カン・ダニエル 撮影/吉岡竜紀
 韓国の11人組ボーイズグループWanna One(ワナワン)のセンターを務め、本国はもとより世界各地で社会現象的人気を巻き起こしているカン・ダニエル(22)。プロのダンサーを目指していた彼が歌手デビューをした背景には、彼のタレント性にいち早く気付いた恩師の存在があった。その恩師がインタビューに応じ、スーパーアイドル誕生の秘話を語ってくれた。

中2でハマり毎日ダンス!

 韓国第二の都市、釜山。その中心地・西面(ソミョン)に2005年に開校した『ナタラジャアカデミー』は、約280人の生徒を抱える国内でも名の知られたダンススクールだ。Wanna Oneのカン・ダニエルは、このスクールに中学2年生の時から5年間通い、ダンスの才能を磨いた。

ダニエル君が通う中学で放課後授業というのが行われていて、僕が講師としてダンスを教えに行ったのが最初の出会いでした」と語るのは、ナタラジャアカデミーの人気講師、イ・ガンヒョン先生(35)。

「その授業で初めてブレイクダンスを知ったそうで、お母さんに“もっと習いたい”と直談判。僕を尋ねてアカデミーに来てくれたんです」

 ブレイクダンスにすっかりハマってしまったダニエル。

“他のことはどうでもいい、とにかくダンス! 自分はB-BOY(ブレイクダンスをするダンサー)になるんだ!”という感じで、学校が終わってから毎日、アカデミーに来て、夕方の4時、5時頃から授業が終わる夜10時半までひたすら練習。とにかく一生懸命で、僕の授業以外の時間もずっと踊っていました

 と、イ・ガンヒョン先生は当時を振り返る。先生とダニエルは、偶然にも家が同じ地区。

「学校が終わったあとに、僕の車に乗ってアカデミーに来て、帰りも一緒に帰宅。ずっと一緒にいて、歳の離れた兄弟のような感じでした。中学生の頃から背は大きいほうでしたが、まだ子どもだったので、通い始めた頃は頬がちょっとポッチャリしてましたね(笑)。でも、僕と一緒に運動をし始めたら、だんだん引締まってきて、肩も大きくなりました

 と、ダニエルの魅力の一つである“60cmの肩幅”の誕生秘話を明かしてくれた。

 レッスンを重ねる一方、放課後授業を一緒に受けていた同級生とチームを作っていたというダニエル。

「“映画の殿堂”といった名所でダンス映像を撮り、動画投稿サイトのYouTubeにアップをしたりしていましたね。釜山在住の若いダンサーを対象にしたルーキー大会にも、高校1年か2年の時に出場し、1位を取りました」

 その大会には、他のダンススクールに通っていたWanna Oneメンバーのパク・ウジンも出場していたというから、縁とは不思議なものだ。

「ただのダンサーには惜しい」

 Wanna Oneの絶対的センターとして抜群のアイドル性を発揮しているカン・ダニエルだが、「もともとはアイドル歌手にはまったく関心がなかった」とイ・ガンヒョン先生は明かす。

広い肩幅&長い手足の恵まれた身体でダイナミックなダンスを繰り出す。ちなみにダニエルの名は、もともとの名前(ウィゴン)が発音しにくかったことから改名して付けた名前。ハーフではなく生まれも育ちも釜山の韓国人 撮影/古林由香

「ダニエル君は僕のチーム、マックス・クルーに入って、一緒に活動したいと言ってくれていました。いわゆるアイドル的なものは気恥ずかしく思っていて、“カッコいいダンサーになりたい”と言っていました。でも、高校に入り、少年から青年になってくるとビジュアルがどんどん整ってきて、ただのダンサーにしておくには惜しいなと思ったんです

 その気持ちを確信させたのが、芸能事務所から受けた提案だった。

「アカデミーでは授業の一環として生徒たちの映像を撮っているんですが、ダニエル君の映像を大手芸能事務所の方に見せたところ、“いい線をいっている。一度オーディションを受けてみてはどうか”という提案をもらったんです」

 イ・ガンヒョン先生とともにソウルへと上京し、オーディションを受けたダニエル。

「それを機に彼も“歌手の道も、挑戦してみる価値があるのかな”と少し前向きになってくれたので、こう説得したんです。“もし私にこんな機会が巡ってきたなら、絶対にやってみる。普通の人には巡ってこないチャンスだ”と。

 自分が若かった頃、ダンサーだというプライドにとらわれ過ぎていたのは、もったいないことだったと後悔したんです。だから挑戦してみろと話したんです」

 先生の説得を受け入れたダニエルは、釜山に帰郷後、これまでのようにブレイクダンスだけではなく、異なるジャンルのダンスや、ボーカルのレッスンを受けることにし、歌手になるべく練習を重ねた。

「ダメだったら軍隊に」

 大手芸能事務所の話は残念ながら白紙化し、アカデミー時代の友人(チェ・テウン)が先に所属していた芸能事務所、B2Mエンターテイメントに所属することになったダニエル。2014年にアカデミーを卒業し、ソウルで練習生生活をスタートさせた。

 後にB2Mはダニエルの現事務所、MMO(エムエムオー)と合併。そして2017年4月、MMO所属の他の4人の練習生と共に、オーディション番組『プロデュース 101シーズン2』に出演することとなった。アイドルを目指す101人の練習生が実力を競い合い、視聴者投票で選ばれた上位11人がデビューできるという、サバイバル形式の番組だ。

番組が始まる前、ダニエル君が一度、釜山に来てくれたんです。“出ることになったので、一生懸命やってみます。もし、ダメだったら軍隊に行きます”と話していたので、“結果はどうあれ、やる価値があるから頑張ってみろ”と応援しました。

 運がよかったのは、『Pick Me』(番組テーマ曲)の振り付けを教える講師がナタラジャアカデミーの出身者だったんです。お互いに面識があったので、心理的プレッシャーが他の練習生より少なく、振り付けも早く覚えられたようです」

少年のような無垢な魅力と、セクシーさを合わせ持つギャップ系として人気爆発のカン・ダニエル 撮影/古林由香

 レベル分けテストでは、見事、一番評価の高いAクラスに入ったダニエル。

「それでも、収録当初はだいぶ苦労していたようでした。周りの練習生たちが本当に一生懸命やっている姿に影響を受け、本気でやらないといけないと覚悟を決め、課題曲『SORRY,SORRY』の頃から、表情の練習なども自らするようになっていきました

 最初の順位発表では101位中、23位だったダニエル。

「30位以内だったら上出来だと思っていましたし、それ以下であったとしても、釜山に戻ってきてから活かせる経験になる、そんなふうに思っていました。けれど、放送が進むにつれ人気がどんどん上がり、最終投票ではまさかの1位!

 僕のところにも“おめでとう”とたくさんの連絡がきました。昨年8月のWanna Oneデビューコンサートは、ダニエル君のお母さんと一緒に見たんですが、“こんなにカッコよかったなんて!”と、ふたりで驚きの声を上げながら見ていました(笑)

今後は俳優、モデルも

 先生が思う、ダニエルの魅力を教えてもらった。

一つ目はプロポーション。手足が長く身体のラインが綺麗なので、ダンサーとして最適ですね。二つ目が整形をしていない自然な顔。人をホッとさせる魅力があると思います。三つ目がダンスの実力。ブレイクダンスをやってきたのでアクロバティックな技も怖がらずにできるし、体力もある。四つ目が表現力。もともと顔の表情はそんなに上手ではなかったんですが、ソウルで練習生生活を送りながらたくさん学んだようです。

 そして最後に性格。明るく朗らかな一方で、正しいことは正しい、間違っていることには間違っているとはっきり言える子なんです。そういった性格の良い部分はお母さん譲りだと思います」

'18年4月12日に行われた、Wanna One来日時の会見の様子 撮影/吉岡竜紀

 Wanna Oneのデビューから早1年4か月。弟のような存在だった子が世界中に知られるスターになるなんて、誇らしいと同時に今でも不思議な感じがする、と笑うイ・ガンヒョン先生。

突然、大成功を収めると芸能人病になる人もいますが、ダニエルはそういったことはなく、昔と変わっていないと思います。けれど、若いうちにスターになり、数年で燃え尽きてしまう子を何人も見てきたのでそれが気がかりです。また、体調はもちろんサセン(芸能人の私生活をストーキングするファン)の存在も心配です」

 今後は歌手活動を続けながら、より幅広い芸能活動をしてほしいという。

モデルや俳優をやっても成功すると思うので、挑戦してみてはとアドバイスしています。本人的には、今はWanna Oneの活動に集中して、気持ちを整理してから次のことを考えたいようです

 すでに、さまざまなソロ活動のラブコールを受けているという噂のカン・ダニエル。期間限定プロジェクトであるWanna Oneは、2018年末に契約終了を迎えるとされているが(残念!)、ダニエルが来年以降も大活躍を見せてくれるのは間違いなし!

<プロフィール>

イ・ガンヒョン先生(35) 撮影/古林由香

ナタラジャアカデミー
イ・ガンヒョン先生(35)
1983年、釜山生まれ。中学生時代、ソテジワアイドゥル、H.O.T.などのパフォーマンスに感化され、ダンスを独学。18歳でブレイクダンスのチームを結成。大学卒業後、会社員をしながらダンサーとして活躍し、数々の大会で優秀な成績を収める。2009年、ナタラジャアカデミーの講師となり、ブレイクダンスなどの授業を担当。現在は経営陣としてアカデミーの運営にも携わる。気さくで男前な性格、かつ身長180cm越えのバツグンのスタイルはさすがカン・ダニエルの師匠! この11月に結婚した新婚ホヤホヤ♪

<取材/古林由香>