がします。博美さんの相談室にご連絡をして、様子をうかがっていただけませんか」

 そして、私が相談所のサイトを立ち上げて2人の交際記録が載っているページに行くと、なんと“交際終了”の通知がきていたのです。

 気持ちは結婚に向かって寄り添っていたはずなのに、いったい何が起こったのでしょうか?

お腹の肉がボンと当たり魔法が解けた

 私は、お相手女性の相談室に電話をし、交際終了になった理由をお仲人さんに尋ねました。

 終了理由は、こうでした。

「内田さんは、とてもユーモアがあってお話も楽しい方のようですが、言葉で言っているだけで行動が伴わない。信頼ができなくなったというのです」

 私は耳を疑いました。陽平さんは、とても誠実な人です。嘘をついたり、信頼をなくしたりするような行動を取る人ではありません。

 仲人さんは続けました。

「おつきあいが始まった頃から、健康のためにもダイエットを頑張ると言っていたそうなんです。だから二人で体重計も一緒に見にいったそうです。でも、その時は、デート中で『荷物になるから』と買わなかった。

 そこから毎週のようにお会いさせていただいたようですが、ハンバーガーやジャンクフードが好きだし、お菓子もバクバクと食べているし、全くダイエットをしているようには見えなかった。

 そこで井上が『ダイエットはしているの? 体重は落ちているの?』と聞いたら、『家に体重計がないからわからないよ』と笑いながら言ったそうなんです」

 その言葉を聞いて「買う」と言っていた体重計も買ってない、食事制限もしていないことにガッカリしてしまったようです。

 陽平さんは、身長が178センチあるのですが、体重も103キロあり、縦横に大きい巨体でした。

 ですが、大手企業に勤め、頭の回転も早く、ユーモアがあって、コミ力はずば抜けていました。女性にしてみたら、とても条件のいい男性です。博美さんもそう感じていたのでしょうが、唯一気になっていたのが、彼の体型だったのでしょう。

 自分の発したひと言が不信感へとつながったとは露知らず、デートの別れ際、陽平さんは博美さんをギュッと抱きしめたというのです。

「抱きしめられた時に、お腹がボンと当たったようで、それで“ああ、もうこの人は生理的に無理!”と思ってしまったようです」

 こうして恋の魔法が、一瞬にしてすべて溶けてしまいました。

彼のひと言から、過去の不満も一気に爆発

 会員の藤村雄一さん(40歳、仮名)は、土曜日から月曜日の3連休に入る前日の金曜日に、かねてから真剣交際に入っていた吉野彩美さん(35歳、仮名)にプロポーズをし、それを無事、受けてもらいました。

 幸せいっぱいの2人はその夜、予約してあったシティホテルで1泊し、翌日は雄一さんの一人暮らしのマンションに行き、週末を過ごしました。

 しかし、日曜日になって“今夜は彩美さんが帰ってしまうのか”と思うと、雄一さんは無性に寂しくなりました。明日は祝日でお休みです。そこで、「今夜も泊まって、月曜の昼間に帰りなよ」と提案しました。

 ところが、彩美さんは、「ごめんね、今夜は帰る」と言って聞かないのです。

 そこから、喧嘩が始まりました。

「どうして、明日じゃダメなの?」

「明日は朝から部屋も片付けたいし、洗濯もしたいから」

 彩美さんが言っていることはわかるのですが、雄一さんは少しでも長く一緒にいたかった。

「帰っちゃうのは、寂しいよ」

 すると、彩美さんは少しイラッとした声で言いました。

「また1週間が始まるんだし、一人になって自分をリセットする時間が欲しいの!」

 その言い方に、今度は雄一さんが、カチンときました。

「結婚したら、2人で暮らすことになるし、今の彩ちゃんの家はなくなるんだよ。そういう考え方だと、これからの結婚生活もうまくいかないんじゃないの?」

 火に油が注がれた形になり、彩美さんがさらに語気を強めました。

「前々から言おうと思っていたんだけれど、結婚は依存じゃないよ。独立した大人同士がお互いの価値観を認め合って、一つの生活を築いていくことでしょ。私には私が大切にしたい時間があるから、そこに入ってくるのはやめてほしいッ!」

 喧嘩は売り言葉に買い言葉です。

「そんな考え方じゃ、僕ら、結婚はできないよね。さようなら」

 すると、まだお昼前だったのに彩美さんは、荷物をまとめ出し、「わかりました。さようなら」という言葉を残して、帰ってしまったのです。

 マンションのドアが、バタンと閉まる音がして、雄一さんは怒っていたテンションが一気に下がり、現実に引き戻されました。

 とんでもないことを言ってしまった!

 しかし、その時はまだ雄一さんが誠心誠意、謝れば許してくれる、その程度の痴話喧嘩だと思っていたのです。

 が、月曜日、『受けたプロポーズですが、一旦、白紙に戻してください』というLINEが届きました。

 その後、二人で会って話し合ったようですが、彩美さんは、「あなたは、あの時もこうだった」「こう言われて、私はあなたに不信感を抱いた」と過去の話を引き合いに出し、雄一さんが、“いかに依存心の強い人だったか”を力説してきたというのです。

 結局、幸せのプロポーズから一転、結婚話は破談となりました。

一瞬にして恋の魔法が解けてしまうのは、なぜ?

 まるでオセロゲームのように、白かったものが一瞬で真っ黒に変わってしまう。この気持ちの変化は、男性よりも女性に多い気がします。

 男性は、初めて女性に出会った時に、まずは見た目から入ります。それが男の特性です。ですから、見た目がドンピシャのタイプならば、多少のわがままや自分とは合わない性格も、多めに見てしまう。

 ところが女性は、見た目はもちろんのこと、コミュニケーションの取り方、優しさや思いやりとなど、全体から受ける雰囲気や印象で男性を総合評価していきます。細かいジャッジの目を持って、行動や言動をひとつひとつチェックしていくのが女性の特性です。

 そこで、喧嘩になったりすると、過去にこうだった、ああだったと、不愉快に思っていた事例を引っ張り出してきて、男性を責め立てるのです。

 また、お見合いという出会いは、目的が結婚と決まっているので、女性が男性をジャッジする目がさらに厳しくなります。

 さらに、3か月程度の期間で結婚を決めてしまうので、人間関係が濃密に築かれていないうちにした喧嘩は、仲直りの方向に進むよりも、破局の方向に進むことが多いのです。

 ですが、どんな方とおつきあいしても、100パーセント理想にかない気の合う方は、まず存在しません。短所と長所は表裏一体ですし、見方によっても変わってきます。

 博美さんが陽平さんを、言っていることとやっていることが違うととらえるか、大らかな人ととらえるか。彩美さんが雄一さんの“いつも一緒にいたい”という気持ちを、依存心ととるか、愛情深い人ととるか。そこでも導き出される結果は、違っていたと思います。

 結婚にとって大事なこと。それは、お相手の欠点を許し、見逃すことです。 

 また、何が起こっても、それをマイナスにとらえずに、プラスに変換することではないでしょうか?


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『あいかつハウス』http://aikatsuhouse.grupo.jp/